表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/284

第135話 サンデーロースト

「カリフラワーチーズを食べたい」


「カレン?」

「チェダーチーズたっぷりで食べたい」


 寒くなると食べたくなるチェダーチーズたっぷりのカリフラワーチーズは、生前にイギリス人の元彼がよく作ってくれた庶民の味だ。

 男性の恋はフォルダを新規作成して保存、女性の恋は上書き保存というが、私の場合は食べ物だけ別名保存だ。ちなみに食べ物以外は自動的に上書きされる。



「今日はイギリスっぽいご飯にしようよ」

「お肉があれば大丈夫なんじゃないかな?」

 ウィルコが横目でルイス狼とモニカ狼を見ながら答える。

「サンデーローストならお肉たっぷりだから大丈夫!」

「じゃあ今日のメニューは決まりだね」



 サンデー・ローストとは、日曜日に食べるイギリスの伝統料理だ。ローストする肉もビーフ、ポーク、チキン、ラムなどお好みの肉で良い。

 サンデーローストといえばヨークシャー・プディングは欠かせない。シュークリームの皮だけみたいなパンのようなもので苦手という人もいるが私は大好きだ。

 イギリスのパブから出前を取って楽しようかと思ったが、たくさん作ってアイテムボックスに収納することにした。目先の楽よりもお正月に楽したい。



「じゃあカリフラワーの調理から始めよう」


 カリフラワーを小房に分けて塩茹で。

フライパンでバターと小麦粉を入れる。そこに牛乳を少しずつ加えてダマにならないように混ぜる。なめらかに混ざったら胡椒とナツメグとマスタードを加える。

 そこにチェダーチーズの塊をすりおろして加える。チーズはたっぷりね!チーズの塩気があるけど一応味見して足りないようだったら塩をふってよく混ぜる。

 耐熱容器に塩茹でしたカリフラワーを敷いてソースをかける。さらに追いチーズをパラパラしてオーブンで焼く。

 焼けたらアイテムボックスに入れておこう。熱々が美味しいんだよね。


「お肉はグレイビーソースを添えたロースト・ビーフとアップルソース添えのローストポーク、ローストチキンにはグレイビーソースとクランベリーソース、ローストラムには…好みが分かれるけどミントソースね」



「じゃあ全部のお肉を焼いていこうか」

 ウィルコが手早く下処理してくれて、すべてのお肉がオーブンに入れられた。


 ヨークシャープディングはインターネット通販で多めに買おう、余ったらアイテムボックスに入れておけば時間経過なしだ。

 付け合わせの野菜はローストしたパースニップとポテト、ちょっと茹ですぎなにんじんとグリーンピース。overcooked…茹ですぎなのがイギリスっぽい。


「グレイビーソースとクランベリーソースは感謝祭で作ったのと同じなんだけどアップルソースとミントソースは、まだ作ったことなかったよね?」

「うんアップルソースから教えて」


 リンゴは皮をむいて小さめの角切りにして少量の白ワインでトロトロになるまで煮込む。

「焦げないように弱火でかき混ぜるながら火にかけてね」


「30分くらいでリンゴがトロトロしてきたら完成。このソースはブラムリー・アップルっていう品種の青リンゴで作るってこだわりがあるみたい」

「普通のリンゴと違うの?」

「生で食べると酸味が強すぎるんだよ。ローストポークに添えるソースにする時は甘くないリンゴが合うんだって」


「そうなんだ!ミントソースは?」

「脂身の多いラム肉をさっぱり食べられるからミントソースが合うって理屈らしいけど好き嫌いが分かれるんだよね。私は嫌いじゃないし出されたら美味しく食べるかな」


 細かく刻んだミントに小量の砂糖とお湯を加えてよく混ぜる。そこにモルトビネガーを加えて混ぜる。ミントによって風味が強すぎる場合があるので味見して砂糖やモルトビネガーを追加して好みの味に調整するよ。


出来上がったミントソースをウィルコが味見した。

「この味なら油っぽいお肉に合いそうだね」



「お肉も焼けたしご飯にしようか!」

 オーブン前で尻尾を振っていたルイス狼とモニカ狼が小走りでやってきた。今日もデカ可愛い。


 多めに作ったので、お肉も付け合わせも大半はアイテムボックスにしまって、残りをテーブルに運んだ。



「イギリスのサンデーローストっぽくワンプレートに盛り付けたよ。一応ソースはロースト・ビーフにグレイビーソース。ローストポークにアップルソース。ローストチキンにグレイビーソースとクランベリーソース。ローストラムにミントソースが合うんだけど好きな組み合わせで食べてね」


「チキンとクランベリーソースの組み合わせね!」

 モニカが感謝祭で初めて食べて気に入った組み合わせだ。

「モニカ、好きだったよね。アップルソースも試してみて」

「これも美味しいわ」

 やっぱりモニカはフルーツ系のソースとお肉の組み合わせが好きみたいだ。また作ろう。



「これ肉じゃないけど美味いな!」

ルイスが気に入ったのはカリフラワーチーズだ。

「ホワイトソース好きだもんね、ルイスに気に入ってもらえて嬉しいよ」


「僕は全部の組み合わせが好き。どれも美味しいね!」

ウィルコは全部気に入ってくれたみたい。

「アイテムボックスに入れてあるからお正月にまた食べようね」



「この緑のソースは初めてだな!」

「ラムに合わせるのね!」

 ルイスとモニカがローストラムにミントソースをたっぷりつけてバクっと食べた。


……そして2人の顔が痺れたように震えた。


「ルイス!?モニカ!?」

 ウィルコと私がお水の入ったグラスを2人に渡すと一気飲みした。


「なんか凄かった…」

「まだ鼻の奥が痺れているわ…」

 涙目のルイスとモニカが水をおかわりした。狼にミントは刺激が強すぎたようだ。



 その後、口直しと言いながらいつも以上に肉を食らったルイスとモニカだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

よろしければ、こちらもどうぞ。
『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ