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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
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2-38 ドラゴン( 笑)と邪物復活 さぁて、祭りと行こうじゃねぇか!!

主人公が一回も出てこない。さぁ、アカツキはいずこに?

 初イベントが開始されてから、25時間が経過した。残り時間は5時間。このくらいの時間になると、プレイヤーの数もずいぶんと減ってきている。プレイヤー同士のつぶしあい。モンスターとの戦闘でなど、様々な理由で脱落していったものの数は、イベントに参加したプレイヤーの三分の一にも及ぶ。


「ほへー、ユリィの精霊さん、すごいねー」

「確かに……。圧巻です」

「……レイブ、負けてる」

『クケェッ!?』


 そんな中で、一人もかけることなく精霊世界を探索している夜桜とユリィ、リルの一行は、草原フィールドでユリィが契約した精霊を眺めていた。


「いいですか、貴方は私に仕える契約精霊。そして契約主である私が仕えているのがアカツキ様です。つまり、貴方もアカツキ様の配下ということなのです。そのことをしっかりと頭に叩き込んでおいてください。わかりましたか?」

『りょ、了解だ。契約者殿。して、そのアカツキとやらは……』

「あ? トカゲ風情がアカツキ様を呼び捨てなどとは、いい度胸ですね。また尻尾を細切れにされたいですか?」

『す、すみません! 調子乗ってました! アカツキ様、万歳!』


 ユリィのドスの利いた声におびえたような声を上げて震えているのは…………全長が5メートル以上もあるドラゴンだった。アメジストのような鱗に、黒い鬣が特徴的な細見のドラゴンだ。ねじれた角や鋭い輝きを持つ瞳がなかなか威圧的だが、ユリィの言葉に丸くなって尻尾を抑えている姿は、なかなかシュールだった。


 この、ユリィによってパールドと名付けられたドラゴン型の闇属性の上級精霊は、ユリィとサーヤが湖畔で火花を散らしていたあの後すぐに表れ、『汝の武勲を示してみよ!』と、偉そうなことを言いながらユリィに襲い掛かったのだ。


 そして、ユリィによって、尻尾をざっくざくにされ、片方の角は折られ、全身を滅多切りにされるという一方的な虐殺劇ワンサイドゲームにあい、こうしてユリィの契約精霊になったわけである。カッコよく登場して、かっこいいことを言っていて、ステータスやレベルも普通に出てくるモンスターに比べたらかなり高いはずのドラゴン。それをトカゲ扱いだ。相手が悪かったとしか言いようがない。


「さて、このトカゲのことは置いておいて、そろそろアカツキ様と合流しますか。イベントも終盤に入ってきましたからね」

「そうですね。最後はお兄ちゃんと一緒がいいです」

「うんうん、アカツキちゃんだけのけものは、可哀想だしー」

『あ、主。あの者が帰ってくるのか……? ガクガク』

『……? ユニコーンよ。何をそんなにおびえているのだ? みっともないぞ?』

『やかましいわ! てか、お主だってそこのユリィ殿に怯えまくりではないか!』

「こら、ニコ! パールドと喧嘩しない!」

「……トカゲ。教育が必要ですか?」

『『ぬ、ぬぐっ』』


 口喧嘩をしていた上級精霊二匹が、それぞれの契約者に叱られて(脅されて)静かになる。


「えっと、お兄様に連絡すればいいのですか?」

「そうだなァ。それはそうと、アカツキん奴、無事に精霊と契約できてると思うか?」

「……十中八九、できてない」

「まぁ、お兄ちゃんですからね。こういう運が絡んでくることとなると……」

「否定はできませんね」

「あははー……。アカツキちゃんの扱いって、だいたいこんな感じなんだー」


 アカツキの扱いがひどいことにはリル以外誰も突っ込まず、連絡が入れられることになった。この際、誰がチャットを入れるのかということでひと悶着あったが、平和的解決方法じゃんけんによって、ユリィがコールすることになった。サーヤやレイカの恨めしげな視線を背に、ユリィはメニュー画面をひらく。その瞬間だった。


《緊急クエスト! 緊急クエスト! 精霊世界の遺跡に封印されていた邪物の封印が解けてしまいました! このままでは精霊世界に満ちる霊素が食い荒らされてしまい、この世界は崩壊してしまいます! 封印が解けた邪物は、封印機構の機能の一つで、特定のフィールドに転送されます! 封印されていた邪物は五体。転送されるフィールドは、草原、山岳、湿地、湖畔、遺跡フィールドです! プレイヤーは速やかにこれを討伐してください! なお、邪物は周りの霊素を喰らうことでどんどんと強化されていきます。クエストの成功条件は、邪物五体の討伐。もし、今から三時間以内に討伐できなければ、霊素を喰らい過ぎた邪物が暴走し、精霊世界は崩壊します。なお、失敗した場合、このイベント中に手に入れたアイテム、契約した精霊は消滅します。成功報酬の説明は……成功した時にお教えします。


 それではプレイヤーの皆さま、ご健闘をお祈りします!》


 響き渡る機械加工された女性の声。そのアナウンスが終わったと同時に、ユリィたちがいるところから数十メートル離れたところに、光を放つ魔法陣が展開された。だが、その大きさがおかしい。小さく見積もっても直径が二十メートル近くあるのだ。


 その魔法陣の中から姿を現したのは、『異形』。そうとしか表現できないような、名状しがたき怪物。


 全身が濡れた触手に覆われており、その触手の先には鋭い刃や棘、牙の並ぶ口や血走った眼球などが埋め込まれている。全身のシルエットは獣のように見えなくもないが、全身の触手がうねうねとうごめいているので、とても気落ち悪い。


「……は! な、なにアレー!?」

「かかかっ! 運営も粋な真似すんじゃねぇか!」

「……ギルマス。あれと戦うのはちょっと嫌なんだけど……」

「お? ビビってんのか、クロ。あいつ、ぜってぇー面白い素材落とすと思うぜ?」

「……さぁ、さっさと殺ってしまおう」


 ミーナは驚きながら、シズカは犬歯をむき出しにして闘志を高め、クロは職人モードでそれぞれの武器を構える。


「……き、気持ち悪いですわ」

「同感です。あれと近接戦闘するのは、ちょっと嫌ですかねー」

「……トカゲ、特攻してきなさい。骨は拾います」

『ちょ!』

「えー、あれ、ちょっとかわいくない?」

「「「どこが!?」」」


 ユリィ、サーヤ、レイカは己の武器を嫌々構えながら、リルの衝撃発言にそうツッコミを入れた。


「GYAURAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 どこかぼんやりとした雰囲気は、邪物の上げた咆哮で一瞬で霧散する。全員が表情を引き締め、倒すべき敵だけを見据えた。


「さぁて、お前ら。周りにプレイヤーの影は見えねぇ。つまり、あのバケモンの相手を私たちだけでやんなくちゃなんねぇってことだ。わかるか? 正直、今まで戦ってきたどのモンスターより、圧倒的に強いだろうな。……でもよう。最初から負ける気で挑むなんて私が許さねぇ。夜桜に許されるのは完全な勝利だけだ。誰か一人でもかけたら、負けだと思えよ? もちろん、ユリィとリルもだ」

「「「「「「はい(わかりました)!」」」」」」


 スラリ、と鞘から刀を抜いたシズカが、全員の顔を見渡しながら、不敵に宣言する。



「さぁて、祭りと行こうじゃねぇか!!」

うん、新作も頑張って書いてるから、読んでくれると嬉しいな♪

(↑きめぇ)


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