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メッセージ

「Qu'est-ce que tu fais? (なにしてるの?)」

「翔太様とお話を」

「tous les deux(2人で!)」

「お誘いしたのは、わたしです。ぷっ、くふふ」

「早苗!」

「すいません……お嬢様、落ち着いてください」


 ぎろりと音がしそうなほど、鋭い睨みを俺に利かせた武井さんは隣に腰掛ける。


「ふ、ふっ、2人で何のお話をしてたのよ」

「動揺しすぎですよ。それとお嬢様、口調が」

「おほん。早苗、余計なことは言ってないでしょうね?」

「もちろんです」


 2人のやり取りを聞いて、俺は少し安心していた。

 武井さん、鎧塚さんの前ではあまり猫を被っていない。

 昔のままだ。やはり、クラスでの様子は仮面をしているんだと確信する。


「お嬢様、わたし出すぎた真似をしたかもしれません。翔太様はこちらが言わなくても、すでに守ってくれているようですしね。でも、確認できましたよ」

「う、うるさい、早苗」


 武井さん専属の支援担当者――俺と別れた後の武井さんを知っている人。

 なんだか少し羨ましい。

 そんなことを思ったからだろうな……


「武井さん、明日から一緒に学校行かない?」

「へっ! ……な、なっ、なんでいきなりそんなこと……」

「わたしはそうしたほうがとか、こうするべきですなどとは言ってませんよ」


 慌てて言い訳する鎧塚さんに苦笑いを浮かべながら、いくら年上でも武井さんは怖いと見える。

 なんか、俺と似ているところがありそうだな。


「俺がそうしたいと思ったんだよ。クラスの皆はもはやそんなことで騒がないだろうし」

「卑怯さに磨きがかかりましたね。私の立ち位置ですよ、それ……いいですけど……」

「じゃあ朝、迎えに行くから」

「は、はい……」

「よかったですね、お嬢様」

「う、うるさい、早苗」


 武井さんは誤魔化すように、アイスコーヒーを注文する。

 やはり、彼女相手には先手必勝が効果的か。


「あのう翔太君、たしか妹さんが居ましたよね?」

「いるよ。たまに一緒に遊んだことあったかな」

「はい……なつかしいですね」


 そう言われても、あんまりよく覚えてはいないんだよな。



 ☆☆☆



 夕食を終えると、ランニングのため外に出た。

 体を動かさないと――

 武井さんのことが四六時中(よぎ)ってしまいつつあった。



 星空を見上げながら、気持ちを落ち着かせる。



 冷静になると、彼女の一つ一つの言動がからかいなのか、本当のことなのかもすごく気になってしまう――


 武井さんが毎日のように遊んでいた幼馴染だとわかり、こっちは楽しくてしょうがない。

 おそらくその辺は同じ気持ちだと思う――

 子供の時はわからなかったけど、今はなんで楽しいのか、それがはっきりとわかってる。


 困ったなあ……



 ~~♪~~



 そんなことを悩みながら走っていたら、武井さんからメッセージが届いた。

 誰もいない小さな公園のベンチに腰掛け、スマホを見つめる。


『今日はありがとうございました』

「こっちこそ、クッキーすごく美味しかった」


 面と向かってではなくても、ドキドキするし文字を打つ指先が震えてしまう。


『メッセージでも卑怯ですね……早苗と何を話したのかは想像できます。あまり気にしないでください』

「どういう意味?」

『私は望んでここにいます。その……迎えに来ることも心配してとかならば……いえすいません』

「一緒に登校したいからだから。そこ」

『メッセージだと卑怯、さらに卑怯。ありがとうございます。また明日、おやすみなさい』


 武井さんとそんなやり取りをした後、明日が待ち遠しい気持ちになっていた。

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