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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
38/62

2-15 最終試練と魔法使いの天敵 確かに、最終試練にふさわしい相手だよ

短めです。

「――――【翠砲】!」


 俺の放った砲撃魔法がミノタウロスの巨体を吹き飛ばし、壁に叩き付けた。魔法と激突のダメージが決め手となり、ミノタウロスの体が粒子に変換されていく。


 ……うん、何とか勝てた。てか、すっごい強かった。


 まず、祭壇を守りながら戦わなくてはいけないという条件のために、祭壇に乗ったまま戦うのは危険すぎると判断。いちいち【嵐鎚】で吹き飛ばすのもめんどくさい。なので、ミノタウロスとの戦闘は祭壇の周りで中距離戦となった。常に一定の距離をとって、ちまちまと魔法でダメージを積み重ねていく。幸いにもミノタウロスは近接戦闘系のモンスター。こうしておけば、時間はかかるけど倒すことができる。


 ――――そう考えていた時期が、俺にもありました。


 うん、びっくりした。あの牛野郎、あろうことか斧投げてきたんだぜ? あの大きさの斧をトマホーク扱いとは恐れ入った。全力回避をしたと思ったらブーメランのごとく戻って来たからね。近接攻撃の威力は必殺。そして中距離攻撃まで完備とか鬼畜だな。ユリィならアイツ相手にも打ち合えるんだろうけど……。ないものねだりをしてもしょうがないか。なんとなく、この試練が終わればユリィも起きると思うし。


《第二の試練の達成を確認》


《これより最終試練に入る。黒き神に認められし者よ、知恵と力、そして道具。汝のすべてを使い果たし、試練を乗り越えよ》


 無機質なアナウンスによると、次で試練は終わりのようだ。……にしても妙だな。このアナウンス、第二の試練までが何だったかのかと問い詰めたくなるぐらいの親切さだぞ? 心境の変化でもあったのかね?


 そんなどうでもいいことを考えているうちに、また魔法陣が浮かび上がり始めた。だが、今までとは違うところが一つ。なんか、魔法陣がいくつも重なってるんだけど?


 何やら嫌な予感がする。こういう時の対処法は……。


「最大火力で、吹き飛ばす!」


 出てきた瞬間を狙ってボコる。出オチ要員になるがいいさ。


「『闇よ汝は狂おしいほどに押しつぶすもの 冷徹にて残酷なる死神の一撃よ 我が敵の存在を否定せよ』、【終冥】」


 なぜかはわからないけど、闇の魔法が一番使いやすい。なので、選んだのは闇属性の魔法。


 さて、ここでお勉強の時間だ。闇属性とはいったい何なのか。


 一つは前にも言った、『奪う』という性質。言葉通りの性質で、例えば炎から熱だけを奪う、みたいな真似もできる。ほら、ドレイン系の魔法とか闇っぽくない?


 そして、闇にはもう一つ、『目には見えないもの』。つまり、『不可視の力』を操る性質がある。物理法則とか操れるわけ。魔力をめちゃくちゃ消費すれば、運命とかも操れるんじゃないの? 


 で、俺が使ったこの魔法、【終冥】。これは重力操作の魔法である。指定した範囲の重力をめちゃくちゃにするというもの。強さも向きもバラバラな重力で範囲内のすべてを破壊する魔法。MP消費量は驚異の1000。燃費とか効率とかに真っ向から喧嘩を売っている魔法である。


 魔法陣から試練の相手が表れるのと、俺の魔法が完成したのはほぼ同時。今の俺の最大火力、受け取ってくれ。


 魔法が発動すると同時に、魔法陣から現れた影がぐにゃりと歪んだ。そのまま空間ごとかき回されるように影は不可視の攻撃に沈む……はずだった。


「………はぁ!?」


 目の前で起きたことが一瞬理解できず、思いっきり叫んでしまった。


 魔法は発動したはずだ。どこにも不備はなかったし、発動したという感覚もあった。


 なのに、それなのに。


「魔法が………消えた?」


 目の前で起きたのは、そうとしか考えられない現象。【終冥】が影を巻き込もうとしたその瞬間に、まるで魔法が発動した事実そのものがなくなってしまったかのように、空間のゆがみが消えた。


 空間のゆがみが消え、魔法陣から現れた存在の正体が俺の目に映る。それは金属でできた巨大な人形。ゴーレムだ。メタリックな胴体、関節が四つはある長い腕が四本。足は短く重厚。顔に当たる部分には半球とその中央にはめられた青く輝く水晶体があった。メタルゴーレムとでも言うのだろうか?


 メタルゴーレムのHPを見る。……一ミリも減っていなかった。つまり、俺の魔法は何らかの方法で無効化されたということだ。


 アイテムボックスから魔力回復薬を取り出し、体にぶっかけてMPを回復。【黒座】と[瞑想]のコンボでMPを急速に取り戻す。


 そして放つ魔力弾六発。それぞれ違う属性を込めた弱点発見用の魔力弾だ。


 だが、その魔力弾が役目を果たすことはなかった。魔力弾はメタルゴーレムのボディにあたる直前に霧散(・・)した。


 自分の頬がひきつっていくのがわかる。やばい、洒落にならないレベルでピンチになっていることを否応なしに理解させられる。


 確かに、最終試練にふさわしい相手だよ。こいつを倒せる魔法使いはいないんじゃないかってくらい魔法使いを殺しにかかってきてる。


 [叡智]でメタルゴーレムの特性を確認。その検索結果に思わずため息が漏れた。



「『魔法霧散結界』……。どうやって攻略しろと?」

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