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1-2 イベントが早すぎる

「起きて、陽! 起きてよ!」


「う、ううん・・まだ眠い・・後三日位寝かせてくれ・・」


「今はそんな事言ってる場合じゃないわよ! ほら、早く!」


「んあ・・・ここ・・どこだ?」

目を覚ました俺は違和感に気付く。いつものベッドではないことがすぐに分かった。


「あ・・そうか、異世界に来たんだっけ・・」

出来れば夢であって欲しかった。そんな願いも虚しく、綾香が近くでパンツ丸出しのフィリア(だっけ?)を起こしていた。なんというラッキースケベ。


「大丈夫? 頭から地面に突っ込んだみたいになってるけど生きてる? 死んでてもいいけど」

突きだした尻がビクッと震える。どうやら無事のようだ。というか綾香、やめてあげなさい。無理矢理異世界のツアーコンダクターをさせられているフィリアのライフはもう0よ。


「ぶはあ!? し、死にませんよ!? まだ彼氏も居ないのに死んでたまるものですか!」

おお、意外にメンタルは強かったようだ、俺も立ち上がり二人の元へ歩いていく。


「森の中みたいだな。何でまた町の中とかに飛ばしてくれないんだ・・それこそ目的近くに飛ばして欲しかったが・・」

俺の主張はフィリアによって打ち砕かれる。


「ダメですよ、陽さんも綾香さんもレベルが全然足りません。ここから陽さんの好きなRPGのようにレベルをコツコツと上げて装備を整えてから刺客と戦うんですよ!! 後、いきなり町中に出るとみんながびっくりするので少し離れたところに送られるんです」

チラチラとカンペをみながら棒読みで俺達に告げるフィリアを半眼で見る。

神様との話を聞いていた時からどうも違和感を感じている俺だが・・・。


「ねえ、私ずっと疑問なんだけどそんな悠長なことで大丈夫なの? 言っちゃ悪いけど世界が滅ぼされるって時にコツコツレベルを上げているとか正気じゃないんだけど・・」


む、綾香が俺の代わりに違和感の正体をフィリアへ質問していた。そう、俺の違和感の正体だ。それともう一つは何故強制的に勇者を作り出さなかった、ということだ。

世界が滅びる、何とかしないといけない、自分たちではミリ★ じゃあ他の世界の人に助けてもらおう! それはいい。だが、200人以上断られてなお、募集を続けている暇があるのだろうか?


「・・・・え、ええ? 私は何も聞かされていませんから・・私からは何とも・・と、とりあえず町へ向かいましょうか。こっちですよ!」


フィリアは慌てて歩き出す。俺は綾香に近づき、話しかける。


「綾香よ」


「何?」


「目が泳いでいたな」


「そうね、フィリアは何かを知っている。でも教えられないのか教えたくないのか・・どちらにせよ今は着いて行くしかないわね」


「そもそも・・・いや、これはまだいいか。ま、世界が滅びても俺達が地球へ帰れれば問題ないししばらく踊ってみるか」


「陽がそれでいいなら私は構わないわ。ただ、陽に危害が及ぶなら・・私は容赦しない」

それだけ言うとフィリアの元へ駆け出して行った。


さて、俺も行くとしよう。

正直な話、綾香が居て良かったかもしれない。信用できる人間が居るのは安心できると身を以て知った。



---------------------------------------------------


フィリアの案内により、しばらく歩くと町が見えた。

森の中では魔物と遭遇することも無く、無事辿り着いたことは僥倖である。

というかコントローラーしか持っていないので出くわしたら即ゲームオーバーというクソゲーっぷりだ。

初期のファ〇コンのゲームかよ。


「さ、着きましたよ。ここが”オッパムの町”です!」


「オッパイ・・だと・・!」

ついフィリアの豊かな胸に目が行ってしまう俺。

さっきは綾香が居て良かったと言ったが、フィリアと二人ならそれはそれで良かったかもしれない・・。

健全な男子高校生には刺激が強すぎる。


「オッパムよ! すぐエッチな事言うんだから」

綾香にたしなめられ我に返る。フィリアの顔は真っ赤だった。

町は特に門番みたいな人も居らず、すんなり中へ入ることができた。


「警備とか無いんだな? こういう時はだいたい身分を聞かれたりとか町へ入るためにお金取られたりするもんなんだけど」


「エクレイルは魔王とか物騒な脅威はない世界ですからね。陽さん達の世界も町に入るときに確認はわざわざしないでしょう? それと同じですよ」


確かにそうだ。

というかぶっちゃけ関所とかあった時代の方がセキュリティ的には良かったんじゃあないかとたまに思う。

犯罪者が逃げて潜伏しても、確認のしようがないからだ。

昔なら関所を越えるには身分証みたいなものが必要だったと考えると割と現代のセキュリティはガバガバな気もする。



「で、私達はこれからどうするの?」

綾香がそこは特に気にしたふうもなく、今後の予定を聞く。


「はい、目的地は決まっていますからそこへ向かいましょう。シルトさんは北の大地に住んでいます。歩けば1年くらいかかりますけどがんばりましょうね!」

うんうん、と笑顔で告げてくるが結構無茶な話だった。


「マジか? もう一回聞くけど、そんなに悠長にしていて大丈夫なのか?」


「まあお金を貯めて移動手段を変えれば早くなると思いますけど、北へ行くにつれて魔物が強くなりますからやはり少しずつ移動して力を付けた方がいいと思いますよ」


「他人事っぽいけど、フィリアも行くのよね? 戦えるの?」


「任せてください! こう見えても回復魔法と強化魔法は得意です! レベル上げの手助けをしっかりサポートさせていただきますよ!」

フフフ! と、鼻息荒くして解説してくれた。きっと聞かれたらこう答えると決めていたのだろう。

しかし回復魔法と強化魔法はありがたいな、ヒーラーはRPGでは必須だ。

俺と綾香がどこまでできるのか分からない今、その情報は貴重だった。


「グダグダ言っても仕方ないか・・・俺等次第でクリアは早みたいだし、急ぐとしよう」


「うん、じゃあまずは装備かしら? 私達、制服のままで来たから周囲の人の目がきついわ」

気にしないようにしていたが、やはり綾香も気づいていたか。

一応、公園みたいな広場で話をしていたが、年寄りや小さい子を連れた親子がひそひそしながら俺達を見ていたのだ。


「だな、お金もあるし着替えと行くか・・フィリア! 服屋と装備の店を・・・ってあれ?」


「あら? フィリア? フィリアー!!」

綾香と話していて目をちょっと離した隙に姿が見えなくなっていた。逃げたのではなかろうか?

そう思っていたが、原因はすぐ気付いた。


「んー!? んんん! んー!!」

口を塞がれ、二人組の男に抱えられてどこかへ移動していた。


「・・・誘拐だ!!?」

俺の思考が一周してようやく覚醒する。少しも騒いだ感じがなかったから、思考が止まってしまった!!

綾香も同様らしく、ボーっとみていたがすぐに元に戻る。


「は!? ちょっとあっさり攫われ過ぎじゃない!? 待ちなさいー!!」

綾香が慌てて男たちの後を追う。バカ、女の子の誘拐がメインだったらお前も危ないだろうが!?


「町に入って数分で誘拐イベントかよ! クソシナリオにも程があるぞ!」

1週間に一回が限度・・!


【後書き劇場】


『おっふ・・マジで出番ないのか・・』


一体いつからお前の出番が増えると錯覚していた?

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