第217話 シャルワル村でデモ販売
「俺たちは家族で行商をしているんだ。鍋や調味料を扱っている。姉のモニカと弟子のウィルコと姪のカレンだ」
「私たちは迷っていないわよ」
「そうかそうか」
「よく来たな」
シャルワル村の皆さんが優しい…というか生暖かい。迷子じゃないって言ってるのに全然信じていないみたいだ。
生暖かい雰囲気の中でデモ販売させてもらった。
私はキャンプ用のテーブルにクロスを敷いて、リネンやダッチオーブン、洗濯バサミ、ハチミツ、塩、チーズ、ケチャップ、瓶詰めのトマトソース、小麦粉、白ワイン、乾燥マカロニ、オイル漬けのドライトマトや乾燥キノコなどを並べる。
ルイスが手早く竈門を組んでデモンストレーションの準備。ルイスとモニカとウィルコの3人でダッチオーブンを使って調理をする。
「じゃあこの鍋を使って調理を始めるぞ。俺が作るのはチキンと野菜の煮込みの竈門焼きだが、この鍋だけで作る」
この世界の標準的な設備状況に合わせてオーブン焼きを竈門焼きと言い換えている。
温めたダッチオーブンにオリーブオイルを入れて刻んだニンニクと玉ネギを塩で炒める。玉ネギがキツネ色になったらピーマンを加えて炒めてから鶏モモ肉を加えてさらに炒める。
そこにクミン、ドライバジル、一味唐辛子を加えて炒めたら瓶詰めのトマトソースを加えて少し煮立て、塩、コショウで味を調えたらチーズをのせてフタをする。
本当ならオーブンで焼き目がつくまで焼くんだけどダッチオーブンの性能の見せどころだ。
ルイスがダッチオーブンにフタをして、フタの上に焼けた炭を乗せる。
「こうやって上からも温めるのが、この鍋の特徴だ」
重い蓋が圧力鍋的効果を発揮して誰でも料理名人になれるし、文字通りオーブンのように上下から加熱できるのだ。
もう1つのダッチオーブンでウィルコがパンを焼いて、モニカがタンドリーチキンを焼いており、空腹を刺激する匂いが強くなる。
「これは唆るな…」
「腹が減った…」
村人たちも空腹を刺激されているようだ。
「パンが焼けたよ、見て!」
ウィルコがフタの上に置いた炭を取り除いてからフタを外し、中を見せると村人がどよめいた。
「焼き目がついているわ!」
「お鍋で焼いていたのに…」
「フタに炭を乗せていたわよ」
「それで上からも焼けたのか…」
ふふ、この反応は久しぶりだな。
「竈門焼き風の煮込みも出来たぞ」
ルイスがチキンと野菜の煮込みの竈門焼きの鍋の中を見せるようにすくうと焦げ目のついたチーズが伸びて村人たちがどよめいた。
「チキンも良さそうね」
モニカがお鍋のフタを外すと美味しそうな焼き目のついたタンドリーチキンが見えた。
試食は大成功でダッチオーブンと調味料がよく売れた。




