1-28 第一世界終了!
――ボスを倒して数時間後、シルトはプリム姫とグライドさんへ報告へ行き、城内へ突入。夜中にも関わらず俺達を含む、城内の人員をすべて使い、国王を探索。
無事、国王を見つけ出した時はすでに夜が明けていた。
姫に休むよう言われた俺達だが、ノーフィス達にも安心させるべく、女の子達も休ませてもらえないか交渉した。
「世界を救ってくれた勇者さんのお願いですから、無下にはできませんわね」
と、快く快諾。ノーフィス以下、奴隷の子達は一度城で待機になり、出来る限り親元に帰れるよう手配したり、身寄りが無ければ奴隷契約は解除。どうしたいのか個人に聞きだすらしい。
そして、送り返されることもなく、とりあえず一週間が過ぎた。
「おはよう陽、今日は王様と謁見らしいわよ」
「ふあ……マジか……もうそういうのいいから早く回収してくれないかね……フィリア、何か連絡とかないのか?」
「そうですね、今のところは何とも。でも美味しいご飯にベッドがあるからいいじゃありませんか!」
「わふ!」
フィリアがサスケの頭を撫でながらそんなのんきなことを言う。だが、他の世界を救おうと思えばあまり悠長にしていられないんじゃないか……? そんなことを考えていると、ドアがノックされる。
「朝食のお時間です」
「分かった、すぐ行くよ」
もう慣れてしまったやりとりを済ませ、俺達は朝食を取ると、メイドさん達に案内され謁見の間へ。流石に衰弱していた王様はようやく動けるようになった、そう言うことらしい。
「勇者ハル様、アヤカ様、フィリア様がお見えになりました」
「うむ」
中から厳かな声がし、ギィ……と扉が開く。真ん中の椅子には大ボスと同じ容姿をしたおじさんと、両脇にプリム姫、それにシルトが立って微笑んでいた。
「若き勇者達よ、よくぞ悪を滅ぼしてくれた。国の代表として礼を言う」
「ああ、いや……なりゆきだから別に気にしなくていいですけど……」
「消極的!? ハルさん、もっと堂々としてください。まぎれもなくこの世界を救った勇者なのですから」
プリム姫が驚きながら言ってくれるが、ただの高校生にこの雰囲気は慣れない……すると綾香が代わりに答えてくれた。
「いえ、国王が無事で何よりでした」
「感謝する。今後のことじゃが、囚われていた奴隷は早々に親元に戻すか町に部屋を用意して働き口を設けると決定した。そして勇者殿達には、我が国の勲章、そして報酬を用意した」
「報酬!」
フィリアの目が輝き、綾香も小さくぐっと拳を握る。まあノーフィス達が安全に暮らせるようになるなら良かったな……。
「そして今晩は祝いのパーティを開こうと思う。是非、参加してして欲しい。重ねてだが、本当にありがとう」
「僕からもお礼を言わせてくれ。君達が居なかったら、奴隷の子達ももっと酷い目にあっていたはずだ。国王もどうなっていたか分からないからね」
「そうですわ。もっと堂々となさってくださいな、私もこうして城へ戻ることが出来ましたし、お父様もこのとおり……私とシルトもようやく結婚式をあげることができますわ」
「わあ、おめでとうございます!」
フィリアが手をポンと合わせて言うと、ニコリと笑う。続けてまた、王様が話しはじめた。
「……しかし、神の手先とはまた厄介なことじゃわい……またこのようなことが起こらねばよいが」
「あ、それは大丈夫みたいですよ。大ボスを排除した後は世界に手出しできないようにしてくれるみたいです」
「おお! そうか……いや、しかし、本当に異世界の……それも神の勇者なんじゃなあ」
そう言われれば俺達もそうなるのか。神の使徒、ならぬ神の勇者とは粋な感じだ。そんなこんなで俺達は勲章を授与、報酬としてお金をもらい謁見を終えた。
「おかえりー無事終わったみたいね?」
部屋へ戻ると、母魔物……もといシルフのリーザが出迎えてくれた。よく考えればこいつともそろそろお別れになるのか……。
「ああ、今日はパーティだそうだ。お前も来るか?」
「あはは、いいわね。……この姿もそろそろ終わりかな? あんた達、もうどっかへ行っちゃうんでしょ?」
「……そうだな。お前は森へ帰るのか?」
「うん。こっちの大陸に戻ってからかなり力が戻ってきたから後は自力で何とかなると思うわ」
少し寂しそうに呟くと、綾香が続けて言う。
「サスケはこの城で飼ってもらえることになったから、たまには様子を見に来てあげてね」
そう、魔物だがまだ子供で人懐こいということでサスケはプリム姫が庭で飼ってくれることになった。あまり大きくならない(柴犬か!?)から大丈夫だと。まあメイドさんや騎士達が面倒を見る羽目になりそうだが。
「ま、それならもう大丈夫でしょうね。あなた達が居なくなって、城に馴染んだら帰るとするわ」
そう言って隣で寝ているサスケの顔を舐めていた。少し情が移ったのかもしれないな。
「ありがとね。無理言って着いて来て」
「気にするな、乗りかかった船だしな」
「難破したけどね」
「それを言うな……」
あはは、と笑いながらこの世界での出来事を語りながら俺達はゆっくりと過ごす。そういや時間があるならあの目つきの悪い金髪美人やリキッド達に挨拶をしたい気もするな、などと思っているといつのまにやらパーティの時間になっていた。
「それじゃ、行くか」
「わん!」
「ほいほいー」
「お料理楽しみですね!」
「ドレス、いいわね一着欲しいかも!」
食い気と色気、それぞれの特色を出しながら、綾香、フィリア、リーザとサスケを伴いパーティ会場へと行く。
「わ、豪華だな! ほら、サスケ肉だぞ肉!」
「わぉ~ん……♪」
わふわふと肉を咀嚼し、幸せそうなサスケを見ながら俺も骨付き肉に被りつく。む、いいチキンだ。
「このピザ、チーズとろっとろ……! 陽、あーん」
「お、美味そうだな……むぐむぐ、おお、いけるな……!」
「あ、ずるいですよ綾香さん! わたしのハムもあーん」
「お、サラミっぽいハムだな……うん、美味い」
何となく視線を感じるが、今日くらいはいいかと好きにさせる。綾香は変なのに目をつけられるし、フィリアは強制的にこの世界に来た。もう緊張からは解き放たれたので、これくらいはいいだろう。すると、横から袖を引かれる。
「ん? 何だ?」
「えへへ……お兄さん!」
そこに居たのは……ノーフィスだった。あれ、何かイメージが違うな……? すると綾香が声をかけた。
「それってメイド服じゃない。どうしたの?」
「えっと、私、行くところが無くて……ここで雇ってもらえることになりました! 他のお友達もみんな助かって……本当にありがとうございました!」
「あの時、あそこで会わなかったらもっと長くなっていたかもしれないし、俺を言うのはこっちもだよ、ありがとうな」
「そんな……そ、それでですね、私、お兄さんのこと……あ!? ちょ、ちょっと!?」
「話は私が聞くわ……うふふ……」
モジモジしながら俺の袖を掴んで離さない。それに綾香は勘が働いたのか、ノーフィスの首根っこを掴んで連れて行った。
「あー、綾香さん優しいなあ」
「え、あれで!?」
「まあハルさんはそれでいいですけどね」
フィリアが困った顔をして俺のそう言うと、サスケと一緒に他の料理を物色しに行く。入れ替わりにシルトが俺のところへやってきた。
「やあ、楽しんでいるかい」
「シルト。ありがたく食べさせてもらってるぜ」
「それは何よりだ。君達はいつここを発つんだい?」
「それなんだが、俺にも良く分からないんだ。まあ気長に待つさ。それより、修行助かったよ。おかげで倒すことが出来た」
シルトと孤島での修行は本当に役に立ったと思う。フィリアも綾香も技を覚えたし、戦い方というのを教えてくれたのはシルトだ。
「気にしないでくれ。……本当はこの国に残って欲しい気はするけどね」
「はは、ありがたいけど、他にも世界を救わないと行けないからなあ」
「そうか、もしまた来ることができるなら、また来てほしい。いつでも歓迎するよ」
「サンキュー。いつになるやらだが……覚えておくよ」
俺がシルトと握手をしたその時、ずっと黙っていたローラが覚醒した。
<帰還準備が整いました>
「え? 何言ってんのお前?」
ポケットからコントローラーを取り出し、画面を見ると、ローラが無機質な感じで言う。続いて画面が切り替わり、赤い髪の女神が映された。
『あ、陽! おめでとう、ボスを倒したみたいね! こっちでも観測したわ。で、帰還する準備が整ったから、呼ぶわね!』
「あ、おい、ちょっと待て! 今はパーティの最中だぞ!? パニックになるだろ」
『そう言われても……今日はそっち満月でしょ? その時でしか帰還できないのよ。次は間が開いちゃうから……呼ぶわね!』
プツン、と画面からルアが消え、無表情のローラが言葉を紡ぐ。
「あ、こら!?」
<次元転送ゲートオープン。対称、マスター陽、マスター綾香、フィリア>
パァァァ……
足元に魔方陣が現れ、俺と、遠くで物色していたフィリア、ノーフィスと話をしていた綾香の体が光り出す。
「え!? ちょっと何ですかこれ!? ハルさーん!」
「え、もしかして帰っちゃうの!? 今!?」
さすがのリーザも驚きを隠せず、サスケがわんわん吠える。
「……というわけなのよ、陽は諦めてこの世界で好きな人を探しなさいな」
「ず、ずるいです……!」
ノーフィスは綾香に詰め寄ろうとするが、魔法陣から出た光に阻まれ尻餅をついた。
「……はは、急だね」
「まったく、困ったもんだ……元気でな!」
「ああ、そっちも気を付けて。美味い話はまず疑え……覚えておくといい」
「あり――」
最後まで言えず、俺達はパ-ティ会場から姿を消したのだった。
……マジかよ!
強制送還。まさかこんなことで(笑)
いつも読んでいただきありがとうございます!
【後書き劇場MK2】
『出番!』
お前は空気を読もうな?
『ダメよ、次回もすぐ書きなさい』
お前の出番はもうやらない……




