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第06話 余韻

 ナラクとルヴィアは互いの体が混ざり溶け合い、一つになっていくような錯覚に陥っていた。


 二人の命の灯火が消えかけていた。

 しかし、その消えかけの灯火が互いに近づき……1本の火となって、勢いを増していく。


 気づけばナラクの体は、元の細見でありながらも筋肉質の逞しい体を、さらにルヴィアも、もはや万人が嫉妬する気も起きない程の神の芸術とも呼べる美しい体を取り戻していた。


 互いの熱くも長い食事は終わっていた。

 

 しかし、彼らの手はどちらも相手の背中に回され、足は絡み合い、先程まで食事をしていた口は互いの口を貪っていた。


 『クチュ…んじゅ、ぢゅむ…レロ……、ん゛あッ』

 二人の口から同時にいやらしい音が鳴り、周囲に響く。


 「クチュ…あ゛…レロ…ん゛ッ!あ゛ー…レろ…」

 ルヴィアは舌を熱烈に絡ませナラクの唾液を舐めとり飲み込むと、今度は自分の唾液をナラクに送り込む。


 ナラクも抵抗する事なくルヴィアの唾液を飲み込んでいく。

 

 どちらもまるで相手の体液が最高級の甘露とでもいうように口づけを交わし唾液を送り続ける。

 

 気づけば……夜が明けていた。


 同時に口を話す。

 つぅ―…と互いの口を唾液の橋が繋ぐ。


 『ハア…ハア…ハア』

 二人の呼吸は粗く、未だ顔は真っ赤に染まっていた。


 「はぁ…ハァ…、ねぇナラク?」

 「はぁ…はぁ…、んッ?」

 

 「はぁ…この先も…しませんか?…はっ、初めてですけど、実は……ハァ…まっ、まだ体の火照りが治まらないんです。もっと……貴方と深く…深く繋がりたい」

 ルヴィアはさらに赤く染まる。瞳を見てもルヴィアがいまだ発情しているのが分かる。

 

 「………ッ」

 それはナラクも同じで、あそこはいまだ隆起していた。


 だがそれ以上に、ナラク自身が食べる際彼女の着ていたドレスを破り捨てたために、ルヴィアはほぼ全裸であり、その真っ赤に染まった魅惑的な体と、発情しきっている顔に目を奪われ、言葉を告げないでいた。


 黙っていたナラクに不安を感じたのか、

「ナラクはまだ17歳ですよね。やっぱり……年上はお嫌ですか?」


 吸血鬼の特性の1つとして、吸血鬼は血を飲むことで血から相手の年齢や種族、属性魔法などいくつかの情報を読み取る事ができるのである。


 「いや違うよ。ただ・・・」

 「ただ?」

 「俺も…初めてだから、心の準備がさ……。それにこれ以上をしたら、興奮のしすぎで…死んじまいそうだ」

「……」


 ナラクは恥ずかしさのあまり目をそらし、穴があったら入りたい心境であった。

 

 一方ルヴィアは目を見開いた後、顔を下げ、肩が震えたと思ったら、

 「ふ、ぷふふ、あははははははっ」

 大声で笑い出した。

 

 「くす、くす、ぷっ、ふふあははははは」

 暫く待っても止まらないので、ナラクはルヴィアの右頬を軽くつねる。

 「笑いすぎだろうが」

 「ふふふ。ごめんなさいナラク。そうですね、せっかくどうやらお互い助かった命ですものね。興奮のしすぎて死…死ぬなんて…、は…、恥ずかし…いですもんね…くふふふふふ」

 ルヴィアは笑うのを堪えていたが、いまだ肩は小刻みに震えていた。


 ナラクはため息をつき、気になっている事について聞いてみた。

 「なぁルヴィア?どうして俺達はまだ生きてるんだ?」

 

 ナラクは死を覚悟していた。

 ルヴィアに血を吸われている間も死が近づいてきてるのを感じていた。

 それは恐らくルヴィアも同じであろうが、真祖であるルヴィアなら何か分かるだろうと思い聞いてみたのだが、答えは要領の得ない物であった。


 「ん―。私もよく分からないんです。い、色々と初めての事でしたから。まぁ呪詛はまだ残ってるんですけどね。けど再生が始まった事からも大分マシになったのではないかと思います」

 「初めてって…死にかけた事がか?」

 「それもそうですが。その…誰かをこんなに求めたのも、吸血の時に…溶けそうな程体が熱くなったのも、こんなに血が…美味しいと思ったのも…貴方が…ナラクが初めてなんです」


 もはや何度目か分からない程ナラクの顔が赤くなる。

 「それは俺も…同じだよ」

 「そっそうですか。そ、それは…良かったです」

 2人して黙り込む。


 「もっもしかしたら、私の場合ナラクの血に呪詛を緩和する何かしらの一因があったのかもしれませんね」

 「何かって?」

 「それは分かりませんが…、ナラクは奴隷の時に多くの人…種族や人間を食べていたのでしょう?それが関係しているのかもしれませ……ん、って…どうしましたナラク?顔色が真っ青ですよ」



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