1-20 運が良かった……!
「う、うわ!?」
俺はガバっと目を覚まし、起き上がる。体はびしょびしょで、辺りを見渡すと何もない砂浜だった。
そうだ、俺達は船から投げ出されて……。
何とか立ち上がり体の調子を確かめる。うん、体は問題ないな、痛いところも無い。水を飲んでいないのも幸いだ。太陽はほぼ真上……昼くらいか? 日差しが強い。
カバンは背負っていたので、水浸しだがお別れになる事は無かった。しかし心配なのは、綾香とフィリア、そして柴犬だ。
「もしかして俺だけ助かったとかないよな……?」
嫌な予感が頭をよぎるが、どこかに流れ着いているかもしれないと俺は重い体を動かし歩き出す。
しばらく歩いていると、ピコンという機械音が鳴った。
<マスター、お目覚めですか>
「お、ローラ! 良かった無事だったか」
<はい。一応神のアイテムなので水没で壊れるというような事はありません。貧乳は同じコントローラーなので、位置が分かります>
ローラに指示され、その方向へ歩くと見慣れた制服を着た綾香が倒れていた。
「綾香!」
俺が抱きかかえると、ピクっと動いた。どうやら命は助かったらしい……良かった……。
何度かゆすると「う……」とうめき声はするが、目を覚ます様子が無い。
「……大丈夫かな?」
<水を飲んでいるのかもしれませんよ>
「ああ、そういうことか! なら人工呼吸を……」
人工呼吸か!? 俺も、多分綾香もしたことがないキキキ、キスをするってか!?
俺が顔を赤くして戸惑っていたその時だ、綾香の口がにやけるのを俺は見逃さなかった。
こいつ……!
「んー……」
「ふん!」
「ふげ!?」ガクリ
唇を突き出す綾香に、俺は当身を食らわせて気絶させた。
「よし、後はフィリアだな。居場所は分からないのか?」
<申し訳ありません。牛は何もマーカーが無いので私では分かりかねるのです>
「仕方ないな。でも綾香もここに流れ着いているなら、フィリアもどこかに居るかもしれない。少し探してみよう。日が暮れる前に寝床の確保もしないと……」
綾香もカバンがあり、何とか流されずに済んだようだった。俺はカバンを体の前にかけて、綾香を背負った。
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パチパチ……
「居なかったわね……」
「ああ……」
綾香と焚き火の前で肩を落とす俺達。割とすぐに目を覚ました綾香と共に夕方まで探し回ったが、フィリアを見つける事は出来なかった。
砂浜にフィリアが愛用していた星型のステッキだけ落ちていたのが妙に痛々しかった。
歩いていて気づいたが、ここは孤島のようで水平線の向こうには他に島が見えなかった。
「フィリア……海に沈んじゃったのかしら……あの犬達も……」
「まだそうと決まったわけじゃない。また明日探そう」
「うん……」
急に親しい人が居なくなった寂しさがあるのだろう、いつも元気な綾香が俯いていた。流石にフィリアが居ないところで俺と二人きりになっても楽しくは無いようだ。
「出来たぞ、野菜炒めだ。肉は貴重だから少しな」
食料は出掛けに買っていたのでしばらくは問題ない。だが、このままではやがて無くなり餓えてしまう。王都へも行かないといけないし、問題は山積みだ。
フィリアと犬達は心配だが、自分達も危機的状況であるのだ。
何となく味気ない晩御飯を済ませ、見つけた洞穴で寝袋を使って寝る。
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遭難二日目
砂浜をくまなく探索するも見つける事ができず。
一日かけて島を半周くらい歩いたところ、やはり周りに島や陸地は見えなかった。
明日は島の内部へと足へ運ぼうと思う。
遭難三日目
うっそうと茂る森を、剣で切り裂きながら掻き分けて進む。
特に何かを発見する事も無く一日を終える。食べられそうな木の実を回収しておく。
綾香の口数が少ないのが気になる。
遭難四日目
そういえば動物を見ない気がする。フィリアどころか、気配が少ない……?
そう思ったところでねずみのような生き物を見つけて安心する。
綾香が寝る時べったり寄り添ってくる。
遭難五日目
段々進むのが嫌になってきた。どうせ今日も何も見つからないんだろ?
そして遭難六日目……
「もうダメよ……私達、ここで一生を終えるのよ……」
「……」
<……>
今回ばかりは綾香の泣き言に嫌味を言えないローラ。言われたら俺はきっとコントローラーを壊すに違いない。
「全部を見たわけじゃないけど、こりゃ厳しいな。いかだでも作って脱出を考えてもいいが……」
「でも、どこに着くかわからないし……もうここで二人で暮らすしかないのよ……」
珍しく悲観的なことを言う。精神的にまいっているようだな……。
「ま、そん時はそん時だ……今日は寝ようぜ」
「なら砂浜に行かない? 洞穴は静かだし……波の音を聞きながら眠りたいわ」
そう言う綾香に賛同して砂浜へと移動する。少しでも落ち着けばと思い、寝袋に入って横になると、星空が綺麗だった。
「凄いわね! 地球じゃ滅多に見れない……綺麗……」
「……」
俺は黙って空を見ていた。少しは気が晴れたようで何よりだ。
「ね、陽は……私のこと……ううん……何でも無い」
「俺は……」
俺が何かを言おうとしたところで、背後の森からガサガサと音がしていた!
何だ……? 誰も居ないと思っていたが、誰かいたのか?
「……気をつけろ、原住民とかだったら危険だ……」
「うん……」
コントローラーを剣に変え、音がするほうを凝視する。
夜なので視界が悪いが、幸いここは砂浜で開けている。そして月明かりがあるので出てきてしまえば判別は可能だった。
そして、音の主が飛び出してきた!
「わん! わんわん!」
「あ!?」
あの子犬だった!
綾香に飛びついて顔をぺろぺろと舐めていた。
それに続き、人の声が聞こえてくる。
「待って! わんちゃん! ……シルトさん、こっちです!」
あの声は……フィリアか!?
「おーーい! フィリア! そこに居るのか!」
「!! ハルさん!? 居るんですか! よ、良かったあ……」
ガサガサと出てきたフィリア、そしてその後ろに青年が着いてきていた。
「君の言っていた仲間かい? 良かったね、ここに流れ着いていて。一歩間違えれば海の藻屑だったよ」
そんなことを言いながら、俺達に近づいてくる。そして、その名を聞いて俺達は驚く。
「僕はシルト。フィリアちゃんから聞いたけど、僕を探しているんだってね? 運が良かったよ、ここは忘れられた島……航路にも遠いから辿り着く事はほぼ不可能なんだ」
シルト……この世界の主人公で、特異点。俺達が探している人物だったのだ!
一ヶ月ぶり……!?
すいません、いつも読んでいただきありがとうございます……。
【後書き劇場mk2】
『おそーい!! 私が出番のある数少ないチャンスなのに!』
そこかよ!?




