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意気投合

 メグミは妹とすぐに打ち解けた。

 どうやら、会話の流れでメグミがおしゃれだと気付いたようだ。

 年頃なのか、以前よりもおしゃれを気にするようになった明子は、暇な日に買い物に出かける約束まで取り付ける。


 確かにメグミはデートの時も可愛い私服だった。


「翔太君、顔が赤いですよ」

「最近、お兄ちゃんすぐ赤くなるんだよ」

「それは貴重なことを聞きました」

「う、うるさいな……俺は夕食の用意を始める。メグミ、よかったら食べていかないか? 大した物は作れないけど」

「そちらから誘っていただけるとは……早苗に連絡を入れときます」


 妹はこの隙にシャワーを浴びに行き、俺は手伝うと言ってくれたメグミと一緒に夕食を作り始める。

 彼女が料理上手なのはサンドイッチを食べたことで知っていたが、改めて玉ねぎのみじん切りを見て確信する。


「料理は早苗に教えてもらいました。翔太君も出来るとは意外です。女の子にモテるために覚えましたか?」

「モテるためじゃない。妹があまりやらないんでね。覚えるしかなかったんだ。やり始めると楽しいもんだけど……って、そんな手際よく出来ないし、俺にそこまでの包丁さばきないけどな」


 鎧塚さんの何でも教えられる凄さに驚きつつ、エプロン姿のメグミに感心してしまう。


「翔太君の手作りハンバーグ、楽しみです」

「……ハードルを上げないでくれるかな」


 一度玉ねぎを軽くソテーし、ボールに合いびき肉と細かくしたパン粉、牛乳、先ほどソテーした玉ねぎを加えこねていく。

 調味料は塩コショウ、ナツメグと七味唐辛子を一振りだけ。

 手温が高いので、氷を1個だけ入れて混ぜる。


 形を整え、フライパンで焼いていく。

 輪切りにした玉ねぎとジャガイモを焼いて、付け合わせの野菜にした。


 妹と2人きりじゃない夕食は少し珍しい。

 人数が1人増えるだけで嬉しいし、それがメグミなら尚更だ。


「お兄ちゃんのハンバーグは、ご飯いっぱい食べちゃうから注意しないと」

「んっ、美味しいです。たしかにこれは食べすぎに注意しないとですね」

「口に合ったようでよかった」


 料理をすることは好きだし、褒められると嬉しい気持ちになる。

 相手がメグミということもあるだろう。

 食事中、妹がテニス部に入っていることが話題に上がった。


「ご飯のお替わりをお願いします……明子ちゃん、テニス部なんですか……」

「あっ、お兄ちゃんあたしも。その反応は……メグミさん、経験者ですか?」

「ええ、ジュニアスクールに通っていましたから」

「やばっ、強そう……あたし、レシーブゲームがブレークできなくて。今度、教えてくれませんか?」

「喜んで」

「ほら、モリモリ食べろ。2人とも……」


 妹とメグミは先ほどからやけに約束を取り付けているなと思いつつ、お茶碗に普通盛りにした白米を置く。


「多いよ……お兄ちゃん、すごい人とお付き合いしてるんだね。よーし、今度の試合までに克服して優勝だ」

「多いですね、卑怯な……元気で可愛いい妹さんで翔太君がうらやましい」

「ははっ……」

「不束なお兄ちゃんですが、優しくて頼りになるので、末永くお願いします」

「い、いえいえ、こちらこそ、毎日のようにご迷惑をおかけしていると思いますが、よろしくお願いします」


 2人は改まった挨拶をすると、がぜん勢いを増して食べ始める。


「今度は私がご馳走します。明子ちゃんもぜひ遊びに来てくださいね」

「いきます、いきます。ほらお兄ちゃん、メグミさんをきちんと送っていくんだよ」

「わかってるよ」


 妹に背中を押されながら、俺はメグミと夜道を2人並んで歩いていく。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、明子ちゃんとは仲良くなる気がしてたw
[良い点] 期せずして埋まっていく外堀。ある意味では陥落済みではありますが。
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