1-18 仲間が増えました(人間とは限らない)
「魔物どころか動物も居ない……」
ふよふよ……
明日から船旅だ、今日もレベリングをしておこうと山へ来たがマイティオークが焼けた跡から向こう、まるで敵性反応が無かった。
<どうも焼けた付近は魔物や動物の嫌いな匂いを発しているようですね。人間には匂いを感じられませんが、敏感な動物にはしんどいようです>
ふよふよ……
「そっか、マイティオークってただの木じゃないから燃やしたらそれなりに害がありそうだもんね」
綾香がそう言うと、確かにと思ってしまう。例えば香木といった木があるくらいだから、魔物の木なら害があってもおかしくはない。
「奥へ行くか? 今日は休んでもいいけど」
何となくマイティオークの破片を拾ってビニール袋(コントローラーを買った時の袋)に入れながら二人に聞いてみた。
ふよふよ……
「せっかくだから戦いたいけど……ローラ、奥に行って危険は無い?」
綾香がローラに聞いてみると、正確な時間を割り出してくれた。
<そうですね……半径3kmは魔物の気配が無いので戦うとなるとかなり奥になりますね。計算だと今から行くと戦闘して帰ってくるのは夜中になりますね>
「それじゃ、危ないですね……明日から船旅ですし準備に時間を当てましょうよ」
「あ、それいいわね! 陽、どう?」
「フィリアの案で行こう、何か欲しいものでもあるのか?」
ふよふよ……
<きっと新しいブラとかですよ、また大きくなったとか……>
「ちょ、何で知ってるんですか!?」
ほう、さらに……俺はついそっちへ目を向けたが、綾香によって阻止された。
割と向いては行けない方向に首が曲がった。
ふよふよ……
「私のも見なさい」
「いてて……強引だよな……まあいいか、それじゃ行くか!」
「「おー」」
「待たんかこらああああ!?」
「おお!? どこからか可愛い女の子の声が!?」
「え? かわいい? えへへ……じゃなくて! さっきからずっと横に居たでしょうが!」
「ど、どこだ……!」
「白々しいわね!? 目の前に浮いてる光よ!」
「ああ、これそうだったんだ。ウィルオーウィスプかな? と思って切りそうになっちゃった★」
てへっと舌を出すが目は笑っていなかった。おおむねゲームではウィルオーウィスプは経験値が高い。要するに美味しいのだ。
「ひぃ!? あ、危ないわね……で、昨日も頼んだけどウチも連れて行ってくれない?」
「というか何でまたそんなに行きたいんだ?」
「……じ、実はここってウチの居た森じゃないんだ……多分今からあなた達が行こうとしている大陸だと思うんだけど……。ちょっと昼寝をしている時に密猟者に捕まってさ、何とか逃げ出したんだけど全然知らない森だし、マイティーオークと同化しちゃうしで散々……だからお願い!」
なるほどそういう事情か……。妖精ハンターなんてのも居るんだな。
「妖精って高く売れるの?」
悪気はない言い方なので、本当に興味本位で聞いた綾香。妖精は一瞬ビクっとした(ように見えた)が言葉をつづけた。
「よくわかんないけど、売れるのかもね? ウチはシルフって風の妖精なんだけど、見た目が可愛いから観賞用にしたいみたい。捕まえてた奴等が言ってたわ。後は風を使ってスカートめくりをするんだって」
しょぼい!
「まあそういう事情なら俺は構わないけど、二人はどうだ?」
「いいんじゃない? その光の姿だとちょっと怪しいけど……」
「あ、今は魔力が少ないから人化できないけどその内できるようになるわ! 後は動物とかに乗り移るくらいかな?」
「そういえばタヌキとかになってましたよね? あれは変身したわけじゃなかったんですねー」
フィリアが感心したように妖精に聞いていた。
「うん、憑りつくって感じかな? 意思が強い人間とかは難しいけど動物は結構簡単なんだー」
俺達の周りを光の玉がふよふよ浮いているので、やはり気になる。
肩に止まったりできないだろうか?
「ちょっと飛び回られると気になる。肩とか頭に止まれないか?」
わかったーと俺の左肩に乗りようやく落ち着く。
そのまま俺達は町へと帰るのだった。
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「さって! 飯にしようぜ!」
「そうね、ショッピングの前にお腹を満たしておきましょうか」
「妖精って何を食べるんですか?」
「ウチは人化してたら食事ができるんだけど……」
などと話をしていると、どこかで犬の鳴き声と、男の怒号が聞こえてきた。
「親子共つかえねぇな! もういい、どっかへ行っちまえ!」
「キャイン!?」
声のする方を見ると、酔ったおっさんがまめ柴のような子犬を蹴り飛ばしている光景に出くわす。
男の足元を見ると、少し大き目な犬が横たわっていた。親犬だろうか? ピクリとも動かない。
それでも縋るようにおっさんの足元で尻尾を振ってぴょんぴょんと跳ねるが、おっさんはそれが気に食わないのか、近くにあった角材で子犬の頭を殴りつけた!
「あ!」
頭から血を流しぐったりとする子犬。飼い主かもしれんが、これは見過ごせない。
「綾香!」
「分かってる! <ヒール>!」
「あん? なんだあてめぇら?」
「通りすがりの冒険者だよ、何だってこんな酷い事するんだ?」
俺はおっさんの前に立ち、睨みつけながら問うとおっさんは面倒臭そうに言い放つ。
「この二匹は売りに出す予定だったんだが、二匹は要らないとさ。子供だけ売ろうとしたら母犬が噛みついてきやがったから叩きのめしてやったんだよ。そしたら、客がにげちまってよぉ……」
綾香が子犬を見ている間、フィリアが母犬へ近づくが、泣きながら首を振った。
何てクズだろう。久しぶり(具体的には勝手にコントローラーを改造された時以来)に怒りが湧いてくる。いくら飼い主でもやっていいことと悪い事はあるのだ。
「もう死んじまったし、ちょっと勿体ねぇ事したな……」
おっさんが立ち去ろうとするのを見て、俺は声をかける。
「じゃあこいつは貰っても構わないな?」
「あん? 死体で良ければくれてやるぜぇー俺は新しい金儲けの種を見つけないと……」
「……そうか、ならこいつは俺のペットだ。それを怪我させた罪は償ってもらうぞ?」
「は? どういう……」
おっさんが立ちどまり、振り向いたその瞬間、俺のグーパンが突き刺さっていた!
「ぐは!? て、てめぇ何……い、痛くねぇぞ?」
「私が<ヒール>で治したわ。そして……」
「今のはその母犬の分だ、次は子犬の分!」
「ぶへ!?」
「<ヒール>」
「綾香の分!」
「ぐは!?」
「<ヒール>」
「これはフィリアの分!」
「おええ!?」
「<ヒール>」
「そしてこれが……この俺の怒りだぁぁぁぁぁ!!!」
「うぐああああああああ!?」
意識を飛ばさないよう、一撃ごとにヒールをかけ、確実に急所へと攻撃を加える。
最後に俺のアッパーカットが決まり、ボグシャー! という効果音と共におっさんは吹き飛んで行った。
どさりと背中から着地し、ぴくぴくと痙攣しているのが見える。もちろんヒールはかけない。
「犬好きの俺に虐待を見せたのが間違いだったな」
「まあ、知ってるわけないと思うけど……」
綾香と俺が子犬に近づくと、ぱちりと目を覚まして起き上がる。そして母犬へと駆け寄るが……。
「くぅーん……」
「……」
「ダメか?」
「うん、ヒールはかけたけど……」
「魂がもう行ってしまったから蘇生の魔法やアイテムが無いとダメですね……」
フィリアの話によると、1ヶ月くらいは蘇生のチャンスがあるらしい。それまでに生き返らせることが出来れば現世に帰ってくるとか。
「それ以上経ったり、善行を積んでいる魂は動物担当のソレイユ様……あ、ルア様の妹さんなんですけど、その方がまた新しい何かに生まれ変わらせるんですよ」
子犬が泣きながら母犬の顔を舐めるが一向に動く気配はない。残念だが……と思ったその時だ。
「それならウチがその身体を使わせてもらおうかな?」
「死んでてもできるのか?」
「まあ、死んですぐだからねー。ウチの魔力が戻ったら抜けるけど……それまではいいかなって。可哀相じゃん」
中々人情に厚い妖精のようだ。口調は完全にギャルなんだが。
「それまで、お母さんが死んだことをわたし達で言い聞かせるしかないですね」
「ま、成り行きだがここに放置していくわけにもいかないしな……」
内心早く撫でたいと思っているが、まだ我慢だ……。
光の玉がスッと犬の体に入り、しばらくするとパチッと目を開けた。
「わん! わんわん! きゅふん!!」
「何とか成功したわ、死んだばかりだから簡単だったわね」
柴犬が喋るのは何とも驚くが、ここは異世界……それはアリだ。
子犬がはしゃぎまくって母犬の回りや、俺達の靴を噛んだりして興奮していた。どうやら人懐っこいようだ。
「よしよし、今日から俺達と一緒に旅をするからな?」
俺がしゃがんで撫でてやると、鼻先を手に擦り付け鳴いた。
「わん!」
尻尾を振って伸びをする子犬。かわいい。
そんなこんな大陸へ渡る前に、妖精(下級)と子犬がお供になった!
名前、何にしようかなあ……!
一週間過ぎてた!?
いつも遅筆なこの作品をお待ちいただきありがとうございます……!
【後書き劇場mrk2】
『あら、私とソレイユ?』
フィリアさんも女神見習いだしなあ、知ってるだろ。




