2-35 遺跡フィールドとギルド『モリアーティー』 うっわ、変なしゃべり方のやつ出てきた
「ここは……遺跡フィールドか。へぇ、確かに感じが出てるなぁ」
草原フィールドを抜け、林道を抜けた先にあったのは、まさしく遺跡、という光景だった。石造りの建物の痕跡だと思われるものがそこら中にあり、こびりついた苔が時代を感じさせる。緑と灰色の遺跡は、独特の雰囲気が漂っていた。
とりあえず、めぼしい素材を根こそぎいただいていくか。精霊との契約が絶望的になった今、イベント限定の素材を集めることくらいしかやることがなくなっちゃったからなぁ。いっそのこと、精霊武器でも探してみるのも一興かね? もし仮に見つかったら、夜桜の誰かかリルにでもプレゼントすればいいし。
「さぁてと、素材集め素材集めっと……。あ、索敵どうしようかな。一人だとそういうことも自分で何とかしないといけないからなぁ」
素材を回収している最中に敵にやられるとか目も当てられない。ソロでがんばってる人とかどうやってこの手の問題を解決しているのだろうか? やっぱりスキル?
まぁ、俺に索敵の手段がないのかと言われれば、それはいいえ、だ。黒導師になったことによって、魔法や魔力操作でできることが、驚くほど増えている。
「ええっと、確かこうやって……。よしっ」
魔力を放出し、自分を中心とした半径十メートルくらいを覆う。この範囲に入って来たものを感知する無属性魔法だ。無属性魔法は基本的に魔力操作だけで発動する魔法なので、詠唱を必要としない。集中力を高めるために詠唱するのはありだと思うけど。
この魔力感知は、範囲内にある素材とかも発見できる。自分を中心に球体上に魔力を放出しているから、地面の中も探すことができる。……今考えると、イベント開始直後からこれ使ってたら、素材の回収がもっと効率的にできていたのではなかろうか? いや、これ以上考えるのはよそう。そろそろ精神ダメージが限界に達しそうだから。
ぐっさぐっさと心に突き刺さるダメージを極力無視して素材の回収に専念する。遺跡フィールドというだけあって、植物系の素材より、鉱物系の素材が多い。特に精霊結晶という素材アイテムが大量に手に入った。
精霊結晶は大きいモノで手のひらサイズ、小さいモノは小指の指先くらいの大きさの結晶で、全部で七色あった。無色透明、赤、青、緑、黄、白、黒の七色だ。色からして属性別に分かれてるのかな? イベントが終わったらゆっくりと実験しよう。
ざっくざっくと精霊結晶の反応を頼りに、地面をスコップで掘っていく。このスコップもクロさんに作ってもらったものである。固すぎるところや、石畳が残っているところなんかは、土属性の魔法で何とかすれば問題ない。さーて、今回の結晶は……お、すごい。両手で抱えられるサイズだ。色は黒だから、闇属性だな。
そんな感じで素材回収を楽しみつつ、時折出てくるモンスターを倒すこと一時間弱、遺跡フィールドのだいぶ奥の方まで来た時に、魔力感知に、何やら変な反応が見て取れた。
目視するだけでは、一見何もないように見える石畳。その下に、地下へと続く階段のような反応があったのだ。
「地下遺跡……。これはもしや、マジで精霊武器があるかもしれないな」
そうと決まればやることは簡単だ。【地導】で石畳を動かし、スコップでえいさこらと土を掘り返す。50センチくらいの穴を掘ったあたりで、それは現れた。
魔法陣が描かれた石板。俺の魔力感知が、その下に眠る地下へと続く階段の存在をしっかりと写し題していた。あとはこの魔法陣に魔力を流し込めば……。
そう、石板に手を付けようとした瞬間だった。魔力感知に無数の反応が出る。反応は俺が来た方向、つまり、遺跡の入口の方から。反応はどんどん増えていき、最後には十五人まで膨れ上がった。
「あっれ、んだよ、先に来た奴がいんじゃねーか」
「えーマジでー。俺たちがこのフィールド、一番乗りだと思ったのにさぁ」
「ここまで素材もモンスターもほとんど無かったの、先に来たアイツが全部取ってったってこと?」
振り返った先にいたのは、俺より少し年上くらいの男女の集団。なんていうか、全体的にチャラい。正直町に出るとこんな雰囲気の連中にからまれることなどしょっちゅうだ。
まためんどくさそうなことになったなーと思い、とりあえずそいつらに声をかけてみる。
「何か用?」
そっけないにもほどがある問いかけ。この手の連中にこういう対応をするとどうなるかというと……?
「あ? 何お前、何上から目線で話しかけちゃってくれてんの?」
「うわーうわー、こいつ目上の人に対する礼儀がなっちゃねー。どんな教育うけてんだよー」
「何その目。むっかつくんですけどぉー?」
うん、こんな感じになる。わっかりやすいなー。
「まぁ、落ち着き給え諸君」
うっわ、変なしゃべり方のやつ出てきた。あからさまにめんどくさそうなやつの登場に、もうこいつらデスっちゃうかと思考が物騒な方に傾き始める。
集団の真ん中を割るようにして姿を見せたのは、眼鏡をかけ、白衣を着た細身の男。白衣には何やら薬品の入った試験官が数本ぶら下がっている。うん、まぁインテリっぽい見た目だな。
その男が出てきた瞬間、騒いでいたチャラい集団がピタっと静かになった。なるほど、こいつがこの集団のリーダーってわけか。
そのインテリリーダーは、俺の掘った穴のふちに来ると、眼鏡越しに見下ろしてきた。なんでこいつ、すっげー腹立つ。
「さて、私はギルド『モリアーティー』のギルドマスター、ジェームズ。覚えておきたまえ」
「ふぅん、俺はアカツキ。ギルドには入っていない」
「ほう、では君は一人でこのフィールドを探索していたと? このフィールドは他のフィールドに比べモンスターが強いのだがな……。本当か?」
「はぁ……。本当だ。信じるかどうかはそっちに任せる。で? 結局何の用なの? 時間制限があるから無駄話はしたくないんだけど?」
「……こ、この私の話を無駄だと……っ!? ……ご、ごほん。では質問を変えよう。君の足元にあるそれは、一体何かね?」
ふむ、まぁ、そう来るわな……。でもなぁ、俺が見つけたものの情報をホイホイ教えるのもなぁ……。
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