第203話 ちびルイス
「副反応が出ないことを確認するので明日までここに滞在します。1日何も無ければ大丈夫ですよ」
「ありがとうシモンさん」
「ほらルイスもシモンにお礼を言って」
「……。」
モニカがちびルイスを促すが無視だ。プイッとするちびルイスが可愛い。
「姉ちゃん、寝る」
ちびルイスが怠そうにモニカのお腹にくっついて丸くなる。モニカに甘えるちびルイスが可愛い。
「ウィルコとカレンさんには一応説明しておきますね。小児インフルエンザは人間のインフルエンザと同じと思っていいです」
とはいえ神狼なので悪化しても死ぬことはないそうだ。ちょっと辛いだけだって。
「小児インフルエンザはウイルスによるウイルス感染症ですね。感染すると発熱、鼻水、のどの痛み、せき、頭痛、筋肉痛、倦怠感が生じます。今のルイスは軽い発熱があって、症状は倦怠感が強いようですね」
モニカのお腹に埋もれて丸くなったちびルイスをモニカがペロペロしており、夢のように可愛い。
「シモンさん、来てくれてありがとう。突然呼び出しちゃってごめんね」
「構いませんよ、今は忙しくない時期ですし。少し前まで忙しかったんですがねえ」
「そうなんだ、じゃあゆっくりしていってね」
「シモン、いつも使ってもらってる客間を整えたから」
「ありがとうウィルコ」
シモンさんが眩しそうにウィルコを見る。ウィルコの成長が嬉しいみたい、以前のウィルコとは別人みたいだもんね。
「モニカとルイスって仲がいいよね」
「神…我々を創造した父が犬好きでしてね。なんでもテラの世界の漫画に影響されてモニカを創造したそうなんです」
どうぶつの医者とか、どうぶつ病院とか、そんなタイトルだったらしい。それはたぶんドラマ化もされた有名なやつじゃないかな。
「モニカは優しい性格で理想的な愛け…愛狼で子狼の頃から父に溺愛されていたんですが仕事でモニカを1人にすることもあって…寂しがりやなモニカには辛かったようです。仕事で出かける父に取り縋ってパパ、パパ行かないでと鳴いて、ぐずるんです」
愛犬って言いそうになったけど誤魔化せていないと思う。
「そんな時は私たちが遊びに行ってモニカと一緒に過ごしていたんですよ。モニカは“取ってこい”も大好きで賢い愛け…子狼でした」
シモンさん、何食わぬ顔でお茶を飲んでいるけど誤魔化せていないからね。
「大きくなっても寂しがりやなモニカを我々も可愛がっていましてね。モニカが今のウィルコくらいの頃にテラが犬ブログやYouTubeの犬動画をみせたところ弟が欲しいと言い出しました」
ずずっとお茶を啜るシモンさん。
「父もモニカのお願いをすぐに聞き入れて子狼を創造したのです」
ルイスはモニカが大きくなってから迎えた弟だったらしい。
「モニカはもちろん、愛犬家の父も大喜びでルイスを迎えてしばらくは大騒ぎでしたよ。小さかったルイスはやんちゃでしたから」
モニカの毛皮に埋もれて眠るルイスは静かで大人しい。
「あんなに大人しく無かったですよ。回復期のちびルイスは暴れると思うので覚悟してくださいね」
シモンさんがにっこり笑った。




