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生きるという事とは…

宿に着いてしばらくしたら落ち着いた

心臓もばくばくしないし、手の震えも無い

しかし、あのイメージだけは忘れられない


「落ち着きましたか?」


メイが手元にお茶を置いてくれた


「あぁ、ありがとう、だいぶ落ち着いたよ」


出されたお茶をひと口飲む

味はジャスミン茶の風味がする

心が和らぐ感じがした


「そういえば、ソーイチの世界はどんな世界か聞いていませんでしたね。良ければ教えて頂けませんか?」


メイがゆっくりした優しい口調で話し掛ける


「そうだな…まずモンスターがいないんだ、それから魔王も勇者も存在しない、職業だって自由に選べるんだ」


「そんな世界が存在するんですね、良い世界から来ましたね」


「あぁ、だから冒険するとか何かを殺すとか普通考え無くて、学校っていう所で年の近い人が集まって勉強して、話して、遊んで…毎日が平和なんだよ。どうしようも無い事で笑って、楽しく過ごして、そんな世界だったんだよ…」


「だから、動揺してたのですね…モンスターだとしても、生き物ですからね。命を奪うというのはとても辛い事です。でもソーイチはその事に気づく事出来て素晴らしいと思いますよ」


「でもさ…これじゃ、モンスターを倒すたびにこんなに動揺してたら、俺らが殺されちゃうだろ?」


メイはお茶を一口飲み、カップをテーブルに置く


「ふぅ…ソーイチはご飯をたべますよね?」


「えっ、うん」


「何故ですか?」


「何でそんな話を…」


「何故ですか??」


「それは、お腹が空くからだろ?」


「じゃあ、ご飯をずーっと食べていなかったらどうなりますか?」


「お腹減って、動けなくなって最終的には死ぬ」


「そうですよね、私達はご飯を食べないと死んでしまいます。その為にはご飯の材料となる生き物を殺さないといけないのです。」


「…ああ」


「自分を生かす為には他人の命と引き換えに生きているということを忘れてはいけません。当たり前の様に食べているものはその命を頂いていると言う事なんですから」


「…」


「命の大切さを忘れたら自分を守れないし、仲間も守れません。確かに命を奪う事に戸惑ってしまうかもしれない、しかし自分が生きる為には、守りたい人を守る為にはその奪う命に真摯に向き合って戦わなくてはいけません」


そうだ、俺のいた世界でもそれは当たり前の事で、一番大切な事だと言うのをこの世界で思い出した

食べ物が自分の所に来るまで無数の命を奪って、自分の生きる糧となっている

ましてや仲間の命がかかっている戦いなんだ、覚悟を決めないと


忘れていた


「そうだな…一緒だったんだな、あの世界でもこの世界でも、命を頂いて生きているんだな」


不思議とデビルラビットの最期の姿を思い出してもなんとも思わなくなった

それが生きるということだと気付き、気が楽になった


「ふふ、どうやら元気になったみたいですね」


「すまん、迷惑かけた。明日からは大丈夫だよ」


「はい、明日から頑張りましょう!では夕ご飯にしますか!」


「よし、そうしよう宿屋の食堂に行くか!」


気が楽になったからか、お腹が空いてきた


「むふふ、今日は何と私が料理を作りますよ!」


「えっ?料理できたの?」


「勿論!淑女たるもの料理が出来て当たり前ですから!」


何でも出来るんだなと感心してしまう

さすが完璧系美少女だ、普通だと美少女は料理下手が相場だと思ったのだが残念だ

いや、まだ分からない、出来たらダークマターになっているとかがあり得るかもしれない


「で、何を作るんだ?」


「デビルラビットのソテーです!」


「え、デビルラビットって」


「美味しいんですよ、肉は柔らかくて臭みも無いですから!じゃあ調理行ってきます!」


行ってしまった、アレ食べるんだね

まぁ、そっちの方が有難い

さっきの話が活かせるし、あのまま残骸として置かれていても、命を無駄にしてしまったと思ってしまうのだから


料理するとなるとしばらく時間がかかるのだろう

時間が空いているので明日の準備を始めた


「しかし、ナイフだと毎回心臓に刺さないとすぐにウサギを倒せないよな、毎回メイの魔法を使わせるのは申し訳ないし、何か工夫をしないとな」


うーん、と頭を悩ます

動きは早く、ナイフでは止まっている時にしか急所を狙えない

ナイフ投げたら、取りに行かないといけないし…


「ウサギかぁ、どうやって狩ればいいんだよ…ん?狩る?」


ふと、狩るという言葉で閃いた


「罠か!」


足止めをする罠を仕掛ければ隙が生まれるはずだ

そうすればかなり楽に勝てるはずだ

それには道具が必要である


「防具屋に行ってみるか」


あのおっさんなら何か武器になる物を揃えているだろうと思い

防具屋に移動した


「すいません〜聞きたいことがあるんですけど!?」


「ふっふっ、おう、いらっしゃい、ふんっ坊主、で?何が聞きっったいんっだ?」


何故か、筋トレをしている

暇なのだろうか


「なんか色々聞きたいのですけど、罠に使う道具とかないですか?」


おっさんがダンベルを置いて筋トレをやめてくれた


「罠ねぇ、トラップツールは生憎切らしててな。他に代用になるやつは…」


カウンター下の木箱をガサガサしている


「お、これはいいかも知れないぞ」


と言って出したのがワイヤーだった


「ワイヤーっすね」


「そうワイヤーだ、だがこのワイヤーは特殊なワイヤーでな!鉱物と鬼蜘蛛の糸を加工したやつなんだよ。伸縮性があって、強度も高い、ワイヤーを張ったら刃物みてぇにズバッと切っちまうんだ!」


「凄い便利じゃないっすか!いくらですか?」


「そうだな、600ザールだ!」


「えっ、装備より高ぇ!」


「馬鹿、当たり前だろ!こんなに良いもんそこら辺で売ってないぞ!」


悩む、ワイヤーだけで装備より高い物を買おうとしているのだ

残りの金はまだ少しあるが

宿にあと数泊出来るかどうかのお金だ

しかし、楽に経験値を上げたい

むむむっと悩んでいると


「しゃあないな、これも付けるからどうだ?」


ホルダーが置かれた

あ、こういうのには弱いのだ


「買います」


こうして罠となるワイヤーを手に入れて宿へ戻った


宿へ戻ると香ばしい香りが漂っている

その匂いは食堂へ続いている

食堂を覗くとメイがこちらを見て手を振っている


「出来ましたよ、ソーイチさん!ご飯食べましょう!」


エプロン姿がとても可愛い

こんな嫁が欲しいと思ってしまう


「ありがとう、おっ!美味そう」


テーブルに置いてあるデビルラビットのソテーが湯気を出している

出来立てだ

椅子に座り、手で合掌をする


「「いただきます!」」


初めてこんなに心を込めて合掌する

ナイフで肉を切るとじゅわっと肉汁が溢れてくる、これだけでも美味そうだ

肉を口に運ぶ、外はパリパリで中は柔らかい、口の中に肉汁と旨味が広がってくる


「うっまい!」


「良かったです!ん〜美味しいですね!」


ソースがまた美味い、米が欲しくなる味付けだ

しかしこの世界にはパンが主食なのだろう

テーブルには小さなバケットみたいなパンしか置いてない

日本人としてこれはキツイ、だがパンもいける


「こんなに美味しいんだな、デビルラビットって」


「美味しいんです!感謝ですね、こんなに美味しく頂ける事に」


「うん、感謝しないとな、美味しかった。ありがとう」


本当に大切な事を学んだ、命は誰かの命を犠牲にして成り立っている事を

明日は行けるはずだ、そう思った


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