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第185話 メープルファッジ

 エミリーさんとトーマスさんがたずねて来た。


「突然ごめんなさいね」

「いいえ、きっと私たちが持ち帰ったアレの話なんでしょう?」

「悩ませちまって悪いな」


「今日は仕事の話じゃないの…」

「エミリーさん?」


「……お土産に頂いたメープル・マフィンとメープルファッジを、どうしてももっと食べたくて!製造方法はもちろん秘密よね?私だって無理を言うつもりは無いわ。私だって商人の妻ですもの!これがどんなに凄い商品か分かるわ!黄金に等しい価値があるわよね!でももう全部食べてしまったの!お金で済む話じゃないと分かっているわ!でもお願い!私に払えるだけ払うわ、だからお願…」


「もちろんレシピは教えるよ」

 あっさりとウィルコが答えた。


「材料は全部揃っているから一緒に作りましょう」

「お菓子作りは結構体力が必要だからトーマスも覚えろよ」

 モニカとルイスもあっさり答えた。


「エミリーさん、トーマスさん、エプロンをどうぞ」

 私がエプロンを渡すも、エミリーさんもトーマスさんも目がまん丸だ。



「またか!お前らは!商売敵しょうばいがたきに貴重な情報をホイホイホイホイと!」

時間差でトーマスさんが噴火した。


「メープルファッジとメープルマフィンは?」

「食べたいわ!」

「じゃあエプロンして」

「手を洗って」

 ウィルコに促されてエプロンをつけて手を洗うトーマスさんとエミリーさん。



「じゃあメープルファッジからね!まずは準備、木のお皿にバターを塗っておくよ。ここにドロドロに溶けた熱いファッジを流し込むんだ。油を塗っておくと冷めてから剥がしやすいからね」


 エミリーさんがお皿にバターを塗る。とても真剣だし丁寧だ。トーマスさんも丁寧な仕事だな。


「お鍋にメープルシロップとバターを入れて火にかけて煮立たせたら牛乳の濃い部分を入れて沸騰させるよ、休まず混ぜ続けてね」

 

 エミリーさんは小さな片手鍋、トーマスさんのお鍋は少し大きめ。混ぜるのは大変だがお鍋から漂う甘い香りにエミリーさんの表情が緩みまくりだ。


「グツグツ煮たったメープルシロップとクリームのミックスを火から下ろしたら、冷ましながらホイッパーで混ぜる。冷めるまで手を止めないようにね」


 ウィルコの指示で20分くらいグルグル。電動のハンドミキサーで混ぜたいところだけど仕方ない。現代でも手作りスイーツって大変だよね、パティシエに男性が多いのは納得だなあって思ってた。


 エミリーさんとトーマスさんから『うえええ』とか『ま、まだ?』なんて声が聞こえてくるけどまだまだだ。


 細い美少年のウィルコは顔色を変えずに混ぜ続ける。

「ここで頑張って空気を含ませるように混ぜると僕のレシピみたいなファッジになるから頑張って!」


 エミリーさんがちょっとやる気になったが身体がついていかないみたい。


「代わるわ」

「トーマスは俺と交代だ」

 交代したモニカとルイスが10分以上、力強く混ぜる。


「このくらいで良いかな、バターを塗ったお皿に注ぎ入れて平に慣らすよ。充分に冷めたら切り分けて完成。冷ましてから四角く切り分けるよ」



「こんなに大変だったのね…」

 冷めるまで待ちきれないエミリーさんだが、再現する自信が無さそうだ。


「美味しいから頑張って作ってね」

 余裕たっぷりなウィルコだった。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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