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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
29/62

2-6 夜桜の戦闘と彼女たちの実力 さぁ! お兄ちゃんに私たちの強さを見せつけるよ!

遅くなりまして申し訳ございません。

「自分の容姿がどこからどうみても女の子だからって、可愛いとか言われたら普通に傷つくから! そう言うこと言わない! 分かったか?」

「「「「「「そうやって起こってる姿も可愛い」」」」」」

「だーかーらー!」


 なにやら恥ずかしい演説をしてしまったあと、こうやってギルド『夜桜』の面々とユリィにいじられている。打ち解けているのは良いけど、こういうのは求めていなかったなぁ……。まぁ、皆悪気があるわけじゃなくて、純粋にそう思ってるだけなんだろうけど。


「まったく……」

「くっくっく。そう怒りなさんなって」

「別に怒ってはいない。言われまくってるから、もうなれた」

「……アカツキ。元気出して?」

「……うん、ありがとう。でもお前も言ってたからな?」


 ……シズカさんの視線を受けると、背筋が寒くなるのはなぜだろうか? 向けられる鋭い視線に、冷や汗が出てきてしまう。


 その後、サーヤの提案で、夜桜の皆の狩りについていくことになった。パーティーに加わることができないと告げると、悲しげな反応をされたのが心をえぐる。………さっさと黒鉄竜のやつを倒さないとな。いつまでもサーヤの優しさに甘えていたら、兄として示しがつかないからな。


「さぁ! お兄ちゃんに、わたしたちの強さを見せつけるよ!」

「おー? サーヤやる気一杯だね! よーし、アタシも頑張るよー!」

「わたくしの魔法の腕を、お兄様にお見せしますわ!」


 年少組は元気いっぱいという感じで、武器を振り上げている。微妙に危ないからやめなさい。


 サーヤ以外の二人……ミーナは全身鎧を着て、大楯と騎乗槍を装備している。うん、ミーナの元気さとあの重装備。暴走する大型トラックが頭に浮かんだのは俺だけではあるまい。


 そして、レイカ。レイカは闇色のフリル満載の、ノースリーブゴスロリドレス。ふんわりと広がったスカートや露出した肩がかわいらしい。魔法を使うのに必要な魔法発動体は、両手にはめられた肘まである手袋の甲に縫い付けられた結晶体らしい。


 自分の身に着けている初期装備もダサいとは言わないが、シンプルすぎる。やっぱりゲームの装備品はかっこいい方がいい。ユリィのメイド服は、変更することもできるらしいが、メイド服以外だとステータスに制限がかかるとか。誰だそんなアホな仕様にしたやつ。


「そういえば、サーヤたちの装備は、誰が作ってるんだ? かなりセンスのいい職人さんが作ってるんだろうけど」

「……照れる」

「…………えっ、クロさんが作ってたの?」

「……そう、私は生産職。[錬金術]以外の生産スキルは全部取ってる」


 そういって胸をはるクロさん。彼女の大きな胸がふるんと弾んだのを見て、そっと視線をそらす。男を絶対におとすリーサルウェポンをお持ちとは、卑怯なり。あと、妙に冷たい視線が二方向から送られてくるんですが、気のせいですよね?


 そんな風にわいわいとしながら安らぎの草原を進むこと数分。俺たちの前に姿を現したのは、十匹ほどの獣型モンスターの群れ。兎、鹿、羊、サイ………サイ? 若干一匹おかしな奴もいるが、そういうものなのだと納得する。


 俺とユリィは、見学組なので、手出しはせずに見守っている。


「兎がスモールラビットで、鹿はスローディア。羊がスリープシープ。サイはラッシュライノっていう名前らしい」

「本当の便利ですね、そのスキル」

「そうだな。でも、まだまだ持て余してるって感じだよ。ちゃんと使いこなせれば、もっともっと強力な武器になるはずだ」

「そうですか。……あ、始まります!」


 [叡智]を使ってモンスターの名前を調べていると、対峙していた夜桜とモンスターたちが動き始めた。


「よっしゃぁ! いっくよぉー、【挑発】!」


 最初に動きを見せたのはミーナ。大楯をどっしり構えて、何かのアーツを発動させる。名前からして敵の注目を集める効果を持つアーツだろうか?


 それに反応したのは、一匹だけ空気の読めていないモンスター、ラッシュライノ。地面を踏みしめながら、ミーナに向かって突進してくる。ビッグボアほどではないが、重量感のあるラッシュライノの突進は、なかなか迫力があるものだろう。


「おりゃーー!!」


 だが、ミーナはそんなもの知るかとばかりに、ラッシュライノの突進を真正面から受け止める。衝撃を受け流したりはせず、突進のすべてを大楯で受けきっていた。俺だったらあのまま吹き飛ばされてお陀仏だというのに、すごい耐久力だ。


「ミーナ、そのまま抑えておけ……よっと!」


 ミーナに止められているラッシュライノの脇を、朱色が駆け抜ける。それとともに宙に銀線が描かれ、ラッシュライノの右前脚が切断された。電光石火の早業を見せてくれたのは、シズカさん。口元に獰猛な笑みを浮かべながら、高速で刀を振るう。一見、適当に放たれているように見える斬撃は、そのすべてがラッシュライノの堅い革の隙間を切り裂いている。


「ふっふー。ギルマスの邪魔はさせないよ! それっ」


 ラッシュライノに斬撃を見舞うシズカさんに攻撃を仕掛けようとしたスモールラビットの背中に、ナイフが突き立てられる。どこからともなく飛んできたそれは、スローディアにヒット&アウェイを繰り返しているサーヤが投擲したもの。


「よーし、この鹿を先に倒しちゃって………って、おわっ!」

「……気を付ける」

「ご、ごめんなさーい」


 ナイフの投擲の隙をついて、スローディアが角で救い上げるような攻撃をサーヤに繰り出す。それを阻止したのは、クロさんの狙撃。クロさんの武器は小型のボウガン。それが二丁、正確無比な狙撃は夜桜のメンバーに攻撃しようとしたモンスターの動きを的確に邪魔する。


 最初に沈んだのは、ミーナとシズカさんの二人からタコ殴りにされていたラッシュライノ。体中に切り傷を作り、最後は騎乗槍の一撃で沈んだ。


「皆さま、準備できましたわ!」


 ラッシュライノが粒子に変換された数瞬後、後方で魔法の準備をしていたレイカがそう声を上げた。前衛として戦っていた三人は目の前の敵に一撃を加えると、素早く後衛のそばに移動する。


「――――【炎柱林】」


 放たれたのは、吹きあがる炎の柱。それがモンスターたちにがいる場所を蹂躙する。何本もの柱はモンスターの体を包み込み、そのHPを消し飛ばした。


 戦闘終了。敵との数の差は倍はあったというのに、まったくもって苦戦する様子がなかった。こっそり用意していたポーションが無駄になったじゃないか、まったく。


 ミーナの防御力、シズカさんの高速の斬撃、サーヤの援護と不意を突いた攻撃、クロさんの狙撃、レイカの魔法。まるで歯車のように一つ一つがかみ合っていて、『夜桜』の強さというものを十分に見せつけられた。


 連携、そして、メンバー同士の信頼関係がとても厚いことがわかる。お互いが相手を信じているからこそできる戦い方だった。勝利した彼女たちは、笑顔を浮かべながら、五人でハイタッチをしている。


 彼女たちのその様子は、なぜだか、とてもまぶしく見えたのだった。


 

さて、作者がリアルでテスト週間に入りますので、更新速度が二日に一回になります。テストが終わり次第もとの更新速度に戻します。

次回更新は日曜日です。

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