第201話 ミノスさんとスタブロスさん
ミノスさんとスタブロスさんが勧めてくれた商品を味見させてもらうことになった。
「こちらはオリーブの実です。塩漬けとオイル漬け。村で採れたハチミツもどうぞ」
ルイスとモニカがオリーブを試す。
「オリーブとワインが合うな」
「ええ美味しい組み合わせね」
ウィルコと私はパンにハチミツをつけていただこう。
「このハチミツ美味しい!」
「色も風味も違うね、こっちは凄く味が濃いよ」
「カレンちゃんは違いが分かるのかい?濃い色のハチミツはオークの樹の樹液から採れたものだよ」
「こっちの薄い色のハチミツは、ほんのりオレンジっぽい香りがするよ」
「ウィルコ君も鋭いな!これはオレンジの花のハチミツだから大正解だ」
ミノスさんに褒められてウィルコと私の鼻がぐんぐん伸びる。
「2人はこれを売りに行くところなのか?」
「そうなんですよ、いつも村で消費する以上に出来るし今年は税で取られず、かなり手元に残ったので」
「春のハチミツの収穫も終わって季節も良くなったから遠くに行ってみたい気持ちもあって」
「良ければ俺たちにも少し売ってもらえないか?」
「それはありがたいです」
条件を確認して取引を終えた。東で販売する商品が増えたよ!
「俺たちはさらに東へ向かうつもりなんだが、そこで仕入れさせてもらったハチミツやワインを販売する」
「コモティ村の名産と伝えるわ。東から独自に仕入れに行く商人が出てくるかもしれないけど大丈夫?」
「そうなったらありがたいですよ」
「出かける必要が無いですからねえ」
ミノスさんとスタブロスさんから東の話を少し聞いた。国境を越えた先には村もあれば遊牧民もいるらしい。たまに商人が行き来することもあるが稀なことで実態はよく分からないとのことだった。
── 私たちは知っているんです。遊牧民の現在地まで分かっちゃうんです。ミノスさんもスタブロスさんも気をつけてねって心配してくれてありがとう。
「ハチミツに関しては今のうちに出来るだけ売ったほうがいいぞ」
「どうして今なんですか?」
意味が分からない様子のミノスさんとスタブロスさん。
「北部で甘い調味料の増産が始まっている。今年の秋以降はハチミツの市場価格が下がるかもしれない」
「僕の意見は違うよ!」
ウィルコがルイスに反論する。
「甘いものが増えても増えただけ売れるから値段は下がらないよ」
供給が増えても需要は減らない。甘いものは麻薬だというのがウィルコの持論だ。
「値下がりしたらウィルコやカレンみたいに甘いものが好きな人たちには嬉しいでしょうね」
「カレンだって値下がりしないって思うよね?…カレン?」
── 何か聞かれているような気がする…。
「ワインが効いているな」
ワイン入りのリンゴジュースで眠くなってしまった。モニカにもたれてもう動けない。
「カレンったら可愛いわ。このまま寝かせちゃうわね」
ウィルコが私の手からカップを取るとモニカが私を抱き上げた。
「片付けは我々にもお手伝いさせてください」
後片付けは男性陣に任せて私を抱き上げたモニカが馬車の荷台に戻ると見せかけて結界に帰った。




