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目に見える物が全てでは…

そんなこんなで那月の荷物を探す事にした

この町では盗賊の職業は自分だけだと思っていたが

もし盗られたのだとしたら質屋に売っているかもしれない、そう思ったが質屋に聞いてみても盗賊どころか人が来てないらしい


なので町の人に色々聞いてみたが、最近起きた盗みの情報は入って来なかった


ただ、盗賊の情報は手に入った

町の外れにある廃墟を拠点にしているらしい、まず盗まれたとしたらここが当たりだろう


町の人たちに場所を聞き、なんとか廃墟までたどり着いた

廃墟の中には盗賊がひとり立っていて見張りをしている、奥に何人か居るのが分かる


「はぁ、いやだなぁ…」


吉と出るか凶と出るか分からないが、いざ交渉だ

見張りの盗賊に話を聞いてみた


「あ?荷物?なんだそれ、知らねえな?いいか、俺らはなここに来る金持ちから金を奪うんだ、わざわざ金の無い冒険者から金を奪う訳ねぇだろ」


「なにぃ?でもうばばっ…」


那月の口を直ぐに塞ぐ

那月が喋ると面倒くさい事になる

なるべく穏便に済ませたい


「もし良かったら中を見せて貰ってくれたら嬉しいのですが…どうですかね?」


盗賊は少し考えてから


「リーダーに聞いてみるからちょっと待ってろ」


と言って奥のリーダーらしい人と話している

しばらくしてリーダーらしい人がこっちに来た


「お前らが荷物を探している奴らか、お前ら3人だけか?」


「そうです、申し訳ないですけど見せて貰えますかね」


「そうか、入れ!だがお前らが探しているものは何も無いぞ」


確かに何も無い、廃墟の隅々まで探したが見つからなかった


「ありがとうございました、確かにありませんでした、疑って申し訳ないです」


「がっはっはっ、いいんだ同じ盗賊同士気楽にいこうや」


結果的に何も出て来なかったのでさっさと廃墟を離れた

ぐっと疲れが出てくる、なんだかんだで意外と優しい人達だった


「何故だ、あんな奴ら、攻撃してきたら返り討ちにしたのに」


「いや、穏便に済ますのも一つの手だからな、一応何かあったら頼んでたよ」


「でも、アイツら雑魚だし…」


「そうかもしれないけど、俺は弱いし、敵の数が何人か分からない以上無駄な戦闘はなるべく避けたかったからね、まぁ優しい人だったから良かったけど」


これでいいのだ、自分の事を過大評価すると思わぬ所でミスをするものだ

しかし、荷物はどこに行ったのだろうか

もう、日が暮れる


「今日は戻ろう、宿は俺の部屋を使っていいから」


「いいのか?でもそしたら創一はどこで寝るんだ?」


「宿のソファでも借りて寝るよ、今は人が多いからどの部屋も空いてないし」


「むぅ、私がソファで寝るから大丈夫だぞ」


「何言ってんだ女の子がソファで寝るな、布団で寝ろ!」


「創一…やさしいのだな」


「さすがソーイチです、紳士です!…ですがナツキさんは私と寝れば万事解決ですよ」


「あ、いいのそれで?狭くない?」


「はい、ナツキさんがよければなんですが」


「すまない、感謝する」


とりあえずは宿で休んで明日また探せばいい

果報は寝て待てだ、急いでもしょうがない

今日は疲れた…

グゥぅぅうと誰かの腹が鳴っている


「す、すまない、お腹が空いてしまって」


「そういえば、昨日から荷物も財布も無いんだよな?帰ってご飯にしよう奢ってやるから」


「良いのか⁉︎」


「はい、帰りましょう」


宿に戻るとすぐに食堂へ向かった

食堂のおばちゃんが持ってくるご飯を次々と食べて、皿が顔が隠れるぐらい積まれていく

頼むからそろそろ止まって欲しいと願うばかりだ

奢るとは言ったもののこれは一大事だ

食堂のメニューは別料金だし明日の宿泊費も無くなってしまう

その願いが届いたのか、お腹がいっぱいになり食事が止まってくれた


「美味しかった、ご馳走様でした!ふぅ、これでいつでも戦えるぞ!」


「まずは荷物を探そうよ…」


「む!そうだった、よし明日は見つけるぞ私の荷物を!」


「元気ですね、ナツキさん」


「本当に、明日は見つけてもらわないとな」


さて、明日は何処を探せばよいのやら

とりあえずは明日になってから考えよう

もう、荷物探しでクタクタだ


「じゃあ、今日はお疲れ、お休み」


「お休みなさいソーイチ」


「お休み創一!歯を磨けよ!あと寝る前にトイレに行けよ!」


「お前は母親か‼︎」



朝になり、荷物探しを再開した

次は荷物の特徴を言って街の人たちに見ていないかを調べた

見た事の無い人がほとんどだった

もう諦めかけていたが、1人のオバさんがその荷物を見たと言っていた


「えっ?何処でみたの?」


「確かね〜、アレよ!あの〜アレ!そう、小さい男の子がね、廃墟まで持ってったのよう」


おかしい、この前廃墟を隈なく見たが確かに無かった


「ほら、あの子よ!」


指の指す方向を見ると男の子が歩いている


「ありがとうございます!」


そのまま、その男の子に向かって進むとその子の横には盗賊の門番君がいた

これはどういう事だ?と思ったがとりあえず捕まえてみた


「ねえ、君ちょっといいかな?」


男の子がビクッと振り向いた


「お、お兄ちゃん誰?」


「君に聞きたいことがあるんだけど」


と、質問しようとすると門番君が遮るように入ってくる


「なんだ…この前の冒険者か?なんかようか?」


「いや、この子にちょっと聞きたい事があってね」


「ダメだコイツが怖がってるだろ、俺を通して話すのならいいぞ」


どうしても話せたく無いのか、男の子と話をさせて貰えない、昨日の事で疑われているから警戒しているのだろう


「いや、少しで終わるから…これぐらいの大きさで白い袋の荷物を知らないかい?」


「おい、何か知ってるのか?」


ビクッとして、小さい声で話した


「実は知らないおじさんからお小遣いやるからあの荷物を取って来てくれないかって言われたんだ…」


「何?知らないおじさん?」


門番君と目が合う、どうやら盗賊団のせいでは無いらしい


「おい、誰だそいつは!何処にいやがる?」


「待ってよ兄ちゃん、場所は廃墟の裏の屋敷だよ、僕は盗んだりしてないよ!」


どうやら門番君の弟らしい、めちゃくちゃ怒っている


「すまん、弟が迷惑をかけた。どうやら廃墟の裏の屋敷という事は奴だ」


「奴とは?」


「この街に住む貴族の1人だよ、そいつの別荘が廃墟の裏にあるんだ」


「でもなんで貴族が人の物を盗るんだ?貧乏貴族なのかそいつ?」


「さぁな…だが俺らの様な貧困者をゴミとしか思っていない嫌な奴だ、この間仲間が貴族の傭兵に殺されたよ、害獣だと思ったとか言ってな」


「なんだそいつ、本当に人間か?腐っていやがる」


「あぁ、だからこうやって子供を使って盗みをさせて、俺らの身内に悪評を擦りつける事でまとめて始末しようとしてるのだと思う…」


くそ、盗賊と言えども人だ、捕まえて、罪を清算すればいい事なのに

そいつは人を人として見ていないらしい


「…本当は俺だって、好きで盗賊になったわけじゃ無いんだ、元々はコイツと2人、孤児で貧しくても辛くても必死に耐えて、職を与えられるまで我慢したんだ!…でも与えられた職は盗賊だった。これしか生き延びる方法は無いんだ!だけど、もし、もしも弟が職を与えられるなら、盗賊にはなって欲しくない!村人でもいいからこんな仕事をして欲しく無いんだよ!…くそっ!」


この人はそうか、ずっと無理をして来たんだ

したくない事をしてでも弟を、たった1人の家族を守りたかったのだと

他の盗賊達もそうかも知れない


「ありがとう、よく分かった。君のおかげで場所がわかったよ…いいか、お兄さんの言う事はしっかり守るんだ」


「うん」


「おい、屋敷にはいるのか?やめておけ、警備はかなり堅いぞ、恐らく下手したら殺されるかもしれない…」


「あぁ、でも仲間の荷物だからな、穏便に済ませるよ、ありがとう」


そう言ってその2人の後を去った


「変な奴だな…」


ぼそっと弟の手を握って、その姿が消えるまで見続けていた

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