2-21 おひろめ(新装備)とおひろめ(亜空工房) じゃあ、招待するよ。俺の錬金工房に
今日がホワイトデーであることをリモンのソシャゲで知った作者www
「な、なんかすごそうな装備ばっかりなんだが……」
「……違う」
「え? ああ、これが今の普通なのか」
この装備を身に着けるだけで、知のステータスが+30、物防+18、速と器用がそれぞれ+4。それに、追加効果らしきものまでついている。装備するだけでここまでパワーアップするなら、もっと早く装備を整えるべきだったな。
「それも違いますわよ、お兄様」
俺がそう納得していると、レイカが呆れたように告げた。どういうことだ?
「……効果付きの装備はまだほとんど出回っていない。だから、それはすごそうな装備じゃなくて、すごい装備」
「お、おう。そうなのか……悪い」
「……わかればよろしい」
クロさんから妙な迫力を感じる。これが職人の矜持というやつなのか……。うん、不用意な発言だったな。反省反省。
「ねぇ、お兄様。わたくし、お兄様の新しい装備がどんなものか、興味がありますわ」
「ん、ああそっか。装備アイテムはちゃんと装備しないと効果がないもんな」
「……お兄様、何当たり前のことをっていますの?」
おや、レイカにこのネタは通じなかったようだ。呆れた視線で見られてしまった。……ちょっと凹んだ。
さっそくメニューから装備画面に切り替え、初心者装備と受け取った装備を入れ替える。
ゲームならではの謎エフェクトが俺の全身を包み、装備が変わる。
鉄蜘蛛糸のシャツはシンプルなデザインの漆黒のワイシャツ。ズボンのほうは、同じく黒のスラックス。どちらも袖と裾の部分に銀糸で魔法陣が刺繍されている。
その上に羽織る魔狐のローブは白を基調にしたひざ丈までのフード付きのローブ。腰のところにアイテムポーチのついたベルトがまかれている。
魔法使いの靴は見た目は革のブーツだが、運動靴よりも履きやすく、飛んだり跳ねたり走ったりといった動きがスムーズにできた。
左手首にはめられているのは、青い宝石をあしらった銀細工のブレスレット。これが蒼玉の腕輪なのだろう。
感想を一言。素晴らしい。
「おお! これはすごいな。さすがクロさん、センス抜群だな」
「……ほめても何も出ない。でも、アカツキ。よく似合ってる」
「ええ、素晴らしいです。アカツキ様の魅力が一段と上がっていますので。素晴らしい腕ですね」
「お兄様、かっこ可愛いですわ!」
「うん、レイカ。そこは普通にかっこいいでいいんだぞ?」
皆の反応からして、似合ってるらしいけど……。うん、ならいいか。
「あれ? そういえばマジックグローブは? ちゃんと装備したと思ったんだけど……」
「……グローブは透明化という特殊な加工をしてある。装備アイテムを装備しても、見えないし、つけてる感覚がなくなるという効果がある」
「へぇ……、でも、なんで透明化させる必要があったんだ?」
「……萌え袖が見たかったから。アカツキ、グッジョブ」
「………………」
ちなみに、萌え袖とは大きめのサイズの服を着た時に起こる、袖から指先だけがちょこんと出ている状態のことだ。確かに、魔狐のローブは袖が少し余るように作られていた。
ぐっとサムズアップするクロさん。なんかもう反抗するのがめんどくさくなってきた。そこまでして俺を可愛いもの扱いしたいか。
「クロさん、素晴らしいです!」
「お兄様、とってもかわいらしいですわ!」
メイドと弟子には大好評だったが、その褒められ方はちっともうれしくない。
その後、帰って来た夜桜のメンバーにも、口々に可愛いだの愛らしいだのお人形さんだの言われたのであった畜生。
◇
「そういえばサーヤ。イベントの詳細ってまだ発表されてないんだよな?」
「そうだねー。これもう、アップデート後まで発表されないんじゃないかな? わたしはPVPの大会だと予想してるよ」
「PVPシステムはアップデートで導入されるからな。その可能性はあるか……。ユリィはどう思う?」
「私ですか? そうですね……。最初のイベントですし、特殊フィールドの探索、限定アイテムの採集、特定のモンスターの討伐数やドロップアイテムを得点化し、ランキングする……とかでしょうか?」
「ダンジョンアタックってのもあるかもしれねぇな。後は大型レイドボスの討伐……か?」
「……素材アイテムが集まるなら何でも」
「アタシは楽しいのがいいなー。皆でわいわいできるのが特に!」
装備を一新した俺は、夜桜のメンバーとイベントについて話していた。アップデートの後すぐ行われるゲーム開始一週間記念イベントは、開催時間以外の情報が完全にシャットアウトされており、プレイヤーの間では様々な憶測が飛び交っている。
こうして夜桜のメンバーやユリィの意見を聞いていると、戦闘が絡んでくるようなイベントが多い。プレイヤーレベルはアップデート共にジョブのランクアップができるように上げてあるから問題ないとして……。[錬金術]や[格闘術]のスキルレベルをもう少しあげておきたい。
[格闘術]のスキルはナトの試練で結構上がったから……。
「イベントの準備もかねて、錬金術のレベル上げやるか」
ポツリとそうつぶやくと、真っ先に反応したのはもちろんのようにレイカだった。さすがは我が弟子である。
「お兄様の錬金術してるところ、見てみたいですわ!」
「見てみたいって……。まぁ、いいか。あんま面白いものでもないと思うけどな」
「ま、そう言いなさんな。あたしも興味があるぞ」
「はいはい! アタシも!」
「わたしも、なんだかんだで見たことないなー」
レイカに続くようにして、ほかのメンバーも便乗してくる。期待のこもった視線×4がこちらに向けられる。これは断るの、無理だな。
「……そういえば。アカツキはなんで[錬金術]を使える? ファストには入れないはず」
こてんと首をかしげながら、鋭いことをいうクロさん。他のメンバーも「そういえば……」という顔をしていた。亜空工房のこと、言ったことなかったっけ? ……そういえば言ってないな、うん。この際だから、全員招待してみるか。
「そうだな……。じゃあ、招待するよ。俺の錬金工房に」
俺はそういって、アンティーク調のカギを皆に見せびらかすように掲げた。
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