第4話 はじめてとヒサシブリ
とりあえず、全員がチートであることに無理があると感じてきました。そして、自分でもなにを書いているのか分からなくなってきました。
ヤバいです。毎日投稿でもないのに字数が少なくて文章もダメダメでチートでもなくて爽快感が全くない小説ですが...へこたれずがんばります!
「私ね...実は異世界転移して来たの...」
重い空気が漂う。これからどのジャンルの話をするかは、少し察しがついた。
「あ~、大丈夫です大丈夫ですよ。この世界、異世界転移・転生して来た人結構いるらしいんで」
遥的には重たい空気に耐えきれず明るく振る舞ったが、レイカどう受け取ったかは分からない。
「...ごめんなさいね。いきなりこんな重い感じで話して...」
「私や母は...」
私が子供の頃、父から暴力を受けていた。
ことの発端は父の会社が倒産したこと。
「ローンがまだ残ってるのに」「人生終わった」が父の口癖となり、現実逃避をするためか毎日毎日お酒ばかり飲んでいた。お酒がきれると父の機嫌が悪くなり私たちに暴力を振るうようになった。
最初はそれだけで済んだが、父は母が働いて手に入れたお金に手を出すようになった。
行き先は分からないが行く度に財布を空にして夜遅くに帰ってきて、その度に父と母は喧嘩をしていた。
毎日毎日、母にお金をせびるようになった父。
事件が起きたのはそんなある日のことだった。
夜寝ていた私は喉が乾いたと目を覚ました。
時計を見ると12時を回っており、外は暗く月が雲にかかっていた。
寝室の隣にあるリビングへ行くため、部屋の扉を開けようとしたとき父と母の声が聞こえた。
二人ともとても怒っているらしく、多分今までで一番の喧嘩だった。父は母を怒鳴り付け、母はヒステリーを起こした。私は巻き込まれないようにするため部屋で待っていたが、突然二人の声が聞こえなくなった。恐る恐る扉を開けると、そこには血だらけで倒れている父と血のついた包丁を持った母がいた。その時私は恐怖で声を出すことも、動くことすらできなかった。
私のことに気づいた母はゆっくり、ゆっくりと私の方へ近づいた。
私は何とか振り切って玄関の前まで行くことができた。だけど、外に出ることができなかった。外に出たら、もう一生私の居場所は失くなってしまうと思ってしまって。母が追いついた。
あの時聞いた母の言葉を私は忘れられない。
「どうして...どうしてお父さんを...お母さん...」
「仕方がなかったのよレイカ。お母さんはもう限界だったの」
無表情で母はそう言った。手には包丁を持ったまま。
「...本当は、あなたを育てるつもりはなかった。産まれたら、殺すつもりだった」
その言葉に絶句した。何でそう思っているのか、理由すら分からなかった。
母は結婚したときから父に暴力を受けていたらしい。俗にいうDVだ。しかし、私を妊娠してからは父は暴力を振るうことはなくなったらしい。それを母は子供は暴力を受けない。自分の子であり、父の子供でもあるお腹の中の子は何も仕打ちを受けない。そんなのはおかしい。
この子にも何らかの仕打ちを受けさせないと不公平だと、思ってしまった。
だから母は産まれてすぐにでも私を殺すつもりだったらしい。そう説明された。
「だからあなたの名前をレイカにした。...死んで霊になったとしても、私を恨んで殺そうとしたとしても、華を咲かせるような存在になってほしいって...」
「...霊...華」
涙が溢れた。唯一、私の味方だったはずの母が
そんな風に思ってたなんて...。
ここにいても一人、外に出ても一人、私の味方は誰一人としていなかったのだ。
「もう、あなたは殺さない。だから早くここから出てって。...ね?」
母親としての最後の優しさなのか、その方が私にとっての地獄だから言ったのかは分からなかったが私は家を出た。着替えさせてはくれたが深夜の寒空の中行く宛もなく、ただただ哀しみ・孤独感をこらえてひたすら歩いていた。
いつの間にか公園に着いた。ブランコに座りずっとうつむいていた。これから、何をしたら良いか何処へいけば良いのかも分からずひたすら泣いた。前が見えなくなるくらいに泣いて泣いて、いつの間にか眠ってしまっていた。
気がつくと暖炉のついた部屋にいた。毛布が被せられていて...とても暖かかった。
ルーバン様は優しく、暖かく私を迎えてくれここが私の第二の居場所だと思った。その日から私はルーバン様の館でメイドとして働くことにした。最初はぎこちなく失敗ばかりしていたが、それでもルーバン様は許してくれた。
今使っている能力もルーバン様が教えてくれたもの。本当にいい人だと思っていた。
そんな矢先、ルーバン様は私の為と言って、村から少女たちを拐った。でも実際は自分の私利私欲のため。その証拠に拐ってきた彼女たちの目はいつも死んでいた。私と話そうともしなかった。話せたのはメイドの仕事の指示をするときだけ。所詮私はルーバン様の私利私欲を正当化する道具でしかなったのだ。
でも私にはルーバン様しかいなかった。
そのルーバン様も失った。また一人になった。
「でも大丈夫。私はきっとこういう生き方を強いられているんだわ...」
「...今までが最悪なのだったら、これからは良いことがいっぱいありますよ...きっと!」
いつの間にか彼女の瞳は涙をうかべていた。
「...あなたに私の何が分かるの...。あなたに私の辛さが!哀しさが...!孤独が...」
勝手に感情的になってそう言ってしまった。
でも、私が一人なのは事実だ。また拾ってくれる人がいたとしても、私の気持ちを分かってくれる人がいなければ...この先も、ずっと...一人だ。
「私には、レイカさんが今まで味わってきた辛さの全ては分かりません...」
それはそうだ。分かるはずがない。潔く認めた点はまだ人のことを考えてるだろう。
俺はお前のことを全て分かっているキャラでなくて助かった。そんな人は相手のことを何も知らなくて、ただ人を傷つけるだけだ。
「だけど...誰かが、せめて...私だけでもなんとかして分かってあげないと...あなたはずっと...一人ぼっちになってしまいます」
...?何を言っているの。
「ここは異世界なんだから...やり直しましょう。一度や二度失敗しても、スタートラインに立って...1から!また出発しましょう!」
また、1から...。そんなこと一度も考えたことなかった。考えてる余裕すらなかった。生きることに、自分の居場所を守ることに必死だった。
「何かあります?やりたいこととか...えーと、例えば...えー...」
私のために必死になって考えてくれてるの...?
そんなに本気になっている人は今までいなかった。...嬉しい。私なんかのために...。何故だろう...これから彼女と一緒に未来を想い描くことが、彼女と共に日々を過ごすことがとても楽しいことだと感じられる...。
「私にできること...何かありませんか?何か...」
「...なら」
私がずっと欲しかったもの。そんなものは決まっている。私には遠くて、手の届かない場所にあって...絶対にできないと思ってたもの...。
「私と...友達になってくれるかしら?...遥」
「...はい、喜んで!」
彼女は笑みをこぼしてそう言った。
涙がでてきた。涙がでるほど嬉しかった。
「あら?もうこんな時間」
時間を見ると12時を過ぎていた。
「待ってて、お昼ご飯つくるから」
そう言って私は厨房の方へ向かった。
何をつくってあげようか、お昼ご飯をつくるのが楽しく感じられた。こんな気持ちになるのは友達の為につくるだからだろうか...。
お母さん、ルーバン様...そして多分地獄にいるお父さん、ご報告があります。
今日、私に初めて友達ができました。
その人は、この世界では弱くて、思った以上に情けなくて、ちっぽけな存在ですけど...
きっと、いい人です。
窓の外から見えた鳥たちのさえずり、暖かくそよそよと吹く風はレイカに春を感じさせた。
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「エクスプロージョン!!」
遥は目の前にある木を指差してそう言った。
たが、別に桁違いな威力の爆裂魔法が出るわけもなく、何も起きないまま時間は過ぎた。
「それっぽい名前を叫んでも何も出ないわよ~」
「雰囲気だけ...雰囲気だけ味わってみたかったんですよ~!」
エルに指摘されて恥ずかしかったのか、小学生じみた言い訳をした。
今は昼御飯を食べ終わったあとの昼休憩みたいな時間。エルは遥が外へ出掛けたので、何処へ行くのか気になりついてきたという感じだ。
「エルさ~ん。私にも使えそうな魔法ってないですか?」
「んー...。遥に適応した魔法が分からないからね~。まあ色々と試してみたら?」
「まさかの他人事~!?」
まさかの塩対応に遥の心は折れてしまいそうになった。だけどここで折れたら何もできないままになってしまう気もする。
「もーいいです!少し散歩にでも行ってきます!」
遥はふてくされてしまいそう言った。
「じゃあ、夕方までには帰ってくるのよ~」
エルの言葉を聞いていないふりをして、森の方へと進んでいった。
...どれくらい進んだだろうか。一本道を進んできたはずなのに、いつの間にかもといた場所が見えなくなるくらい遠くに来たらしい。
少し不安になった。そろそろ帰った方が良いのだろうか...。
そんな時だった。少年が一人遥の前にいた。
「君って...」
その少年に遥は見覚えがあった。数日前、パンを盗んでいたハーフエルフの少年だ。
しかし、ハーフエルフの少年は遥の問いかけを無視して、森の奥へと走りだした。
「待っ...ちょっと待って!」
遥もその少年のあとを追いかける。
同じ景色が広がる森を、少年に追いつく為にただひたすら走った。途中もとの場所まで帰って来れるのだろうか不安になったが、あまり気にせずにそのまま走った。
崖の所まで来た。下は一応見えるが、落ちればただでは済まないだろう。
少年は観念したのかそのそばで座り込んだ。
「君はあの時の子?」
遥はそう質問した。
少年はその質問にうなずく。
「君は誰?...喋れる?」
そんな急に言われても返答に困るかもしれないが、お構いなしに質問を続ける。
「僕ハ、ルイ。『人』ト『エルフ』ノ子供...」
少し片言だったが、きちんと話すことはできた。
「...ルイ君って言うんだ。私は遥。よろしくね」
遥は明るく話しかける。
ルイは遠くの方をみて、遥の言葉を聞いている様子ではなかった。
「...何でパンを盗んだの?」
遥は質問を続けた。
だが、ルイが答える様子はない。
「ちょっと...大丈夫?私にできることない?」
顔色が少し悪いように見えて遥は少し心配した。するとルイは立ち上がり、遥に向かってこう言った。
「ナラ...」
突然遥の体がフワリと浮いた。体の自由が効かず、強い力で動かされているようだった。そのまま、遥の体は崖の方へと動く。
「死ンデ」
宙に浮いていた体が重力を取り戻したかのように崖の底へ落下した。
「...え」
こんなところに落ちれば一溜りもない。そう分かっていても、どうすることもできない。
無情にも遥の体は崖底へ叩きつけられた。
衝撃で血が飛び散る。幸い頭を打たなかったので即死は防がれたが、動くことができない。
多分、何本か骨が折れたのだろう。あの高さから落ちたのだ。かろうじて生きている方が奇跡なのだろう。
「......痛い」
助けを呼ぼうにも、この高さから叫んでも誰の耳にも届かないだろう。地面が赤く染まる。そろそろ傷口をなんとかしないとこれ以上は命に関わるだろう。何かがこみ上げてきて、思わず吐き出してしまう。血だった。出さすまいと口を手で塞ごうとしたが、血が足りなくなったのか動ける気がしない。怖い。死ぬことが怖い。死ぬのは二回目のはずだが、慣れる訳もなくただただ恐怖が、痛みが、遥に襲いかかる。それに...
今は死ぬわけにはいかない。
あの子を助けないと。
きっとあの子は誰かに操られてる。
だって...だって...
私を崖に落とすとき...あんなに...あんなに...
悲しい顔してた...
免れることのできない死は、遥にゆっくりと迫まる。目をつむり自分の弱さに情けなさに嫌気がさした。
きっと何か理由があるはずなのに...
このままだとあの子は...
ずっと...ずっと...
一人だ...あの頃の私みたいに
次の瞬間、遥の鼓動は止まっていた。
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「コレデイイ...コレデイインダ...ヨネ?」
「ああ、これでいいんだ。やっと分かったんだね。偉い偉い...」
細身の男がルイに近づく。
ルイに警戒心はなく、ただ男の言葉に従っている様子だった。
「さあ行こうか...次の場所へ」
かすれた声でそう言い、また歩きだした。
これでいい...これでいいんだ。
きっと...これで...みんな助かるんだ。
その為なら、人が死んだって...死んだって...
涙が溢れそうになる。我慢していた涙が、一気に全て出てきそうだ。
...助ケテ
涙をこらえ、ルイは細身の男と共にこのから去った。情けなくも、誰か助けてほしいという思いを心に秘めて。
小説って書くの大変...。