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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
魔導と初イベント
28/62

2-5 夜桜とアカツキの考え まぁ、その通りなんだが……

SAOの映画が始まりますね。まぁ、作者はテスト週間に突入するので見に行けないのですが((´;ω;`))

 テイルさんたちのパーティー(名前は『赤鋼団』というらしい)と、フレンド交換した後別れた。約一名を除けば普通に好感を持てる人たちだったので、知り合えたことは素直にうれしい。また情報交換やらなんやらをしようと言ってくれた。とくに、マヨイさんとは同じ魔法職どうし、いろいろと語り合うことができるだろう。


 ビッグボアとの戦闘のことや、いろいろ気になることはあっただろうに、それでも深く追求してくることもなかった。これもまぁ、約一名を除くが。赤鋼団とは仲良くやっていけそうだ。


 ……約一名を除いて……な。


 そういえば、ビッグボアとの戦闘で[土魔法]のレベルが二十を超えていた。新しく習得した魔法は、【縛土】という拘束系の魔法だった。土魔法は攻撃系の魔法は少ないのか? まぁ、後方でいろいろやるのが俺の役目だからな。そういう意味じゃ、この魔法はかなり適任な魔法と言えるだろう。


「そうだ、お兄ちゃん。わたしのギルメンがファストの近くで待ってるんだって。みんなにお兄ちゃんを紹介したら、あってみたいって言ってさ」

「あってくれってことか? まぁ、お前がお世話になってる人たちなら、挨拶の一つでもしておかないとな。ユリィも、いいか?」

「もちろんです。サーヤさんの仲間なら、さっきのアレのような輩はいないでしょうし」

「いや、あそこまでひどいのはそうそういないと思うよ? 正直アレはひどすぎる」

「テイルさんも大変だよなー。まぁ、他のメンバーが普通にいい人ばかりだから、大丈夫だろ」


 二人にもアレ扱いされるアネスとやらが哀れに思えたが、自業自得なので気にしないことにする。赤鋼団の面々に、心の中でがんばれとエールを送っておく。


 途中で何度か襲撃はあったが、特に苦もなく撃退することができた。チュートリアルでボッコボコにした兎も出てきたが、魔法を使うことなく倒せてしまった。ホントに雑魚だったんだな、こいつ。


 そうして進むこと一時間。途中で【風衣】で行軍速度を上げることを思いついたため、かなり時間を短縮できた。


「ん……? あの外壁……。あれがファストか」


 遠目に町の外壁が見え始めた。本当ならあそこからスタートするはずだったんだけどなぁ……。と、遠い目をしていると、正面からこちらに向かってくる人影が見えた。人数は四人。全員が女の子だった。それに気が付いたサーヤが、俺のローブの裾を引っ張って、うれしそうな声を上げる。


「お兄ちゃん、皆だよ! わたしのギルメンのみんな!」

「へぇ、あの人たちがそうなのか」

「うん! おーい、みんなーっ!」


 サーヤが大きな声で呼びかけながら、四人のほうに駆け寄っていく。その無邪気さに、ユリィと二人、どこか暖かな気持ちになりながらそのあとを追う。


 距離が近くなれば、サーヤのギルドメンバーの容姿も確認できるようになってきた。一番背の高い、和服姿の黒髪の女性。赤髪ショートの元気っ娘。金髪縦ロールのお嬢様風の少女。水色のセミロングで巨乳なポヤッとした感じの少女。全員が全員、美少女や美女と言っていいほど容姿が整っている。


「お。お前さんがサーヤの兄貴か? 初めまして、あたしはギルド『夜桜』のギルドマスターをやらしてもらっている、シズカだ。よろしくな」


 最初に話しかけてきたのは、シズカと名乗った黒髪の和服美人だった。腰に差しているのは、朱色の鞘に納められた日本刀。男勝りなしゃべり方や、ギラギラとした鋭い眼光から、豪快な印象を受ける。


「初めまして、サーヤお姉さまのお兄様。わたくしはレイカと申します。よろしくですわ」


 そういって優雅なカーテシーを披露したのは、金髪縦ロールの娘。この中では最年少だろうか? いかにもお嬢様という話し方をしている。所作に特有の洗練された動きがみられることから、リアルでもお嬢様なのかもしれない。


「アタシはミーナ! サーヤの友達だよ。よろしくね、お兄さん」


 元気いっぱいといった様子で自己紹介をしたのは、赤髪ショートの少女。はじけるような笑顔が特徴的だ。見ていると、こちらまで明るくなれそうだ。ギルドのムードメーカー的な存在なのだろう。


「……クロ。よろしく」


 ポツリとつぶやくように簡潔極まる自己紹介したのは、眠たげに目を細めた少女。全体的にダウナーな雰囲気をしているが、その胸部装甲は凶悪極まりない。彼女が少し身動ぎしただけで、ふるんと揺れている。


「こちらこそ。俺はアカツキ。知っての通り、サーヤの兄だ。それで、こっちが……」

「ユリィです。アカツキ様のメイドをしております。皆さま、よろしくお願いします」


 そう自己紹介を返すと、四人は「?」という顔をして、ユリィのことを見ていた。


「メイドだと?」

「メイドですわね」

「メイドさんだぁ」

「……メイド?」


 ……まぁ、驚くわな。俺付きのメイドって時点でいろいろおかしいし。そして、ユリィが「アカツキ様のメイド」といった後の俺に向けられる皆の視線が少し冷たいような気がするのは気のせいだろうか? 


「……そういうプレイ?」


 俺のほうをじっと見ていたクロさんが、とんでもないことをポツリとつぶやいた。ポヤポヤした感じなのに、言葉の切れ味は抜群すぎる。俺に向けられる視線の温度がもう一度下がったのを感じた。


「いやいや、とんでもないことを言わないでくれ」

「……じゃあ、アカツキの趣味?」

「違うわ」


 クロさんは、俺が憮然とした表情を浮かべているのを見ると、口元に小さく笑みを浮かべた。


「……冗談」


 ……わかりにくい冗談もあったものだ。それに、心臓に悪い。


「くくくっ、さすがクロ。容赦がねぇな。まぁ、そういうロールプレイってことだろ? ここは仮想現実。大体のことは許されるってもんよ。本人がいやがるどころか進んでやってるみてぇだし、それを否定する気はねぇよ」

「アカツキ様はお優しい方ですから。私がいやがることなどいたしませんよ」

「信頼されてるねぇ、御主人サマ?」

「ま、その信頼を裏切るようなことはしていないよ。そこは信用してくれるとうれしい」

「……セクハラはしてたけどね」


 俺にだけ聞こえるようにつぶやかれたサーヤの言葉に、冷や汗が垂れる。寝ぼけてたとはいえ、ユリィの胸の感触を味わっていたのはまぎれもない事実だ。怒られて当然だろう。しかし……今度、ご機嫌取りに何かプレゼントでもするかな。うん、そうしよう。


 俺がそうひっそりと心に誓っていると、ローブがちょんっと惹かれた。そちらに目を向けると、じいっと俺の顔を覗き込むミーナとレイカがいた。


「それにしても、お兄さんってホント女の子みたいだよねー。正直、アタシより可愛いかも……」

「そうですわね。これで殿方だとおっしゃるのですから……少し、女としての自信を無くしますわ」

「……まぁ、初対面では大抵そういわれるよ。リアルのほうでは前髪で顔を隠してるんだがな」


 ミーナとレイカの言葉にそう返すと、二人はきょとんという顔をした。


「じゃあ……なんでアバターは顔を出してるの? ゲームでも顔を隠せばいいじゃん」

「そうですわね。可愛いといわれることはあまり好きではないようですし……」

「うーん、まぁ、その通りなんだが……」


 俺が少し言葉を濁すと、ユリィとサーヤが、そういえばわたしも気になっていた、と話に参加してきた。それにつられるようにシズカさんとクロさんも耳を傾けている。これは強制的に話さなくてはいけない雰囲気だな……。ま、隠すようなことでもない……か。


 この場にいる俺以外の全員からの注目を浴びながら、俺は、少し考えてから、ゆっくりと口を開いた。


「……別に、大した理由があるわけじゃないんだ。シズカさんが言ったように、ここは仮想現実。なら、リアルではできないことをやってもいいだろ? ……それに、隠すって言うのも結構大変なんだ。人と関係を持とうとしても、隠し事があるっていう罪悪感がある。その罪悪感を抱いたまま他人と付き合うことは不可能だった。もちろん、顔を隠さずにいた時もあったぞ?」


 その場合、手に入ったのはトラブルに愛され過ぎた日常だけだった。周りにいた人にも迷惑が掛かったこともあった。……そんなことになるくらいなら、すべてを隠そうと思っただけだ。


「でも、ここなら。この世界なら『自分』を隠さなくてもいいかって思ったんだ。いろいろ言われたりするだろうけど、そう言うのも全部含めて、『自分』なんだからさ。それくらいは我慢して受け入れるよ。いつまでも隠したまんまじゃいられないだろうしな。ま、一応否定はするぞ? 俺に女に間違えられて喜ぶ趣味はないからな」


 少し熱くなって語ったことが恥ずかしくなり、最後は冗談めかした言い方になった。「まぁ、そういうわけだ」と締めくくり、皆の反応を見る。


「へぇ、なかなかいいことを言うじゃねぇか、アカツキ。気に入ったぜ」

「なんかよくわかんないけど、お兄さん、すごーい」

「自分を偽ることは、罪悪感を伴うこと……ですか。確かに、お兄様はすごいです」

「……アカツキ、えらい」

「お兄ちゃんはそのままが一番いいよ。うん。可愛くって、でもかっこよくて……。それが、わたしのお兄ちゃん!」

「アカツキ様。私は、アカツキ様のメイドですから。どんなアカツキ様だろうと、その事実は変わりませんよ」


 皆は口々にそういった。まっすぐに向けられる六つの視線に、気恥ずかしさを感じて顔が赤くなってしまう。それをごまかすようにさっとうつむく。


「くくくっ、恥ずかしがるアカツキは、可愛さが一段と増すなぁ」

「お兄さん、照れてる?」

「お兄様のその姿は、いろいろと反則だと思います」

「……ぐっじょぶ」

「かわいーよ、お兄ちゃん♪」

「照れたアカツキ様……。抱っこしたいです」


 にやにやとしながら、口々に可愛いといわれ、俺の羞恥心が限界を迎える。さっき「我慢して受け入れる」といったことを若干後悔しながら、力の限り叫ぶのだった。



「……ああ、もう! 可愛いって言うなぁあああああっ!!!」



 

今回のテスト落とすと留年でっす♪



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