一応冒険者なんですけどね!
外に出るとフードを深くかぶった奴が仁王立ちして待っていた
完全に忘れていたが、教会に入って1時間くらいずっと待っていたんだなこの人は
「おい、貴様!盗賊だな?」
スルーする、面倒だし、知らない人だし
「ちょっ、おい!何故離れる!話しかけているだろ!ちょっと、待って!無視はやめてくれぇえ!!」
なんか可哀想になってきた、半泣きのような声だし
いやもう泣いてるだろこれ
「なんですか?なんか用ですか?」
「んっ、貴様盗賊だな?」
「そうですが、なんで?」
するとフードを外した
その下には古傷があるが綺麗な顔をした女の子だった
「この盗賊どもが!私の荷物を盗んだ事を後悔させてやる!覚悟」
話の訳がわからん、何のことだがさっぱりだ
「あのな…なんの事だか全然分からないぞ?そもそも、あんたの荷物なんて知らないし…」
「貴様は私の質問で盗賊かと質問をした時、そうですが…と答えただろ」
「…はぁ」
「つまり、貴様は盗賊で私の荷物を盗んだという事だ!」
「いやいや違うから!職業が盗賊なだけだから」
「問答無用、喰らえこの盗っ人がぁ!」
一瞬で間合いを詰めて正拳突きを打ってきた
あまりの出来事に身体の反応が遅れた
身体を捻り、倒れる事でギリギリ回避する
「うわっ、危ねぇだろ!!」
「ほう、今のを避けるか…じゃあ、3割を出すか?」
「おい、だから違うって、盗んだのは俺じゃないんだって!どうしようメイ?」
「そうですね…あのすいません、彼は盗賊という職業ですが、物は盗んでいませんよ」
「証拠がないだろ、盗んでいないというな!」
「では、貴方には証拠があるのですね?」
「勿論!アイツは言っていたぞ街で、俺は悪い盗賊だとな!」
『あ、あの時か!冗談で言ったはずの言葉がまさかこんな事になるとはまさに嘘から出た誠だ、いや盗んでないし誠ではないけど…』
「私が言っているのは物的証拠の事です、確実にこの人がやったという証拠は無いのですか?」
凄い迫力だ、こんなのは出会って初めてだ
「うっ、そう言われると…じゃ、じゃあお前達の宿に私の荷物があるか確認させろ、そしたら犯人で無いと信じてやる」
おお!凄い、相手が怯んだ!
これで穏便に済ませられる、もういきなり殴っては来ないであろう
「だが、まだ分からない以上警戒は解かないからな!」
という事で街巡りは急遽変更して宿へと戻った
帰る道中、後ろではシャドウボクシングをずっとしている
うるさいし、目立つし、恥ずかしい
やめてくれとは言ったものの
「ふざけるな、そう言って止まったところを逃げるのだろう!!」
「しねぇよ!」
この通りだ、話を聞かない
まあ、荷物をとられているのだ
それは誰もが神経質になるはずだ
宿に着いて、まず俺の部屋を探した
勿論何も出てこない、装備とアイテムぐらいだ
次にメイの部屋だ、綺麗過ぎて、奴も直ぐに諦めた
「うぅ…すまない!私の早とちりで貴方達に無礼な事をしてしまった…本当に申し訳ない!」
フォームが段々と土下座になりそうだったので流石に止めた
「いや、分かってくれればいいんだ。そういえば名前を聞いてなかったな、俺は創一だ」
「…私はナツキ、職業は格闘家だ」
「私はメイです、よろしくお願いしますね」
「あぁ、よろしくメイ、創一…ところで話は変わるが創一は召喚者か?」
「なんでわかるんだ!?」
「名前だよ、明らかに日本人の名前だ、創一なんでこの世界では聞かないぞ」
「まさかナツキ、お前も召喚者なのか?」
「そうだ八杉那月、日本人だ、しかしなんでこんな所に居るんだ?私みたいな変わり者じゃ無いとこんな所に来ないぞ?」
召喚者ということは王都から来たのだろう
それから那月と話をした
まずは自分が王都では無く、気付いたらこの近くでこの世界にいた事を話して、現在までいたる事を話した
「ふぅむ…なるほど、創一は珍しいというか、王都では聞いたことない召喚者なんだな、私は北の王都から召喚されたのだが…まぁパーティーが気に食わなくて勝手に国の外に出たんだがな、はははっ!!」
笑い事なのだろうか、いきなり仲間が消えたらだいぶ困惑すると思うのだが
ましてや勇者パーティーなのに
「それって大丈夫なのか?一応勇者のパーティーなんだろ?」
「ああ、良いんだ!アイツらは勇者というか騎士団というか…とにかく気に食わん!私の正義と道が逸れたんだ、仕方がない!」
「で、なんでここに来たんだ?北の王都からかなり離れているだろ?」
「いやぁ、勝手に抜けてからこの先どうしようかなぁと思いながら旅をしてたんだけど、途中の荷馬車にな行けるところまで連れてってくれと言ったらな、ここに着いたって事なのだ!しかし、話を聞いて無いのもあるが、まさか国を跨いでいるとは知らなかったが…まぁ、なかなか楽しい旅だったな」
「あ、この人はもしかしたら馬鹿かも」
「はい、この人は馬鹿ですね」
「む、そんな事言うな、同じ召喚者同士仲良くしようじゃないか!メイもな!」
悪い奴ではないし、どっちかと言うと面白い奴だ
だが問題は終わってない
「荷物どうするんだ?探さないと」
「そうだな、まずは昨日盗られた場所にまた向かう」
「荷物って昨日からとられたのか!?」
「ん?そうだぞ?だから盗賊の情報を集めていたら、創一が出てきたという訳だ!」
「荷物には何が入っているんだ?まさか財布も入っているのか?」
「実はその通りで、今着ている服以外全部だ!いやぁ参ったぞ!」
『ダメだこの子、完璧なぐらい危機管理が出来てない』
だけど、可哀想だし流石に取り返してあげなくては生活が困るだろう
「ソーイチ、一緒に探してあげましょう」
勿論だ、助けてあげよう
「じゃあ、探しに行くか!」
「いいのか二人とも、犯人扱いしたのに…」
「もうそれは終わった事だし、気にすんなよ」
頭をガシガシと撫でてやる
なんか、捨て犬みたいで放って置けない奴だ
「困っていますので、助けるのは当たり前です!」
「ありがとうー」
那月は2人に鼻水を垂らしながら抱きついて来た