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第110話 特許とホットサンド

 洗濯バサミで気づいた。特許とかその辺りを整えないと争いが起きるかも。


「鍛治師や調理師、あらゆる生産職に必要な制度だったね」

すっかり忘れていたよ…。


「役所に新しい部署を作ろう。公務員も新たに採用だね」

「ダッチオーブンやメスティンみたいに著作権フリーの商品は誰でも作れるように正式なレシピを登録して、誰でも自由に閲覧出来るようにしよう」


「料理の基礎も著作権フリーで登録しよう。出汁の取り方や灰汁はすくえと教えたい」

「保存食や燻製の作り方もね」

「薬の作り方は免許制にしたけど、軽い不調に効果のある薬草の利用法なんかは広めましょう」

 うん。胃腸のトラブルとか軽い火傷とか、家庭ですぐに対処したいよね。


── たくさんあるな。


「パテントとクリエイティブ・コモンズとパブリックドメインの考え方を広めよう」

 でも地球の法律は難しいのでシンプルにしちゃう。誰でも理解できないと困るしね。



パテントは特許。発明や創作物に権利を主張すること。利用されると権利者にお金が入る。


クリエイティブコモンズは、ある一定のルールのもとに自由な引用を認める。


パブリックドメインは著作権切れ。パテント権が消滅しているから引用どころか改変も自由に出来る。



ヨナスさんの鮮やかなリネンはパテント。あの独自の染め方も模様もヨナスさんに権利がある。


一般的なチーズの製法はクリエイティブコモンズ。

特別なチーズを秘密の製法で作っていて、そのレシピを守りたいなら、申請してパテント扱いにしてね。


私たちが広めているものは全部パブリックドメイン。ケチャップやドライフルーツ、ダッチオーブン、メスティン、洗濯バサミ、燻製、脱水機…全部フリーだ、好きにしてくれ。


「こんなものかな」

「必要に応じて制度を修正していこう」

「最初はシンプルでないと受け入れられないわよね」


 公務員の募集と制度について神託で知らせることになった。パブリックドメインなものは詳細を役所で閲覧出来るから、どんどん利用して欲しい。



「そろそろ肉の支度を始めないか?」

「晩ごはんの準備ね」

言い直した。

「今日は何にしようか」

「この前、焼いたパンを違う食べ方で食べようよ」

私のパンブームは終わっていないのだ。


「食べ応えがあるなら良いわよ」

「じゃあ決まりね!」

ちゃんと肉もあるから安心して。


「ホットサンドにしよう、好きなお肉を挟んで焼こうよ。直接コンロや火にかけて調理をする直火式のホットサンドメーカーを買うね」

 どうせルイスとモニカは欲張って具材をたくさん入れるだろうから、たくさん挟めるメーカーのやつにしよう。あとは人数分のカセットコンロ。


「ホットサンドメーカーはダブルにするね」

「だぶる?」

「中に仕切りがあって半分にカットされた状態で焼き上がるの。いろんな種類を食べたい時にちょうどいいよ」


 ウィルコがパンと野菜を用意してくれる間に私はアイテムボックスから調理済の具材を出そう。


 千切りキャベツ、トマト、玉ねぎのみじん切り、バジル、アボカド、オリーブ、キャロットラペ、ピーマンの輪切り。

 ハム、コンビーフ、キーマカレー、ハンバーグ、カリカリベーコン、ミートソース、ローストビーフ。ホワイトソースやトマトソースも出しておこう。

 チェダーチーズ、モッツァレラ、ツナマヨ、ゆで卵のスライス、半熟の目玉焼き…こんなものかな?気づいたら追加で出せばいいよね。


「シモンさんとテラ様も呼ぼうよ」

「ご招待ありがとう」

「すごい食卓ですね」

呼んだらすぐに来てくれた。食材と人数分のカセットコンロでテーブルがいっぱいなのだ。


「じゃあ始めよう!好きな物を挟んで好きに食べるんだけど最初は私が焼いて見せるね」


 ホットサンドメーカーにパンを乗せて、ハム、チーズ、ハム、チーズを6回繰り返した。挟める限界まで挟んだよ。同時に3つのホットサンドメーカーで、じっくりと焼いていく。


「そろそろかな?」

ホットサンドメーカーを開くと美味しそうな焦げ目のついたホットサンドが出来上がっていた。ダブルだから6人分出来た。

「食べてみて!」


「すごいわね…ハムとチーズのミルフィーユじゃない」

「これは美味しいですね」

「好きに食っていいんだな」

ルイスがやる気です。

「他に挟みたい物があったら言ってね、あれば出すから」


みんな好物を挟んで楽しそうだ。


 私はツナメルトにしよう。パン、ツナマヨ、玉ねぎのみじん切り、チェダーチーズ、パンを重ねて焼く。そろそろかな…うん、いい焼き色。ダブルだから2つできた。


「ウィルコ、1つ食べない?アメリカのホットサンドの定番、ツナメルトだよ」

「いいの?食べたい!…美味しいね、これアメリカのドラマで登場人物が食べていたよ」

 予想通りアメリカかぶれなウィルコ好みだった。私も一口…うんチェダーチーズは2枚重ねて正解だね、美味しい。


「姉ちゃんのキーマカレーを挟んだやつ美味いな!ゆで卵と厚切りベーコンも入ってる」

 ルイスとモニカは相変わらず仲良し姉弟だな。協力して1番美味しい組み合わせを探そうとしてる。

 でも無駄ですよ、美味しい組み合わせは無限にあるから1番は永遠に決まらないよ。



 「パンのお供を地球からインターネット通販で取り寄せたから、こっちも食べてね」

 私は生アーモンドバターを焼きたてのパンに塗って…そのまま食べても美味しい。さらにハチミツをかけて…もっと美味しい。


「この生ハムも肉厚で美味いな、パンに合うぞ」

 ルイスがバゲットに生ハムを乗せているが、この食べ方も大正解だ。

「この生ハム、ジューシーで美味しいよね。こっちも試して見て、鯖のリエットとイベリコ豚のレバーパテ。スモークサーモン、うにバター、フムス。テリーヌは鴨とロブスターとホロホロ鳥の3種類ね。この発酵バターは海藻入りだよ。日本じゃなくてフランスのメーカーの商品で海藻入りって珍しいよね、美味しくて現地でも人気なんだって」


 私は次は海藻入り発酵バターが食べたいな。お皿にスモークサーモンとパンを取って…パンに海藻入り発酵バターをたっぷり塗って、スモークサーモンにレモンを絞る。…磯の香りが練り込まれた発酵バターとスモークサーモンが合う。

「美味しい〜」


「本当に美味しいですね」

「シモンさんも気に入った?」

「ええ、こうやって好みに組み合わせるのも楽しいし、食材がどれも素晴らしい。ウィルコの世界で作ったものも美味しいですし。テラの世界の食のレベルには毎回驚かされます」


「シモンがそんなこと言うの珍しいわね」

テラ様が驚いてる。

「私はちゃんと評価していますよ。中間管理職なので権限は無いだけで」


微妙な空気になった…。



「あのね、これシモンさんが好きだと思うの!」

 沈黙に耐えられない私が取り出したのは肉まんだ。神楽坂にある有名なお店の美味しいやつを取り寄せた。


「この肉まんをホットサンドメーカーで焼きます!」

両面を1分ずつ焼いて…うん良い焼き色!

「さあ、どうぞ!」


「美味い!」

「パリッとした表面とフワフワな中身がいいわね」

「焼き小龍包みたいな感じもするわね」

 テラ様の感想は地球のグルメ知識が溢れてる。


「シモンさんは?」

「美味しいですね。カリカリしたところが多いと、もっと美味しいでしょうね」

じゃあこれでどうだ。


「ワッフルメーカーで焼くよ」

 ワッフル型で肉まんを挟んで焼いたらワッフルの形の肉まんができた。見た目は完全にワッフルだ。


「どうぞ」

「…!カリカリの部分が増えてサクサク感がアップしていますね!」

シモンさんが、すごい勢いで完食した。


「皮がカリカリで美味しいわね」

 テラ様もルイスもモニカもウィルコも気に入ったみたい。



「このホットサンドメーカーをウィルコの世界で広めないのか?」

「………そうだね」

言われてみれば問題ないな。


「カレンちゃんたら忘れていたの?」

忘れていました。


「ウィルコの世界の鍛治師でも似たものは作れますね。素材も技術も問題ありません」


 次の旅で広めることになった。野営でも焚き火で焼けるからルイスが張り切っている。

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『飼い主を召喚しました ⋃ ╹ᗊ╹ ⋃』


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