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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
55/62

2-32 虫には岩と忘れ去られたもの 便利なものを作れても使えなきゃ意味ないだろ……

 【地導】で作った道の、前から後ろからわんさか湧き出してくる虫の群れ。様々な種類の巨大虫が重なり合うくらいに密集しているのは、正直気持ち悪い。リルとユリィなんてもう気を失いそうなほど青ざめている。


「……二人とも、戦えそう?」

「「無理です!!」」

「力強い否定だなぁ……。おっけい、二人はそこで待ってて。すぐに殲滅するから」


 涙目で叫ぶ二人。そんなにいやか。まぁ、俺も魔法じゃなくて格闘で戦えといわれたら全力で拒否するが。


 さてと、まずは……。【地導】で作った道だけだと、流石に狭いな。戦える場所を広げるとするか。


「――――【地導】」


 今までとは異なり、道ではなく広場を作るようにイメージして魔法を発動させる。周りの木々がうごめき、俺を中心に円を作るように避けていく。動き出した植物に虫たちが驚いている間に、半径十メートルくらいの円形の広場が完成した。


 作った広場の中心に立つ俺たちを囲むように移動する虫の群れ。包囲して逃げられなくするということを思いつくとは、どうやらそこそこ知能が高いらしい。それともそういう風に動くようにインプットされてるとか?


 そんなことを考えているうちに、虫の群れの中から、翅を持つ飛行タイプの虫が空中に飛び上がり、羽音を響かせながらこちらに向かってくる。


「虫、飛行タイプには……岩! 『堅き砲撃は大地より隆起せり 呼び起こすは地竜の怒り』【弾岩撃】!」


 飛来してきた虫たちに向かって地面から発射した岩石をぶつける。ボールでポケットなモンスターをゲットするゲームのタイプ相性はこのゲームでも発揮されるのだろうか?


「「「キャシャアアアアアアアアアア!!!」」」

「あ、思いのほか効果あったのね。じゃあ土属性を中心にやってくか。――――【弾岩撃】!」


 もう一度岩の弾丸を空中の虫にぶち当て、空に純白の粒子をまき散らす。


 空中の虫を一掃したあたりで、今度は地上にいる虫の中から、蠍やら蜘蛛やら、毒を持ってそうな奴らが魔力をため込み始めた。何かしらの攻撃がくるのはわかっているので、防御魔法の準備に入る。


「『大地よ我が安寧を守護する強固なる壁となれ』」


 詠唱を終えたタイミングで、虫たちが口や尻尾から毒々しい色をした液体の弾丸を吐き出した。どこからどう見ても毒である。まともに喰らうとどうなるかわからないな。


「【護石壁】」


 毒液を地面からせりあがって来た石の壁が受け止める。壁に当たった毒液はジュウッ! と音を立てながらその表面を溶かした。やっぱり、掠るだけでも結構なダメージを負いそうだな。


「チッ、厄介な……。しかも数がまた増えてないか?」


 どんだけ虫が生息してんだよこの森は! と内心ツッコミを入れつつ、【嵐鎚】で地上の虫を何体か押しつぶす。


 だが、それでも虫の群れが収まる気配はない。【終冥】をぶち込んでやろうかと思ったが、流石にこの範囲を覆うには魔力が足りない。


「はぁ、虫ってなんでこんなに鬱陶しいんだろう? ゴキブリにしろ蚊にしろ蠅にしろ、人間様に迷惑かけすぎだろ。現実でそれなのに、仮想現実でもそうとか……。…………あ」


 現実世界での虫のウザさを考えているとき、あることを思い出した。確か、ちょっと前にそういうものを作ったはず……!


 急いで【飆断】を発動して、アイテムボックスをあさる。素材やら錬金術で作り出したアイテムやらが乱雑に並ぶウィンドウを操作しながら、お目当てのものを探す。


「これじゃない、これでもない……。なんで普段から整理してないかな、俺は……」

「あの……アカツキ様? いったい何を……」


 【飆断】で虫の姿が隠れたことで少し復活したユリィが、はたから見たら変な行動をとり始めた俺にいぶかし気な視線を向けてきた。


「はっ、なんで忘れてたんだろうな、俺。便利なものを作れても使えなきゃ意味ないだろ……って、すまんユリィ、なんだって?」

「いえ、いきなりアイテムボックスをあさり始めたので、どうしたのかな…と」

「も、もしかして、外のむ……アレを何とかできるアイテムがあるとか!?」


 リルが期待に瞳を輝かせながらそう聞いてきた。てか、口に出すのも嫌なのか…。早々に森からでなきゃなぁ。


 リルの期待に応えるように口元に笑みを浮かべる。


「その通りだよ、リル。まぁ、作った本人が完全に忘れてたんだけどな…。悪かった。もっと早く気づいていたら、こんなに怖がらせることもなかったんだけどな」


 安心させようと浮かべていた笑みは、だんだん苦笑に変わっていく。考えれば考えるほど間抜けと言わざるを得ない。


「お、あったあった。まったく、これがあればホントに楽できたんだけどなぁ」


 アイテムボックスから取り出したそれを眺めながら、思わずぼやくようなつぶやきを漏らす。


「アカツキ様それは……ポーション? いえ、毒薬ですか?」

「ふえ? そ、その瓶の中に入ってるのが、外のアレをどうにかするものなの?」

「ああ、これは――――」


 手の平に乗っている透明な液体の入った瓶を転がしながら、リルの疑問に答えを返す。



「ムシコロースEX……簡単に言えば、殺虫剤だ」

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