この世界はどこですか?
暗闇という言葉が頭に過ぎるような真っ暗では静寂な世界が広がっている、何故と疑問しか出てこない、声も出てこないし、ただこの状況に戸惑い唾を飲み込む音だけがやけに大きく聞こえる。
『なんなんだ?夢…か?俺は確かレジで会計をしてて、お釣りを渡して…ん?』
そこから先が出てこない、記憶が消えているのか、いや正しくはその先がまるで靄がかかっているようで記憶が曖昧だ
『と、とりあえず記憶喪失では無いよな?』
自分の事を整理する
俺の名前は山田創一
宗和高校の生徒で18歳
家族構成は父と母と妹と弟がいる
コンビニのアルバイトの最中に記憶が途切れている事が自分の記憶の最後である
まあ、当たり前だが記憶喪失では無い事が分かった。
『これは夢なのか、起きたら店長が心配するに違いないよなぁ…、しかし夢で思考がはっきりしてるってあまり無いが、おかしくないか?』
その時、初めて何かが聞こえた
「…けて、誰でもいいからお願い」
声は途切れている、しかしその声は確実に何かを求めていた
「おい、誰かいるのか!俺はここにいるぞ!ん?声が出てきた?」
今まで声が出なかった状態だったのにその声を聞いてから出て来たのだ
そして、その声に反応する様に周りが光に覆われていく
「眩しい…おい!どこだ!お前は誰だ!ここはどこ…」
まるで彼の存在自体をかき消すかの如く光が全てを包み込んで行く
激しく光っていた前方が徐々に落ち着いた
力んだ瞼をゆっくりと開けると
そこにはまるでゲームの背景に出てくる草原が辺り一面に広がっていた
草木の香りとそよ風が自分を包み込んでいる
「なんだよここは…見たことない所だ…怖いんだけど」
いきなり自分の知らないところに来たら誰だって怖いはずだ、ましてやバイト中に真っ暗な所になって草原にいるのだから、訳が分からない
「ま、まぁ、どうせ夢だろ、頭をぶつければ目を覚まして、起きるはず…」
夢ならば何か衝撃を与えれば脳が覚醒して目覚めるはずだ
例えばだが、誰もが経験したことがあるはずだろう…高いビルから落ちる夢を見て地面に着く瞬間に体がビクッとなるやつのようにすぐに目が覚めるはずだ
自分の周囲にある手頃な石を拾い、額に思いっきり叩きつけた
「ヴッ!?痛だ!?」
石には額から出た血で染まっていた
そしてじんわりした痛みが頭に響く
「なんでだ、ここは夢じゃないのか?じゃあここはどこだよ!」
その声は草原に響き渡った…
創一は考えた、頭の知識をフル回転して
「くそぉ、痛てぇ、しかしなぁ、これはまさかだと思うが、あれか?転生とかの類いのやつか?それって設定だと異世界に転生してチート能力で世界を救うとかのやつだよなぁ、美少女達を救ってハーレムエンドってなるやつだろうか…まさかそんな人生になるとは…」
妄想が止まらない、漫画やラノベの影響が今の自分を掻き立てる、しかしよく考えてみる
そもそもこの世界はどの様になっているのかが分からない限り、まずここが異世界なのか、海外なのか、過去未来どちらなのか検討がつかない
「でもまぁ、よく考えたらまだここがファンタジー世界なのか分からないし、調べないとだよな…明らかにわかるのは自分の知っている土地では無い事だけどなぁ」
幸いな事に少し先に町らしきものが見えている。そこに向かって歩き始めた。
「しかし、田舎だなここは、電線は無いし車も通って無いし道路も補正されてない。本当に自分が知っている土地じゃあないのか…ん?」
目の前の草むらから何かが飛び出してきた
ポヨンッ
それは半透明で丸くてツヤツヤで…
「スライムだぁぁぁぁぁああ!!」
確定した、ここは異世界であると
水の塊が動くなんて知っている世界ではあり得ない
スライムを見るとこちらに向かって来ている
ゆっくりであるがこちらを目指しているのは間違いないだろう
「おいおい、おそらく転生者で、おそらくチートの俺ならば武器が無くてもスライムなんて雑魚!蹴りをいれれば余裕だぜ…フンッ」
脚で蹴り飛ばす、感覚は水を蹴る様だ
「よっしゃ、粉砕し、て!?」
スライムは何も変わっていない、それどころか飛び散ったスライムが服と触れたスニーカーのつま先が煙を立てて溶けている
「うわわ、なんでスライムがこんな仕様なんだよ!逃げないと、ヤバい!」
どうやら自分の知っているスライムではない、RPGゲームの様な物理攻撃が効くわけではないらしい
自分にとって今分かるのは雑魚であるスライムに殺されるということだけだ
走った、先にある町に向けて
見た所スライムは遅い、追っては来れないはずである
だがその考えは甘かった、スライムは単体ではなかった
岩陰や草むらで隠れていた複数のスライムに囲まれていた、逃げられない
コマンド選択肢の逃げるを押して、逃げられないと表示されたのを思い出す
こういう事かと納得してしまう
「詰んだ、転生して即死とか、ましてや雑魚モンスターで…クソが…」
死を覚悟した、徐々に距離を詰めてくる
硫酸の塊と言っても過言ではないものが飛びかかって来た
「うっ!!」
「《フレイム》」
声と共に豪炎が周りのスライムを燃やしていく、蒸発をして跡形も無く消えた
そこにはthe魔法使いの姿をした少女が立っていた
髪は白く、目は青い…自分が思うに完璧な美少女だ
「あ、あの、大丈夫ですか?あわわ、怪我してるじゃないですか!」
「《ケア》」
少女は創一の額に手を当てて呪文を唱えた
緑色の光が額の傷を塞いでいく
「女神か、貴女は…」
そりゃそうだ、だって炎を出して、手が光って…普通じゃないから
「え?女神じゃ無いですよ、魔術士ですよ!」
「魔術士!?そ、そうなのか、ありがとう助けてくれて、死ぬかと思った。」
魔術士と聞いて、ますますこの世界が異世界なんだなと実感する
魔法も間近で見ると凄いとしか言えない、普通ではあり得ない現象だ
「いえいえ、困った人を助けるのは当然ですから…あの、付近の村人の方では無いですよね、見たことない服装ですし…」
そういえば、アルバイトの服装のままだ、この世界ではおかしいのだろう
とりあえずは町に行って情報を得なければ
「実は、さっき別の世界からですね、そのですね、ここに初めて来たと言いますか」
「まさか、召喚者ですか!?なんでこんな所に?」
ズズッと顔を近づけて、顔をじっと見てくる
「ち、近いから、召喚者って珍しいの?」
こんな近くまで美少女の顔が近付いたのは人生で初めてだ、顔が熱くなる
「あっ、ああ、ごめんなさい。そうですね、召喚者は王都にある召喚堂で呼び出されます。それ以外で呼び出されるのは聞いたことがありません。」
「また、召喚者を呼び出すにも膨大な魔力が必要です、上級の魔術師が5人で陣を形成して三日三晩詠唱しなければなりません。」
「大変なんだな、召喚者を呼ぶのって」
「そうですね、国王の命令によって勇者達を召喚するので…それからですね召喚された召喚者は王都を拠点に生活をするのでこの様な辺境の町に来ないのですよ、依頼がない限りは」
「なるほど召喚者は国王が直々に呼び出し王都で異世界生活が始まると言うのか…ん?勇者達?」
「勇者は1人ではありません、東西南北の4つの国に1人ずつ現れるのです。ただ召喚者全員が勇者になるわけではありません、適性を判断されて職を与えられるのです。」
まだ自分が勇者と言うのは決定されていないのだ、このイレギュラーの転生では判断出来ない。
「そうなのか、それで適性はどこで見てもらえばいいんだ?」
「それなら教会で見てもらえますよ!幸い近くに町がありますし」
教会が職を見極めるのだ、目覚めた場所が町の近くでよかった、モンスターの多い所だったら大変だった。
これは心から喜ぶべきだ
「そういえば名前がまだだった、俺は山田創一だ、創一で頼む!」
「ソーイチと言うのですね!不思議な名前ですね、私はメイ・クラディです!メイとお呼びください。」
「よろしくな、メイ!申し訳ないけれど一緒に街まで行ってくれないかな?一人だと心細くて…」
情け無いが、今はしょうがない、何故ならスライム1匹倒せないほど弱く、この世界の常識が無いのだ
今はこの少女に運命が握られているのだ
「勿論いいですよ!ですが、その代わり…」
と、途中で話すのをやめて下を向きもじもじしている
『その代わりって…なんだ?お金か?何も持ってないぞ俺は
メイは顔を赤面にしてモジモジとしているし
創一よ考えろ……
そうかトイレか!確かにこんな草原だと、公衆トイレは無いのだろうし…
つまり、漏れそうだけどこんなだだっ広い所で用を出すなんて出来ないから壁になれとそう言う事ですねお嬢さん』
と脳内で勝手に回答を出した
「察しましたよ!やりましょう!スライムから助けて頂いたご恩ここでお返ししますよ!!」
「えっ、いいんですか?じゃあ…」
メイの手が自分の前に出てきた
「ん?」
「パーティを組んでもらえませんか!!」
恥じた、あれだけ頭フル回転して出した答えに
『こんな純粋な子が大草原でトイレって、普通考え無いでしょう、心汚いよ自分と…考えを流そう、トイレだけに…、本当にしようもないな、自分は…』
「こちらこそよろしく!」
しっかりと握った握手と爽やかな笑顔で今までの考えを忘れることにした
お読みくださりありがとうございます!
語彙力が無いばかりか、文章構成センスがないもので、度々文章を編集しています…
あれ?ここの説明が足りなくて分からないんですけど…と思った方は是非、ご指導よろしくお願いします!
欲を言えばブックマークをつけて頂ければ幸いです!
これからもよろしくお願いします!