2-36 勘違い野郎と精神攻撃 で? 最後に何か言い残すこととかある?
めっちゃ更新期間が開いてしまって申し訳ございませんでした!
理由はいろいろあるのですが……。新作を書いていたり、新しいクラスで早くも孤立しかかっていたり、ロクでなしやひなこのーとやマキャベリズムを見たり、五月病を患ったり……。作者のやる気の問題ですね、すみません。
何とか今週中にもう一回更新します。
それと、異世界転生モノの新作、「転生少年の異世界絵巻(仮)」もよろしくお願いします。
なんだったっけ? えーっと……あ、そうそう、『モリアーティー』だ。こいつらのギルドの名前。
で、今俺の足元に転がってるこいつの名前が、ジェームズだったか。
「き、貴様……。我ら『モリアーティー』を敵に回して、無事でいられると思うなよ……っ!」
「そういうセリフは、しっかりと二本の足で立って言ってくれるか? 寝っ転がって言われてもかっこ悪いだけだよ?」
「ば、馬鹿にしおって……っ!」
ギリリ…、と歯ぎしりの音を響かせながら、ジェームズが俺のほうをにらみつけてくる。でも、地べたに這いつくばってそんなことをされても笑えるだけだ。怖くもなんともない。
モリアーティーのこいつ以外のメンバーは、すでにイベントから脱落している。全員で襲い掛かって来たから、【緋翼】と【翠砲】を数発発動。それだけでHPを全損させていた。よくは見てないけど、たぶんレベルもあんまり高くなかったからね、あのチャラい連中。
まぁ、結局こうやって全員をkill!することになってしまった。人間は対話で平和を求める生き物だというのに……。
……別に、「このアマぁ!」とか言われてキレたわけじゃないよ? 相手から襲い掛かって来たんだ、正当防衛正当防衛。ボクワルクナイ。
「で? 最後に何か言い残すこととかある? 正直、早くあの魔法陣の先にあるところに行きたいんだよね。お前の相手をしている余裕はないの」
「ま、まて! お前、いや君! 私のギルドに入る気はないか!?」
「なに?」
そんな突拍子もないことを言い始めたジェームズくん。俺が怪訝な顔で聞き返したのをいい返事と解釈したのか、全力でギルドのプレゼンを始めた。
「特別に、私のジョブを教えてあげようじゃないか! 私のジョブは『魔薬剤師』! 通常の薬剤師から上位進化したジョブで、時間はかかるが素材アイテムの性質を付与した薬が作れるようになるというものだ! 君が私のギルドの一員になってくれるなら、品薄で手に入らないポーション類を優遇してやろうじゃないか!」
えと……。あれ? 素材アイテムの性質を扱うなんて、[錬金術]の基礎のはずだよな……。[錬金術]なら時間もかからないし。つまり、ジェームズくんのジョブは、[錬金術]の下位互換ってこと?
「ふ、信じられないという顔をしているな!」
あ、いえ、可哀想なものを見る目です。
「疑い深い君に、私の作り上げた最高のポーションを見せてあげようではないか!」
そういって、アイテムボックスからポーションの瓶を取り出したジェームズくん。まぁ、これだけ自信満々なんだ。すごいポーションなんだろうなー。…………って、はぁ?
【通常アイテム】ポーション・改 HP回復+20%
えー……。自信満々に出してきたのがこれですか。俺の作る生命のポーションのほうが優秀なんだけど。あれ改良を重ねたらHP回復+35%まで上がったからね?
「くくく……。どうだ? 私の最高傑作を前に、言葉も出ないだろう? さぁ、君が我がギルドに入れば、いずれはこのポーションを使い放題に……」
「はぁ……。ねぇ、ちょっとこれ見てくれる?」
ここに取り出しますのは、[錬金術]で片手間に生み出した生命のポーション(HP回復+32%)でございます。それを、怪訝そうな顔をしているジェームズくんの目の前でゆらゆらと揺らす。
最初は「なんだそれ?」という目で俺の手の中の試験管を見ていたジェームズくんだったが、その表情がどんどん蒼白になっていった。うわごとのように「うそだ……」とか「あ、ありえない……」とかつぶやいている。ふっふー、これが現実だよぉ?
「ま、まさか……。君も魔薬剤師なのか!?」
「ううん、全然? 俺のジョブは黒導師。ちなみに、このポーションは[錬金術]で作り出したものだぞ?」
「う……嘘を吐くな! [錬金術]は誰にも使えないゴミスキルじゃないか!」
「別に信じなくてもいいぞ。あ、あと、このポーション一本作るのにかかる時間は三十秒くらい。アイテムボックスの中には腐るほど入ってるから、わざわざお前の効果の低いポーションで釣られる理由がないんだよなぁ」
「あ、ありえない……。ありえないありえないありえないありえないありえないぃいいいいいいいいいい!!」
「うおっ、うるさいな、もう。残念ながら、お前が叫ぼうがわめこうが、これが現実だ。魔薬剤師は[錬金術]のド基礎の下位互換でしかないってことがわかってよかったじゃないか。お前も錬金術師目指したらどうだ?」
「うわぁあああああああああああああああああ!!!」
……ふう。ま、いじめるのもこのくらいにしておきますか。いきなり襲われたことに対する仕返しもすんだことだし。まぁ、圧倒的に有利な状況で相手の精神をズタボロにするのも楽しいけど、これ以上は時間の無駄だ。
「そういうわけで、勧誘の件は断らせてもらう。お前は一足先にこの世界から出ていけ。――――【翠砲】」
魂が抜けたような顔をしていたジェームズくんが、エメラルド色の砲撃に飲み込まれて粒子に変換された。これで邪魔者はいなくなった。
「さぁて、気を取り直して、これの探索を始めますか」
自分で掘った穴に飛び込み、魔法陣の刻まれた床に手を付ける。そこに魔力を流し込むと、魔法陣が淡く発光し、二つに分かれた。上に乗っていた俺は落とされそうになるのをジャンプで回避。完全に床が開き切ると同時に階段に着地する。
地下へと続く階段。漂ってくる異様な雰囲気に、口角が持ち上がるのを自覚した。
「いざ、地下遺跡へ!」
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