第236話 モニちゃんの思い出
「モニちゃんが良くなるまで滞在します」
シモンさんが決意表明のように宣言した。
「いつもの客間を使ってね」
「ありがとうございます。テラも呼びたいのですが」
「僕は構わないよ」
「私も会いたい」
テラ様に会うのは久しぶりだ。
「お邪魔するわ」
「テラ様いらっしゃい」
「久しぶりねカレンちゃん」
テラ様がギュッてしてくれた…好き。
「シモン、知らせてくれてありがとう」
「テラも会いたがると思いましたから」
眠るモニちゃんを起こさないようテラ様がそっと見舞ったが、ルイス狼とモニちゃんの安眠を邪魔しないよう少し離れて見守ることにした。
「テラ様、お茶をどうぞ」
「ありがとうカレンちゃん。…本当に小さい頃のモニカね」
「懐かしいですよね」
シモンさんとテラ様がしみじみと何かを回想している…聞きたい。
「ねえ、小さな頃のモニカはどんな子だったの?」
「可愛かったわ」
「甘えん坊で優しい性格は今と同じですね」
ルイスも甘えん坊で優しいよね、似たもの姉弟だ。ウィルコも私もほんわか。
「でもちょっと聞き分けがないところはあったかも」
「どんなわがままも許さざるを得ない愛らしさでしたからね」
「さっきの注射のやり取りでそれは感じたかも」
「お肉を食べたがって、ほどほどにしておきなさいって言っても聞かなくてお腹を壊していたわね」
「懲りずに繰り返すところが可愛いんですよね」
「生肉が好きで、ちょっと古くても気にせず食べてお腹を壊して」
「懲りずに繰り返すところが可愛いんですよね」
モニちゃんの子供時代は想像通りだった。
「会いに行くと毎回数年ぶりの再会のように大喜びで」
「可愛かったわ」
犬あるあるだ、可愛いよねえ。
「寂しがりやなので、常に誰かが側にいるようにしていましてね。おもちゃを咥えてくるので遊んで欲しいのかと思ったら、遊ぶモニちゃんを見てて欲しいんですよね」
「そうそう。最初は可愛いんだけど、途中で飽きて目を離すと怒るのよ」
それも犬あるあるだ。
「ナデナデも流石に飽きる事がありました」
「ナデナデは眠るまで要求されるのよね」
「水遊びは好きなのにお風呂は嫌いで」
「ドロドロの水溜りに飛び込んで狸みたいになって、それなのに洗うと怒るのよ」
「仮病のときは注射器を見せれば治ります」
「シモンは尻尾で顔を叩かれて眼鏡を飛ばしていたわね」
どれも犬あるあるだ。
「モニちゃんにご飯をあげてから私たちのご飯にするんだけど、また食べようとするのよね」
「肉を要求されて、きっぱりと断れたことはありませんでした」
モニちゃんは勝率100%だった。強すぎる…いやシモンさんが弱すぎだ。
「目を離すと勝手に遠くに行ってしまって」
「みんな総出で探し回ったものよ」
「何時間も探し回って見つけてみれば『探しにくるのが遅い』ってギャン泣きされましたね」
「出掛けた時は夢中だけど途中で我に返って淋しくなって『ここどこ?早く探しに来て』ってなるんでしょうね。可愛いけど面倒臭いな…って思ったわ」
「私もですよ」
「いたずらして部屋をボロボロにしてしまった時は可愛かったわ」
「私たちが部屋に入ったら隅っこで壁に向かって『知らない!モニじゃないもん!』と言い張って…絶対に目を合わせないんですよ」
モニちゃんの黒歴史を大人のモニカに聞かせてみたいな。




