3 キャラメイクとステータス べ、別にレア種族とかほしくないんだからね!?
初日三連弾、三発目です。ちなみにチュートリアルはもう少し続きます。
何とか精神的なダメージから立ち直った。正直ぎりぎりだったけど、なんとか立ち直りました。
「それにしても……本当に女の子にしか見えませんね。声も少し低いですが、それはそれで似合ってますし」
「もういいから。ホントもういいから次に進もうよ、ね?」
「八割がたは女の子……。男の娘を超えた男の娘……何と呼べばいいのでしょうか?」
「それ以上は宣戦布告ととるぞ?俺は必要とあれば女子供でも容赦をしない男だ」
「そ、そんなに睨まないでください。結構怖いです」
ユリィをビビらせたあと、キャラメイクの続きに入った。
「えっと、次は種族の決定ですね。人族、獣人族、エルフ、ドワーフ。そしてランダムとありますが」
「んー。やっぱりここはランダムだろ。種族の特徴とかは見たけど……。決定してからスキルとかは決めればいいし」
「ランダムですね、わかりました。ちなみに、ランダムだと超低確率で特殊種族になることがあります。まぁ、あなたの運勢によりますが」
「……この容姿で生まれたことが人生最大の不幸だと思ってるよ。それ以上の不幸はないはず、なら、俺にもチャンスがある!」
うん、そうだったらいいなぁって程度。べ、別にレア種族がほしいわけじゃないんだからね!?
「では、あなたの種族をランダムで決定します。ランダムルーレット、すた~と~!」
「キャラに似合わないことを……」
「うるさいです」
ユリィが無理やり間のある元気な声を上げると、どこからともなくルーレットマシンが出てきた。ふむ、割合的には、人族、獣人族、エルフ、ドワーフがそれぞれ二割四分九厘ほど。特殊種族はたったの一パーセント以下。これは無理だろ……。
くるくると回り続けるルーレットの回転が徐々に小さくなっていき……。
「って、おいおい……まじかぁ……」
「まさか……」
ぴたりと、特殊種族のところで止まった。そして鳴り響くファンファーレ。俺とユリィはポカーンと間抜け面をさらしていた。
「と、とりあえず…おめでとうございます」
「お、おう、ありがとう……しかし特殊種族か……どんなのになったんだろう?」
「確認してみましょうか。えーっと……あ゛」
「おい、なんだそのいや~な感じのする“あ”の発音は」
「いえ、あなたの種族は『カーバンクル』。額に宝石を持ち、その宝石は叡智の結晶と言われる種族です。ありとあらゆる魔法を操り、そして宝石を喰らい力にするといわれています」
「お、強そうな感じがするんだが……何か問題でもあるのか?」
「はい。とりあえず、街に入れません」
……は?街に入れない……?
「カーバンクルは、その希少性と額の宝石に込められた叡智から、他種族すべてから狙われています。カーバンクルを手にしたものが覇権を手にするとまで言われているのです。そんな存在が町にのこのこ入っていったら、どうなると思いますか?」
「その場で即討伐されるってことか?勘弁してくれよ……」
「さらに、ほかのプレイヤーからも討伐対象として見られます」
「はぁ!?な、なんで……」
「カーバンクルは種族的にはモンスターですから、外見は人間ですけど」
「……え?まさかPKされるってこと?」
「はい、しかもPKしたプレイヤーは犯罪者プレイヤーになることはありません。モンスターを討伐しただけですから。ちなみに、カーバンクルは経験値が豊富なモンスターです」
「なんの慰めにもなんないんだが……」
え、えーっと、つまり、俺は街にも入れずプレイヤーに見つかったらモンスターと認識され、そして殺されても文句も言えない……。
「なんだそれー!」
「ええっと…い、いま運営に問い合わせてみます。とりあえず、職業の決定をしておいてください」
ユリィはそう言って右手を耳に当てた。あれで連絡するのか……。
職業かぁ……。魔法を使うのが得意って話だったよな。じゃあ普通に魔法使いにしときますか。ジョブページをっと……。えっと、あったあった、《魔法使い》ってのがそうなのかな?決定。
職業を決めたら、あとは何を決めるんだったか。スキルか。どんなスキルにするかなー。街に入れないとなると、武器とかは調達できないだろうし、なら格闘スキルとか?あとは回復魔法とかか?アイテムも制限されるだろうし……。あー、生産系のスキルもとっといた方がいいかなー……。どうしよう。
「え、えぇ!ちょ、ま、ふざけないでくださっ、あぁ!」
「うお!ど、どうした」
「あのクソ野郎が……っ!丸投げして切りやがった……っ!」
「落ち着け落ち着け、どうどう」
無表情な人の怒りって怖い。だって声は荒上げてるのに、表情は全く変わんないんだぜ?
何回か深呼吸をした後、何とか落ち着いたユリィ。なんだか疲れた感じである。運営の人との会話はそんなに疲れるものなのだろうか?
「それで、どうなったんだ?」
「それが……カーバンクルはもともとプレイヤーの種族にはならないように設定されていたらしいんですが、ゴミく……もとい、開発者の一人が面白がって一枠だけ作ったそうです。ものすごい低確率に設定されていたから、ほっといたそうなんですが……」
「それを俺がものの見事に引いてしまった、と」
「そういうことになりますね……申し訳ございません」
「ユリィさんが誤ることじゃない。その開発者とやらが悪いんだろ?ま、そういう縛りプレイだと思って頑張るさ」
うん、そう思えばなかなか面白いじゃないか。難易度が高いほどゲームは面白くなる。ヌルゲーなんてつまらない。
「それに、ユリィさんはやれることはやってくれた。それだけでもありがたいのに、俺のために怒ってくれただろ?それで、十分だよ」
「……そ、そうですか………………無自覚なんでしょうか、これ?」
あれ、気にしなくていいってことを伝えたかったのだが……。どうしてユリィさんはそっぽを向いているのだろうか?薄水色の髪からのぞく耳が赤くなってるから、怒ってるのか?最後のほうでぼそぼそ言ってたのは……はっ、まさか罵倒!?俺はMじゃないからうれしくないぞ。
それにしても……いや、ほんと今更なんだが………ユリィさんって、すごく人間っぽい。もう不気味の谷超えてる感じがする。無表情だからロボットっぽいかと思ったけど、感情が表に出ないだけで、感情豊かだし。
ま、ユリィさんがAIか人間か、なんてどうでもいいか。どっちにしろいい人っぽいのは間違いないし。
「ふぅ……さて、こうして迷惑をかけてしまったあなたに、お詫びとしていくつか便宜を図ることになりました。とりあえず、スキルを決めてしまってください。あ、スキルは五つまでです」
「わかった。とりあえず、魔法系をふたつ。あとは回復魔法と格闘スキル。もう一つは生産系のスキルにしようと思うんだが、どうだ?」
「いいんじゃないでしょうか?カーバンクルの特性を生かせると思いますよ。格闘スキルは近接戦闘用ですか?」
「ああ、街に入れないということは、武器の入手も困難になるだろ?なら武器のいらない格闘にしようと思ってな。あ、でも魔法使うのに杖とかいるのか?」
「あ、カーバンクルには不要です」
「ならよかった。魔法スキルは……。風魔法と土魔法にするかな。で、生産系のスキルだけど…」
「それなら、錬金術のスキルはどうでしょうか?錬金術は器用のステータスよりも知のステータスが優先されます」
ユリィさんからの助言をもらい、スキルを決めていく。風魔法、土魔法、生命魔法、格闘術、錬金術の五つだ。
スキルを決め、決定ボタンに触れると、タブレットが消え去った。
「スキルが決定しましたね。では、最後に、あなたのディストピアでの名前を決めてください」
名前か……。そうだな、単純にシノノメでもいいんだけど、それじゃあ面白みがないから……。
「アカツキ」
「アカツキ様ですね。わかりました。これでキャラメイクを終わります。確認としてステータスを閲覧してください。ステータス、とつぶやけば表示されます」
ユリィの指示に従って、「ステータス」とつぶやく。眼前に表示された、半透明で厚さのない、板のようなもの。そこには、こう書かれていた。
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名前 アカツキ 性別 男 種族 カーバンクル 職業 魔法使い
レベル 1
HP 100
MP 150
力 3
物防 3
知 8
魔耐 8
速 4
器用 4
SP 0
スキル
[風魔法Lv1][土魔法Lv1][生命魔法Lv1][格闘術Lv1][錬金術Lv1](上限数10)
称号
[叡智の宝石][白百合姫の主]
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…………あれ?いつの間に称号なんてついたんだ?
ステータスの合計値ですが、通常種族が20。レア種族が25。主人公のカーバンクルはユニーク種族なので30です。
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