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第05話 恐ろしい愛のカタチと求め方

 クチュグチャ…グチュクチャ……ゴク、ゴックン…

 「はあ―……ハァ―…」

 そして今…ナラクは自分から鬼人族の禁忌である掟を破り、ルヴィアの驚く程白い肌に牙を突き立てていた。

 

 強くなるという俗説のためなんかではない。

 ただルヴィアの肉を喰らい、自分の一部にしたかった。


 ナラクは気づいていなかった。

 それは俗説なんかよりも、よっぽど恐ろしい考えであるという事を。

 鬼族の日常を壊したガレス・ウルナイズの方が可愛く見える程に、――ナラクの方が遥かに狂気染みているのだという事を。


 ナラクは止まらなかった。

 ルヴィアの汗が混じった臭いを鼻一杯に吸い込みながら食べ続ける。


 「ス―ハ―…ス―ハ―」ガブッ!!


 「――ん゛ッ!あン゛ッ!」

 

 奴隷のもとで食べたどんな物よりも旨くコクがあり、時間が経つにつれルヴィアから湧き出てくる汗をソースに見立て肉と一緒に口に含み咀嚼する。


 前菜からデザート全てが同じルヴィアというお皿に載っていた。

 ナラクはまだメインディッシュを食べ始めたばかりであった。


 これまでは吸血鬼、それも真祖の持つ圧倒的な再生力故、普通の人ならば死んでしまうような怪我も、何事もなかったように意識せずともまた元通りになったいたが、今のルヴィアにその再生力は働いていなかった。


 痛みを感じる前に治っていたため、彼女は今の今まで痛いと感じた事はなかった。


 いや正確にはどんな怪我も一瞬にして治ってしまうがために、身の危険を知らせる痛覚が彼女には必要がなく…存在していなかった。


 だが彼女は今、確かに痛いという感覚を――痛覚を感じていた。


 身の危険を知らせるためではない、ナラクが与える全てを感じさせるためにルヴィアに初めて痛覚が備わった、否――生まれたのだ。

 そして、彼女は笑っていた。


 いつの間にか痛みは快楽へと切り替わっていた。


 「ひゃう!あんッ!!――ん゛ッ―――ハァン!!!」

 噛まれる度にルヴィアの口から色っぽい喘ぎ声が漏れ、何度も両足を擦り合わせ……一際大きな声が上がる。


 「うん゛ッ!!うあ゛ッ!あッ!!ん゛ん゛ン―――――ッ!!!!!!!」


 両足のつま先がピンと伸び、痙攣したように震えだす。


 痛がってるのかと思いきや、彼女は未だ一心不乱に自身を食べるナラクを見つめながら恍惚としていた。


 ルヴィアはナラクに自分を食べさせるの止めさせると、両手で顔を引き寄せ、息を整えながら小さく囁く。


 「次は……私の番です」


 ルヴィアの口は薄く引き伸ばされ三日月を形をづくっていた。


 

 ルヴィアの犬歯が3cm程に伸び、鋭い牙となる。その牙を遠慮なくナラクの首筋に突き立てた。人間よりも少し固い鬼の肌を豆腐を噛むかのようにスルリと突き破る。


 プツンッ

 

 「がッ!」


 ナラクの首に鋭い痛みが走り、全身の血が上へ首へと駆け上がる。

 

 ヂュルヂュルヂュルヂュル――――ッ!


 ナラクは最初は痛みだと思っていたが、血が抜けていく感覚が快楽であり自身が気持ちよくなっているのだと悟り始めていた。

 ナラクはルヴィアよりも一回り太い褐色の両手を彼女の背に回し、壊れそうなぐらいその華奢な体を抱きしめる。

 

 ナラクはルヴィアの首筋に顔を見られないように埋め、声を必死に我慢していた。

 「ん゛ッ!!…ア゛ッ!!くッ…!!ハッ……ウ゛ッ!」


 顔は見えていなかったが、ルヴィアはナラクの漏らす声から彼の顔を想像する。


 ――苦しそうな顔をしているのかしら

 ――愉悦に塗れた顔をしているのでしょうか

 ――それとも……再び私の体が欲しくて欲しくて堪らないといった顔を見せているのでしょうか


 自身の想像するナラクの姿に、増々ルヴィアは興奮し血を吸う速度を早くする。

 ヂュルヂュルルルル―――!!!!!!!!!!!


 「ヴッ!ア゛ア゛ア゛ッ!!!!―――ッッ!!」

 ナラクの体がビクンビクンと2度跳ね上がる。


 ルヴィアの目がナラクに語りかける。

 

 ――私をイかせたお返しです


 ルヴィアは今まで吸血行為に興奮した事はなく、ただの食事という認識しかなかった。気まぐれで眷属を造ることはあったが、誰かをこんなに強く求めたのは初めてであった。

 何よりも……こんなにも血を美味いと思った事はなかった。

 舌で味わい、その極上の味を脳に伝達する。

 出来るだけ長く口の中で味わいたいのに、脳がそれを許さない。

 ――もっと…もっと……そいつの血を空になるまで吸い続けろ――と自分でない誰かに命令されているようだった。

 ナラクの血が自身の体に入る度に体は歓喜に震え、どんどん熱くなっていくのを感じていた。


 そしてナラクも自身の血が目の前にいる美しい吸血鬼の中に入っていくことに言い知れぬ興奮を得ていた。


 「ぷはッ!!」レロ……ピチュピチャ…レロ…レロ……チュパ」


 ルヴィアは吸うの一旦止め、首筋から漏れ出る血をいやらしく舐めとり、今度は逆側の首筋から血を吸い始めた。


 『ハア―…ハアー……』


 二人とも息も絶え絶えであった。

 しかし…2人の淫靡な食事は終わらない。


 2人は頭と足の向きを相互に入れ替え、今度は同時に食べ始める。


 ビリリッ!!


 ナラクは邪魔だと言わんばかりにルヴィアの服を力任せに引きちぎり、その太ももを露出させ噛り付く。


 ガブッ!!グチュクチュグチュ!!ガブッ!!

 

 飲み込む時間も惜しいというようにナラクは次々とルヴィアの肢体を口に入れ咀嚼する。


 ルヴィアも同様にナラクの服を爪で切り裂き太ももを露出させる。

 

 先程まで奴隷だったナラクは、風呂どころかここ数日満足に体を拭いてもおらず、血と汗がこびりつきとても綺麗とは言えない体であった。

 これまで食事の際、容姿が優れ身なりの綺麗な者しか好まなかったルヴィアだったが、嬉々としてナラクの臭いを吸い込みながら、牙を突き立てる。

 

 ヂュルヂュルルルヂュルヂュル――!!


 ルヴィアは全身をナラクの血で満たすかのように血を吸い続けた。


 二人は欲望のままに様々な所に口をつける。


 胸、お腹、上腕、指、太もも、ふくらはぎ、足の甲、尻、背中、顔、ルヴィアはナラクの男根にも牙を立て血をすする、etc.


 



 2人の興奮は最高潮に達し、共に体は火傷しそうな程熱を持ち、死の間際に種を残そうとする動物の本能と似た何かが働いているのか、ナラクの男根は痛い程固く太く隆起し、ルヴィアの股はお漏らしと勘違いする程濡れていた。

 


 周囲は二人が漂わせる発情の臭いで充満し、その臭いに増々2人は興奮を高めていく。


 呪詛とミスリルの剣によって、再生力を失ったルヴィア。

 奴隷の首輪に打ち込められた毒によって、普通の人間と同じ回復力しか現在もたないナラク。


 今してる行為は互いの残り少ない命を減らす愚行でしかない。

 しかし2人の顔は今この瞬間が人生で最も最良の瞬間なのだと物語っていた。


 

 

 既にルヴィアの体に手足はなかった。

 ナラクの逞しかった体は老人のように痩せ細っていた。


 それでも二人は――食べる事を止めなかった。


出来ましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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