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第119話 野営地でホットサンド

「南部に行こう!」


 結界での連休を楽しんだ私たちは南部への旅を計画した。夏の間、暑さが原因で訪問出来なかった地域だ。


「ちょくちょく見ていたから順調なのは分かっているけどね」

 そう、行けない間はウィルコが見ていたしリビングのテレビにウィルコがダイジェスト映像を映してくれたのを一緒に見たりしていた。


「クエンカにも行くわよね?」

「もちろんだよ」

「マリアさんのコシードを食べられるな!」


 サンタンデールでリカルドさんの宿に泊まり、クエンカでマリアさんの宿に泊まった。前回来た時は夏でルイスとモニカがバテバテだったが、今回は元気な2人を見て喜んでくれた。

 マリアさんが張り切って作ってくれたコシードをルイスとモニカが嬉しそうに完食し、クエンカを後にした。



「サンタンデールもクエンカも順調に発展しているね」

「うん、南部はもともと環境に恵まれていたから順調な地域が多いよね」

 馬車の御者席でのウィルコとの打ち合わせも鼻歌が飛び出しそうなくらいだ。


「そろそろ野営地だね」

「誰か先客が居るみたいだよ」


「それなら今夜のメシはホットサンドだな!」

 張り切ったルイスが後ろから顔を出す。ホットサンドメーカーを、この世界の人たちに広めたいらしい。



「カレンちゃんじゃないか!」

 野営地で馬車を停めて馬たちの世話をしようとしたら声をかけられた。野営地の先客はムルシア村の農業組合のミゲルさんとホルヘさんとサルマさんだった。


「ミゲルさん!サルマさんとホルヘさんも!」


「近くの村にドライフルーツを販売してきた帰りなんだよ」

「収穫期以外に甘いものを食べられるって喜ばれてね」

思わず駆け寄ったら嬉しそうに撫でられた。


「出来すぎて食べきれずに捨てていた分を食べてもらえるなんて嬉しくてねえ」

「良いこと教えてもらっちゃったよ」

 会話の流れで私たちの馬の世話を手伝ってくれた。


「手伝ってくれてありがとう」

「食事中だったんじゃないか?悪かった」

「いやいや、旅の食事なんてあっても無くても変わらないからなあ」

「それよりルイスさんとモニカさんが元気そうで良かった」

「2人が元気で良かったな、カレンちゃん、ウィルコ君」

 前回、買い取りに行った時は夏でルイスもモニカもヨロヨロだったものね。


「旅の食事が味気ないって携帯食料を食べているの?」

「旅といえば携帯食料だろう?」

「ふふふ…世の中は変わったんだ。一緒に食おう、今日はホットサンドだ!」


 ルイスとモニカが張り切って、ホットサンドメーカーを取り出し、パン、野菜、肉、チーズをスライスした。


「焚き火もいい感じだよ、スープは具を足して温め直しでいいよね」

 ウィルコがコンソメスープに野菜とベーコンを足して味を整える。


「じゃあ焼いていくぞ」

 ルイスがハム、チーズ、ハム、チーズを6回繰り返してハムチーズサンドを作る。両手で2台のホットサンドメーカーを操っている。

 モニカはコンビーフと千切りキャベツを挟んで焼いている。


「スープをどうぞ」

 ウィルコが熱々のスープを配る。


「焼けたぞ」

「こっちもよ」

 モニカがコンビーフとキャベツのホットサンドをミゲルさんとホルヘさんとサルマさんに配る。


「どんどん焼いていくから、どんどん食べてね」

「チーズ入りは味見からだな」

 ルイスがハムチーズのホットサンドを味見サイズにカットしてミゲルさんとホルヘさんとサルマさんに配る。


美味うまっ!」

「これは美味い!」

「ハムとチーズですって!?」

「気にいった?もっと焼こう。どんどん食ってくれ!」

さっそくルイスがハムとチーズを6回重ねて焼き始める。


「肉とキャベツの組み合わせも美味しいなあ」

「スープもいい味ねえ」

 ミゲルさんとホルヘさんとサルマさんも気に入ってくれたみたい。美味しいって食べてくれるのは嬉しいよね。


「これはベーコンと卵だよ」

 ウィルコも両手で2台焼きだ。ベーコンエッグのホットサンドを焼き上げた。


「次はトマトソースとモッツァレラとバジルのにして!」

 私はマルゲリータ風の組み合わせをモニカにリクエストした。


「さあどうぞ」

「ありがとモニカ」


「俺はハンバーグを挟むぞ」

「豚肉のハニーケチャップ炒めも限界まで挟みましょう」

「僕はもう一回ハムチーズを焼くね」

 

 中濃ソースやマヨネーズを使えないけど充分美味しく出来た。


「こんなに美味しい食べ方があるんだねえ」

「この前のデモ販売で売っていたチーズ?こんなに美味しいものだったのね」


 前回のデモ販売では試食の前にチーズについても説明したが、ウィルコにポーッとなったお嬢さん達は気にせず食べて美味しいと喜んでいたが全体的に微妙な反応だった。


「ホットサンドメーカーはパブリック・ドメインの神託であったやつだ。誰でも自由に作れる」

「私たちは愛用しているの」

 ルイスとモニカがホットサンドメーカーをミゲルさんとホルヘさんとサルマさんに見せる横で私がお茶を淹れる。


「これはリンゴの蜂蜜煮とクリームチーズを挟んだホットサンド、甘いからデザートにどうぞ」

 ウィルコがデザートサンドを勧め、私がお茶を配る。

「お茶と一緒にどうぞ」


 いつも通りルイスとモニカは甘いものは食べない。ミゲルさんとホルヘさんとサルマさんとウィルコと私はデザートサンドをお茶と一緒にいただく。


「これも美味しいねえ!」

 ミゲルさんとホルヘさんとサルマさんはチーズに抵抗感が無くなったようだ。


「ドライフルーツは北部でとても喜ばれたの。来年は大勢の商人がムルシア村へ押し寄せるわよ」

「商人たちは北部や他の地域の珍しいものを持ってくるぞ」

「交易が活発になって、もっと美味しいものが生まれるかもね!」



「嬉しいねえ」

「腐らせずに済むだけでも嬉しいのにねえ」

 涙もろいミゲルさんとホルヘさんとサルマさんの涙腺が決壊した。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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