2-26 新ジョブと《黒導師》 俺らの糧となって果てろ、畜生ども
「……と、いうことがあったんだよ」
「……アカツキ様って、前世で神に反逆でもしたのでしょうか?」
「何が悲しいかって、そういう状況になれちゃってる自分がいることなんだよなぁ」
「元気出してください、アカツキ様」
『神話世界オンライン』初のアップデートは、特に問題なく終わった。
さっそくログインした俺は、アップデートを待つ間に起きたことを、ユリィにかいつまんで説明した。話が進むに連れて、ユリィの視線に同情が混じっていくのが地味につらい。最後のほうなんて、完全に可哀想なものを見る目だった。
「……俺から話はじめてなんだけど、この話もう終わっていい? 後から思い出すと……こう、辛い」
「さ、さぁ、アカツキ様! さっそくジョブのランクアップをしましょうか!」
「…………そうだな。ありがとう、ユリィ」
ユリィのやさしさが、すごく胸にしみました。
「それで、ジョブのランクアップはどうやるんだっけ?」
「ステータス画面から行えると、運営のメッセージには書かれています」
ユリィの教えに従って、ステータス画面を開く。
「ジョブの部分が点滅してるけど。これなのか?」
「そうみたいですね」
その部分に指を押し付けてみる。すると、ステータス画面に重なるように、新しい画面が現れた。
なになに……。ランクアップ可能ジョブ一覧か。うん、これで間違いないみたいだな。
ちなみにだが、ランクアップ可能なジョブは、そのプレイヤーのスキルや称号、今までの行動などで、二から三個表示されるらしい。
ではでは、俺の場合はどうなるのかな……?
ランクアップ可能ジョブ一覧
《黒導師》
「……あれ? ランクアップ可能ジョブが一個しかないんだけど……? ユリィは?」
「私は《双剣士》、《軽業師》、《バトルメイド》の三つです」
「なんで俺は選択肢が存在しないんだよ。それに、この《黒導師》って言うのはどんなジョブなんだ?」
こういう時は、みんな大好き[叡智]先生の出番である。ささっとスキルを発動させると、《黒導師》に関する情報が表示された。
《黒導師》(ユニークジョブ)
最高位の魔導神である黒の神から加護を受けた魔導使いがなることのできる《黒導士》の上位職。黒の神から直接寵愛を受けた者だけがなることのできる選ばれし職業。ありとあらゆる属性の魔導を使うことができるが、スキルを使用した魔法が使用できなくなる。扱える属性は本人のレベルが上がるごとに増えていく。
魔力の感知力、操作力、回復力が大幅上昇。習得している魔法関連のスキルすべてが[魔導]のスキルに吸収合体する。
[魔導]
魔法に関するありとあらゆるスキルを内包するスキル。スキルを通して使う魔法が使えなくなる。
※注意、このスキルはスキル枠を五つ使用します。
へぇ、なんかすごそうだな………………って、いやいやいや! なんだよこれ!
ユニークジョブってことは、《黒導師》は俺しかいないってことだよな。ただでさえ、カーバンクルという爆弾を抱えているのに、また不用意に人におしえることのできないことが増えたぞ!?
《黒導師》の説明文を、そっくりそのままユリィに伝えてみると、『またですか……』という呆れ交じりの言葉を頂戴した。俺だって好きでやってるわけじゃないんだぞ……?
まぁ、ほかに選択肢がないので、これにするしかないんだけどね……。というわけで、ポチっとな。
《プレイヤー、アカツキは《黒導師》にランクアップしました》
アナウンスとともに、俺の体が光に包まれる。その光は、俺の体の中に吸い込まれるようにして消滅した。なかなか派手なエフェクトだったな。
ステータスを確認すると、しっかりとジョブの部分が《黒導師》に変わっていた。それによってステータスにも変化が生じている。
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名前 アカツキ 性別 男 種族 カーバンクル 職業 魔法使い→黒導師
レベル 35
HP 500
MP 1500
力 3
物防 3
知 100
魔耐 8
速 4
器用 4
SP 0
スキル
[魔導Lv1][格闘術Lv32](上限数10)
称号
[叡智の宝石][白百合姫の主][挑戦者][黒き神の寵愛][魔を導く者]
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MPと知のステータスがかなり上昇していた。スキルの部分はずいぶんとすっきりしたな。それだけ、俺が魔法関連のスキルしかとっていなかったということか。
「アカツキ様、ランクアップが終わりました」
「俺のほうも終わったぞ。ユリィは何のジョブを選んだんだ?」
「私は《双剣士》にしました」
「……《バトルメイド》ってやつにしたら面白かったのに」
「人のジョブで勝手に面白がらないでくださいっ!」
《双剣士》は剣を両手に装備した状態だと速と力のステータスに補正が入るという、ユリィのバトルスタイルにピッタリなジョブだった。それにしても《バトルメイド》……。やっぱり気になるな。
初イベントが開催されるまでは、もう少し時間がある。新しいジョブを試すための時間なのだろう。
「よし、じゃあ適当にモンスターを探して実験台になってもらおうか」
「その言い方、流石にひどくないですか?」
「えー、じゃあ…………俺らの糧となって果てろ、畜生ども」
「さらに酷くなってますよ!?」
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