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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
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2-31 道を開く方法と虫虫虫…… 跡形もなく消し飛ばしてください!

 森の中を進んでいく。色とりどりの植物が所狭しと密集している森の中。進むのはかなり大変である。


「ねぇねぇ、アカツキちゃんの魔法で、道を作ったりできないのかな?」


 草木をかき分けて進むのに疲れたのか、リルがそんな提案をしてきた。


 まぁ、後衛職の俺とリルは身体能力が低い。道を拒む草木を払いながら進むのは無駄な体力を消費するし、何より時間がかかる。制限時間があるのだから、こういうところで時間を無駄にしたくない。


 うーん、植物だから炎系統の魔法で焼き払ってしまうのが手っ取り早いのだが……。森林破壊とかになったら嫌だし。それに、精霊って自然とかを大事にしてるイメージがある。確証はないにせよ、精霊に嫌われるような行為はやめておいた方がいいだろう。


 じゃあ、どうするか。【黒座】で空を行くっていう手もあるけど……。地上のモンスターと素材を全スルーするのはもったいない。


「………………」

「えっと、そ、そこまで真剣に考えなくても……。リル、もうちょっと頑張るから……って、もう聞いてないよぉ…」

「アカツキ様は、変なところでまじめですからね。まぁ、その内戻ってくると思いますから、少し休憩しましょう」


 植物を操る魔法? うーん、やってやれないことはないだろうけど、精霊の機嫌を損ねそうだからなー。こう、植物だけどいてくれるような、そんな魔法はないだろうか?


 植物だけ……植物だけ……。……あ!


「うん、これならいける……やれるぞ……。ふっふっふっ、さぁて詠唱はっと……」

「ユリィちゃんユリィちゃん、アカツキちゃんが怖いです!」

「大丈夫ですよー」


 二人が何かぶつぶつ言っているが、あいにくと集中していて内容までは頭に入ってこない。そんなことより、魔法のイメージを固め、詠唱を考えることに全力を尽くす。


 使うのは、土属性の魔法。植物を操る必要なんてなかった。ただ、ちょっとどいてもらえばよかったんだ。


「『大地よ我が呼びかけに答え我が歩みを助けよ』【地導】」


 込めたイメージは、植物の根の周りの土ごと移動させ、道を開くというもの。魔力を込め、鍵言を詠唱すると、俺たちの前に生い茂っていた草木が左右に分かれ、幅の狭い茶色の道が完成した。


「うえええええ!? ほ、ほんとにできちゃったのぉ!?」

「さすがです、アカツキ様」

「まぁ、ランクアップの恩恵が多大ってことかな? この魔法もそこまで魔力を消費するわけじゃないし。それより、さっさと先に進もうぜ」


 驚いているリルの頭をからかうようにポンポンと撫で、出来上がった道を歩き始める。


 魔法の効果範囲の限界まで来たら、また【地導】で道を作り、素材を採取してを繰り返しながら進んでいく。


「なかなかモンスターが出てこないなー。お、素材発見!」

「うーん、なんでだろうね? この森にはあんまりモンスターがいないとか?」

「確かに……。さっきからあたりを探っていますが、生き物の気配が感じられません」

「……ねぇ、アカツキちゃん。ユリィちゃんは気配を察知するスキルとか持ってるの?」

「いや、あれはプレイヤースキル。俺も気配がどうこうは流石にわからんからな。こういう時はユリィに任せておけばいいだろ」

「……この二人、いろいろおかしいよぉ!」


 がっくりと肩を落とすリル。おかしいとは失礼な。


 そんな風に話していたからだろうか? ユリィが静かに両腰に帯びた二振りの剣を抜刀した。モンスターの気配をつかんだようだ。


「リル、お出ましだぞ」

「え? ……あ、モンスター!」


 わたわたと杖を装備するリルを待たずに、モンスターは姿を現した。木々の隙間から飛び出すようにして道に出現したのは……


「……バッタ?」


 でかい黄緑色のバッタだった。強靭そうな後ろ足に、どこを見ているのかわからない複眼。大きさは俺の腰くらいまである。正直、キモイ。


「キシャァアアアアアア!」

「ひうっ!」

「うわぁ……。アカツキ様、私あれを斬るのは嫌なんですが……」


 威嚇するように鳴き声(?)を上げるバッタ。なんで虫が鳴くんだよ。翅とかを動かしてるわけでもないし、発声器官でもあるのか?


 女性の二人にはこの虫野郎はきつかったらしい。リルは涙目でプルプルと震えており、ユリィは青い顔をして俺の後ろに隠れていた。まぁ、俺もあれを触るのは嫌だな。魔法職でよかった。


「『我が敵を縛れ不可視の枷よ』【重縛】」


 とりあえず闇属性の拘束魔法でバッタの動きを封じる。重力の枷がバッタの上から降りかかり、地面に縫い付けた。あの強靭な後ろ足から生み出されるジャンプ力は、これで封印できただろう。


「よし、拘束完了。まってろー、さっさと倒しちゃうから」

「あ、アカツキちゃん! 早く早くぅ!」

「跡形もなく消し飛ばしてください!」

「どんだけ怖いんだよ……。まぁ、あの大きさだしな。気持ちはよくわかる。『生み出されしは小さき陽光 灼熱の裁きを受け入れろ』【落陽】」


 灼熱を凝縮した球体を真上からバッタに叩き付ける。球体に閉じ込められた熱量がバッタを焼き尽くし、炭に変えた。白い粒子に変換されたバッタを見て、リルとユリィがホッと息をついた。


 だが……。


「キャシャアアアアアアアアアア!!」

「シィイイイイイイイイイイイイイ!!」

「フィヒャアアアアアアアアアア!!」


 木々の隙間から次々とあらわれる虫型モンスター。バッタがやられたのに反応するように現れた虫の大群。これは流石に……。おっと、リルとユリィが声にならない叫びをあげてる。


「ここまで集まると、生理的にキツいよなぁ。――――【緋翼】!」


 虫には炎だろ、という単純な考えで炎の翼をはためかせる。だが、あまり効果がないようだ。炎に耐性を持っているのか?


 蛾、芋虫、蜘蛛、蟻、百足、蜻蛉、蠍、鮒虫、蚯蚓、カブトムシにクワガタ。出るわ出るわ、巨大虫がわんさか。ざっと見るところ、赤系統の色をした虫が多いように思える。


 さてと、かなり数が集まっているというのに、こちらは二人が戦意喪失状態。


 何気にピンチな状況に、ため息を付くのだった。


 

 

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