2-34 寄らぬ精霊と嫌われるわけ なんで!? なんでこんなに嫌われてるの俺!?
はい、どうもお久しぶりです。すみません、最近新学期のあれやこれやで時間がなく、気が付いたらこんなにも間が開いてしまいました。
久しぶりですが、うちの主人公は相変わらずですよ。
大量に湧き出てくる虫の群れを撃退し、精霊世界の森を抜けた後、俺とユリィとリルは、平原フィールドでサーヤたちと遭遇した。ちょうど夜桜のメンバーで象を狩っているところだった。
リルのことを夜桜のみんなに紹介したところ、全員、喜んでリルのことを受け入れてくれた。なぜかシズカさんやクロさんから呆れたような視線を向けられたが。どんな意味があったんだろうか? サーヤとレイカが不機嫌だったのも気になるけど。
そのあとは、平原フィールド、山岳フィールド、湖畔フィールド、湿地フィールド、荒野フィールドなどを全員で回り、モンスターを討伐したり、素材の回収をしたりした。イベント専用の素材はいろいろと面白い効果を持つものが多く、クロさんと一緒にみんなのことを忘れる勢いで採集して怒られた。
イベント開始から十時間も立つと、周りにちらほらと精霊らしきものと契約している人の姿が見えてきた。それを見て俄然やる気を出したみんなが、すさまじい勢いで精霊を探し始める。
ちなみに、精霊は無を除く六属性が存在しており、また、その姿で位がわかるらしい。最初に予想したように、犬や猫の動物をデフォルメしたような姿をしているのが下級精霊。リアルな動物型と妖精や竜などの幼体の姿、つまり幻獣型の幼体が中級精霊。そして、成体の幻獣型と人型が上級精霊らしい。頭に兎型の中級精霊をのせてたあんちゃんが自慢げに教えてくれた。まぁ、女性陣の「うらやましい……」という怨念こもった視線にすごすごと退散してたけど。
それから約二時間。リルを皮切りにみんなが次々に精霊と契約を交わしていった。精霊は本当に気まぐれだ。いつどこで何をして、とかいう条件みたいなものが一切ない。採集をしていたら隣をふよふよ浮かんでいたり、戦闘中にどこからともなく援護が飛んできたり、ただ歩いているだけで寄ってくることもある。
ユリィ、俺を除く全員が精霊との契約に成功した。シズカさんは水属性の虎型の中級精霊。レイカは炎属性の妖精の中級精霊。ミーナは土属性のアルマジロの中級精霊。クロさんは闇属性の烏型の中級精霊。サーヤは風属性のリス型の中級精霊。そしてリルは、光属性のユニコーン型の上級精霊だ。みんなそれぞれ新しいパートナーを可愛がってる。
よし、この調子で俺とユリィも……と思ったのだが、ここで問題が一つ発生した。
「……ねぇ、このくらい離れておけばいいかな?」
「トスクがまだ怖がってるよ、お兄ちゃん」
「わたくしのファフィもですわ。こんなに震えてしまって……」
「……アカツキ、レイヴがすっごい睨んでる。何したの?」
「なんにもしてないよ! なんで!? なんでこんなに嫌われてるの俺!?」
なぜか……本当になぜか、精霊たちが俺のことを怖がるのだ。俺が近づくと涙目になって震え始めたり、毛を逆立てて威嚇されたり、ミーナのアルマジロは俺が触ろうとした瞬間に体を丸めて防御体勢に入った。
「かかかっ、アカツキよぅ。お前さん、『精霊に嫌われる』みたいな効果の称号でも持ってんじゃねぇか?」
「そんなピンポイントな称号を取得した覚えはない! ……うう、これじゃあ契約もできそうにないじゃないか……」
あれだろうか、これも不幸体質のせいとでもいうのか? いや、流石にこれは不幸とは関係ないか。じゃあ、本当に何が原因なんだろうなぁ……。てか、すでに十メートルくらい離れてるんだよ? それでもダメなのかぁ……。
「ふふふっ……」
「わぁ、お兄ちゃんがついに虚ろな笑みを浮かべ始めたよ……」
「もう、なんで二コはアカツキちゃんのことを怖がるのよ!」
『ガクガクガク……。あ、主。あの者が主の恩人であることはわかっている……。だ、だが、あの者を見ていると、こう、心の奥底から恐怖が湧き上がってくるのだ……』
はっはっは、なんかもう化物扱いじゃないですかあっはっは。……はぁ、これじゃあ精霊たちが俺におびえてどっか行っちゃうかもしれないし…………。
「ユリィー、ちょっといいー?」
「は、はい、アカツキ様。どうしましたか? 精霊に嫌われ過ぎて落ち込んでいるなら、ぜひ私が慰めて……」
「俺は大丈夫! このままだとユリィまで精霊と契約できないかもしれないからさ、俺は少しの間単独行動するよ」
「え、でも……それじゃあ……」
「ははっ、大丈夫大丈夫。ちゃんとサーヤたちのことを見ててやってくれる?」
「……はい、わかりました」
納得のいっていない様子のユリィだったけど、最後は折れてくれた。皆と一緒に遊べないのは残念だけど、俺のせいで皆に迷惑をかけるほうがつらい。
その後、ぐずるサーヤやレイカを説得して、俺は一人で精霊の世界を歩き始めた。草原フィールドを歩きながら、あることを確認するために[叡智]を発動する。
「[叡智]―――『キーワード【精霊】』」
眼前に仮想ウィンドウが出現し、いくつもの言葉がそこに並ぶ。その中からお目当ての項目……精霊について書かれたものを選択した。
展開されている仮想ウィンドウの上に重なるように、もう一枚の仮想ウィンドウが展開される。そこには精霊に関する情報が網羅されていた。
精霊
それは魔力が集合し、昇華された『霊素』と呼ばれるエネルギー体が姿と意志を持ったもの。それ故に霊素のない世界では存在することができない。霊素の満ちた世界は精霊が自然と集まり『精霊界』となる。世界との親和性がとても高く、世界を変革する力である魔法との相性がとてもいい。精霊の魔法は、魔法行使に必要な五工程を無視し、自分の属性の魔法なら想像→発動という一瞬のプロセスで行使することが可能。また、感知能力にも優れていて、敵意や格上の気配を敏感に感じ取れる。しかし、格上の気配の場合、その気配と精霊との間に格の差がありすぎる場合、恐慌状態に陥る。
また精霊は他種族と友好的な関係を築くと同時に『契約』という形で気に入った相手についていくことがある。契約は精霊の力の一部を封印する代わりに、霊素のない世界でも精霊が活動できるようにするための措置である。
……さて、これが精霊の説明である。まだまだ続きはあるが、とりあえずはこのくらいでいいだろう。
俺が気になった文章はひとつ、『格上の気配の場合、その気配と精霊との間に格の差がありすぎる場合、恐慌状態に陥る』というこの一文だ。
つまるところ、サーヤたちと契約していた精霊は、俺から出る格上の気配に恐怖していたということになる。
では、俺から発せられる格上の気配とはいったい何だろう、と考えてみたところ、案外簡単に答えは見つかった。
「……まさか、大幅パワーアップになったこれが原因だったとは…。つくづく運がない……」
開いたステータス欄の一番下にある項目、称号[黒の神の寵愛]。これは黒の神……ナトのお気に入りだということを示す称号らしい。つまり、精霊たちは、この称号を通じてナトという神の気配を感じ取っていたのだろう。
この称号は受け取ったら最後、どうやっても解除できない。つまり、俺が精霊に怖がられないようにするのは無理ってことになる。結論が出たらすっきりした。…………はぁ。
精霊の設定など、ツッコミがありましたら感想に書いてください。誠心誠意直させていただきます。




