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幼馴染は学校に来なくなる

 翌日、またしても家を早く出た。

 昨夜はなかなか寝付けなかったために大きなあくびが出てしまう。


「お兄ちゃん、最近早く行くこと多いね」

「まあ……高校生になると色々あるんだ」

「ふーん……ファイトだよ、お兄ちゃん。匂いフェチの人によろしくね」

「ああ……ってわかったようなこと言うな」


 朝練のため朝が早い妹と一緒に家を出るとは――

 確かに時間に余裕がありすぎるが、はやる気持ちが抑えられずじっとしていられない。

 勘のいい妹に手を振ったあと、武井さんのマンションに向かう。


 いつも以上に意識しそうで、彼女にはすぐに見抜かれてからかわれそうだなと予知していた。

 それでも、今日も楽しくなりそうだと思っていた。

 浮かれていたと言ってもいい。


『すいません、今日は一緒に登校できなくなりました。せっかく翔太君から誘っていただいたのに申し訳ありません』


 だから、そんなメッセージが届いたときには頭の中が真っ白になってしまった。


「……気にしないで。体調でも悪いの?」


 動揺を隠せない震える指先で短く返信したがすぐには既読にはならず、かなり落ち込む。


 時間が早いこともあり、一度武井さんのマンションまではそれでも行ってみた。

 外からでは様子がわからなかったし、休んでいるなら電話をするのも迷惑かと思い、肩を落としたまま、駅の方向へ歩いていく。


「どうした? この世の終わりみてえにどんよりしてんぞ」

「白石……おまえ、またこんな早い時間に……」


陽気な友人の顔をみて少しほっとする。


「落ちてんのか? そんな時は目の保養に限る。行こうぜ」


 白石の元気さが今は心地いい。

 暑苦しくも肩を組まれ、親友に引っ張られていく。


「……わるい」

「翔太よ、武井さんとなんかあったのか?」

「いや……武井さんにメッセージ出しても既読にならないんだ」

「そ、それって、お、お前……連絡先交換したのか! なんて羨ましい野郎なんだ」

「えっ、あっ……まあ、何か悪い」

「こんちくしょうめ。あんな美人は、いや武井さんはもっと綺麗になる。二度と現れねえかもしれねえぞ、ぜってえ逃がすんじゃねえぞ!」

「わかってる」

「きたっー、彼女だ、彼女だよ。俺の天使」


 こ、こいつ、真面目に話を聞いてくれているのか疑問だが――

 俺にとっては頼りになる。


「声かけてみれば」

「い、いや、この心臓の高鳴りがす、すごくてよ、とてもじゃないが、喋れそうにねえんだ」


 白石をもってしても、気になる異性へのアタックは一筋縄じゃいかないのか。



☆☆☆



 結局、武井さんは学校には登校せず――

メッセージが既読になったのはお昼になったころだった。


『遅くなって申し訳ありません。ご心配いただいて、大丈夫です。埋め合わせに………………週末、お出かけでもどうですか?』


 謝罪され、そんな卑怯な提案をされて、彼女がいない教室でも一気にテンションが上がった。


『楽しみにしてる』


 クラスメイトに気づかれないように、そんな返信を打ったがなかなか既読にはならない。

 それどころか、次の日も彼女は学校を休んだ。


 武井さんの身に何があったのかを知ったのは、白石と弁当を食べようとしていた金曜日のお昼だった。

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