1-15 肩書は所詮肩書きであって、その人の本質を決めるものではない。
「そろそろ領主が居る町だ、蓋を閉じてくんなー」
リキッドさんに言われて俺達は握り飯を持ったまま箱へと閉じこもる。
……道中は外に出て歩いたりしたからな? ずっとこもっていた訳ではない!
ただでさえ女の子と入っている箱なので、興奮度が高い。何かいい匂いがするしな。かといってそんな素振りを出せば美女から野獣へと変化してしまうのは明白。
「明鏡止水の心得……!」
「どうしたの急に?」
「ハルさんはたまに妙な事をいいますよねー」
人の気も知らんと、おにぎりを食べまくるフィリア。
「……それはいい。とりあえずこれからのプランだけど、運び込まれたら夜まで隠れるぞ。その後はローラの探索機能を使って一気に行けば目標は達成されるだろう」
<そうですね、魔力も上がっていますし探索範囲も広がりましたよ。特定の人物はまだ分かりませんが、レベル表示は出るようになりましたよ>
お、気が利くな。ならレベルがおかしいやつがきっとそうだろう。
相談がひと段落したところで、外の様子が変わったようだ。町に到着したのだろう。
「リキッド達か……いいのか? ニアを領主の所へよこして。ほら、その……」
「大丈夫です。私と隊長はラブラブなので、領主様とは仕事の付き合いのみですから!」
「お、おお? 一体何があったんだ……? 堅物のニアがラブラブってお前……」
「言うな……俺もここまでなっちまうたぁ思わなかったんだ……」
ニアさんは道中、恐ろしいくらいリキッドさんにべったりだった。今まで抑圧されていた何かが解放され、真の力を発揮したというところか。
「まあ、気を付けてな」
「町の人も領主には不信を抱いているみたいね。これなら討ち果たしても問題なさそう」
綾香がまた物騒な事を言うが、今回ばかりは合っているので何も言わず頷く。
これで超良領主(言いにくい)だった場合、悪人は俺達になってしまい、きっと追われてしまうのだ。
「(それじゃあ領主の館に入るぞ)」
リキッドさんが声をかけてくれ、俺達も緊張が走る。
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「ニア=アンダーソン、本日よりお世話になります!」
「リキッド=ウィン、確かに連れてきましたぜ」
「うむ、ご苦労じゃったな。長旅で疲れたろう、二人とも今日はゆっくりと休んでくれ。業務の説明等は亜明日以降、担当を寄越す」
「「はっ!」」
──────────────恐らくこんな感じでリキッドさん達が領主と面会している間、俺達は箱の中でずっと耐え続けた。空気穴はあるけど、三人分の熱量だ、暑いし蒸れるし良くない。
<牛、陽さんからもう少し離れなさい>
「ええ!? これ以上動くとこありませんよ!?」
もぞもぞとするフィリア、逆サイドにいる綾香も
「あっつい! ちょっと開けたらダメかしら……」
「気持ちは分かるがもう少し我慢しろ、ローラ今の内に邸内の地図とか見れたりしないか? やっぱマッピングしないとダメ?」
<そうですね、地図は一度歩いた所しか……とりあえず城内の人物を見てみましょうか>
ピコン
「これは……」
「骨が折れそうねー」
「あ、あわわわ、だ、大丈夫なんですか!?」
浮き出てきたアイコンを見てレベルを一つ一つ確認していく。レベル43……こいつだけ一際高いな、恐らくこいつが犯人か。
「一気にこのレベル43のヤツの所まで行こう、ちょっと話してそれっぽかったらもう斬っちゃおう」
「考えるのが面倒になったわね!? 流石にいきなりはマズイでしょ、相手に剣を抜かせて正当防衛を……」
「いえ……不法侵入の時点でわたし達が不利ですからね?」
とはいえ、数は30以上。悠長にしていたらこっちが殺られる。何か良い方法は無いか……。
<現時点では力押し以外は無いですね。せめてレベルが上がれば良かったのですが>
ローラでもお手上げとなると、いよいよ脳筋プレイしかないか。
「とりあえず行ってダメだったら逃げる方向で行かない? 荷物の中にいいのがあったわ」
「ほう……」
悪くない案が出来上がり、俺達は夜までじっと待つことにした。
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ホー……ホー……
「……そろそろ良さそうだな」
コントローラーの時計は夜20時。俺なら飯と風呂が終わってゲームをするため自室に戻っている時間だ。
「それじゃあ……開けますよ」
キィ……
静かな所ではこの開ける音ですら緊張してしまう。
「さて、と。行くか」
アイコンを見ながら壁伝いに歩いていく。あまり遠くないけど、緊張で倍くらいの距離を感じる……。
「ここね……」
綾香がコントローラーの画面を見ながら呟く。位置だけでウロウロしていたが、ビンゴだったのは2階の一室だ。
「それじゃ……開けるぞ」
コクリと頷くフィリアだが、綾香が画面を見て驚く。
「あ!? 何か一人増えてる! レベル32……結構高いわよ……どうする? 一旦戻る?」
戻った所で、次のチャンスはいつになるか分からない。流石にもう一日あの箱はバレそうな気がする……。
「……一人は綾香が相手をしてくれ、俺は高い方と戦う」
「……分かったわ。フィリアは援護をお願いね!」
「は、はい! がんばりましゅ!」
噛んだ。
「せーの……!」
ガチャ!
「ん? 誰でい?」
「覚悟ぉぉぉ!!」
「どうわ!? いきなり何しやがる!?」
「隊長! 危ない!」
「あなたの相手は私、よ?」
「んんー?」
お互いに顔を見合わせる。
「リキッドさん!?」
「ハルじゃねぇか!? 領主の所に行ったんじゃねぇのか!?」
「あ、いや……その、顔とか知らないから、強そうな気配の部屋に行ったら会えるかなって……」
俺は剣を納めてリキッドさんへ説明をする。
「なるほど、ハル達から見て俺達がすごくレベルが高かったってか?」
「そうですね。まさか一番レベルが高いのがお二人とは思いませんでした。仮にも領主の屋敷ですし……。あ、領主の部屋って分かります?」
「ああ、さっき行ってきたからな。三階の突き当りの部屋だ。何か異世界の勇者とやらを探してるから見つけたら教えてくれって頼まれたぜ」
「!?」
向こうも動いていたか、早めに来ておいて正解だったか?
リキッドさんにはこの世界の人間ではないと言っているがこっちの味方だし、ギリセーフ。
「じゃあ俺達はそっちに行きます」
「おう、気を付けてな! 俺も手伝ってやりたいが、この世界の人間じゃ倒せないならいみねぇからな……」
リキッドさんとニアさんに挨拶をして部屋を出る。
「……レベル確認しておけば良かったわね……」
「そうだな……まさかこの屋敷最強があの二人だとは……」
「三階の突き当り……このレベルの人ですね」
フィリアが差すそのアイコンのレベルは7。俺といい勝負だ。
「擬態している可能性もあると考えよう。悪い状況は常に考えておいた方がいい」
「分かりました……うう、怖いですよう……」
フィリアが俺の腕にしがみついてぶるぶる震える。
「あ、じゃあ私も」
両腕に絡まれ身動きが取りずらいが、まあ面倒なのでこのまま向かう事にする。
さあ、まずは中ボス戦と行こうか。
一週間ぶりです。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
いつも読んでいただきありがとうございます!
【後書き劇場mrk2】
新作始めたらこっちは確実に手薄になるな……
『まあ、そんなに期待している人も居ないしいいんじゃない? 月一とかで』
マジで、許されるかなあ?




