21 エピローグてきな何かと黒幕的な何か
一章終了です。章分けはまたやっときます。
《緊急クエスト「ゴブリンの強襲」がクリアされました。報酬はクエストに参加したプレイヤーすべてに配布されます。また、報酬のランクは貢献度によって変化します。
プレイヤーの皆さま、クエストクリア、おめでとうございます》
《試練クエストが達成されました。挑戦者アカツキに報酬が送られます》
《『洞窟の神』からアカツキへ、5SPが与えられました》
そんなアナウンスが頭の中で流れる。それを聞いた途端、体中から力が抜けてしまい、土のごつごつした感触も気にせずに、その場に倒れるようにして寝ころんだ。
……いやぁ、うまくいってよかった。ぶっつけ本番にもほどがあったが、何とか成功したみたいだ。オリジナル魔法、【翠砲】は。
オリジナルと言っても、ギドベグが使った魔力の砲撃を再現してみたものだし。魔力を大量にロスして無理やり発動させた感があるが……そこは、結果オーライということでいいだろう。多少の無茶はあったにしても、だ。
「うう……魔力の無茶な使い方したから頭痛い……」
その代償が、この頭痛だけだというのなら、合格点くらいはあげてもいいんじゃないだろうか? そんな風に自画自賛していると、走り寄ってくる足音が聞こえてきた。そちらを見なくても、誰なのかすぐにわかる。
「ユリィ、おつかれー……」
「完全に溶けてらっしゃる!? 大丈夫なのですか、アカツキ様?」
「おれはだいじょうぶ~。ゆりぃは~?」
「……気が抜けてだらけてるだけですか。私も、大丈夫ですよ」
ユリィはそういうと、俺のそばに腰を下ろして、近くにあった俺の頭をその膝に乗せた。膝枕テイクツーである。
「ユリィ?」
「いいんですよ。アカツキ様はゆっくり休んでくださいね」
「うう……悪いな。なんかユリィにばかり負担をかけている気がする。俺ももっとしっかりしないとな……」
「ふふっ、私はこうやってるのが楽しいんですから。アカツキ様の可愛いお姿も見れますしね」
「可愛いって言うな。……ま、今はいいや……」
もう、反論する気力も残っていない。想像以上に[瞑想]で回復しながら魔力を使うのは、脳に直接的なダメージがあった。
ユリィの太ももの柔らかな感触を感じながら、そっと目を閉じる。瞼の裏に映るのは、ユリィが最後に使った固有魔法の、紅光の輝き。鮮烈に視界を埋め尽くしたそれと、それを背に受けるユリィ。幻想的で、まさしく神話のような光景だった。
俺が降り立ったこの世界。神話世界ディストピア。
この世界で紡ぐ、俺の、俺だけの神話。その物語は―――
―――――俺とユリィ、二人で描けるものになるといいな。
そう、心の底から思った。
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「うわお、これは予想外。まさか本当に二人でクリアするなんて思わなかったな」
暗い部屋の中、光を放つモニターだけが唯一の光源である部屋で、キャスター付きの椅子に座った青年が、誰に聞かせるのでもなくそうつぶやいた。
「真白は相変わらずだけど……。この子もすごいな。魔力の直接運用、詠唱の変改、素材性質の組み合わせ、魔力枯渇と回復の繰り返し。そして、つたないとはいえ、魔導まで使うか……。下手したら、真白以上の……」
ぶつぶつとつぶやいていた青年は、モニターに映った光景を見て、にやりと笑みを浮かべる。
「まぁ、何より、真白がこんなに他人になついているのを見るのは驚きだよ。あの堅物が、初対面から普通に会話できてたってだけで驚愕なのに……」
青年が見つめるモニターには、緩やかに過ごすアカツキとユリィの姿が映し出されていた。
「……いや、驚くんじゃなくて、喜ぶべきかな? やっと真白が心を開ける相手が見つかったんだ。逃がさないからね、アカツキ君?」
青年は左手をピストルの形にすると、モニターのアカツキに銃口を向けて、「バンッ」と引き金を引いた。捕まえたとでも言うかのように……。
「さてと、あの二人の仲を深めるために、いろいろとやらなくちゃねっと。……人の絆は、困難の中でこそ強くなる……ってね」
青年はそういうと、キーボードを高速でタイピングし始めた。その口元に浮かぶ笑み。
三日月形に裂けたそれは、死神の鎌のように見えるのだった。
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まどろみにはまっていた意識が、少しだけ浮上する。薄目を開けるが、森の緑と空の青が、ぼんやりと写るだけだった。
……ん? なんか、ドタバタって聞こえるんだけど……?
覚醒しきっていない意識で、遠くに聞こえる音のことを考える。えっと、確か俺は……何してたんだっけ? んー……。まぁ、いっか……。
後頭部に感じるやわらかさが気持ち良いのと、頭がボーっとしていてまるで働かないのがあいまって、もう一度まどろみの中に逃げ込もうとする俺。そんな俺の耳を、叫び声が打った。なんか、聞き覚えがあるきがするぅ……。
「あっ! お兄ちゃんだ! おーーーぉぉい? ……ぉおおおおおおいっ!!」
どたどたと地面をうつ足音。慌てたような声。何か致命的なことが起こっている気がするが、今の俺はそれを気にも留めなかった。ただこの心地よいまどろみから抜けたくなくて、声から逃げるように後退する。
ずるずると背中で這うようにして後ろに下がると、すぐに何かにぶつかった。なんだろー……。あったかくて、やわらかい……?
額に感じるやわやわしたものの正体を確かめるように、顔をそれにこすり付けるして動かす。ぽよぽよしてるなぁ……。
「お、おおおおお兄ちゃん!? な、何堂々とセクハラを………。ま、まさか、寝ぼけてるの?」
「んー……? あー、サーヤぁ? ……どうしたぁ?」
「完全に寝ぼけてらっしゃる!? お兄ちゃん! 目を覚まして! ユリィさんも!」
「ん………ふぁ……。さーやさん? ………どうしたんです………………。な、ななななん! あ、アカツキ様!?」
あれ? ユリィの声も聞こえる……。なんか、恥ずかしそうな、怒ってるような声………。結構近くから聞こえるけど……………ん?
膝枕、額に感じる柔らかな感触、サーヤの慌てたような声。そして、ユリィの羞恥と怒りの混ざった声。
それらのキーワードが頭の中でぐるぐる回り、意識がだんだんとはっきりしてくる。ぼやけていた視界も鮮明なものになる。そして、目に映ったのは真っ赤に頬を染め、涙目でこちらを見下ろしているユリィと、笑っていない笑顔という矛盾した表情を浮かべたサーヤの姿。
と、言うことは……この、俺が感じていた柔らかな感触の正体は………。
「お兄ちゃん………? クエストのアナウンス聞いて、お兄ちゃんが巻き込まれてると思って急いで着てみたら、なにユリィさんにセクハラかましてるのかな………?」
「あ、アカツキ様が…私のむ、むむむむむね……をぉ……」
「あ、いや……これは………ね、寝ぼけてたというかなんと言うか…」
拳を固めて迫ってくるサーヤ。ユリィは羞恥で混乱しきっているが、俺の体を拘束するように腕を絡めてくる。
「変態お兄ちゃんには、お仕置きが必要だね♪」
「あ、アカツキ様の………えっち」
「え、ちょ、ま………ご、ごめんなさぁあああああああああああい!!」
ベキ、グシャ。ドゴォオオオオオ!!
何かが折れる音に、つぶれる音。そして、俺の悲鳴が、静謐な森の中に、響き渡るのだった……。
し、しまらんなぁ……。
一章終了時のアカツキのステータス
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名前 アカツキ 性別 男 種族 カーバンクル 職業 魔法使い
レベル 5→25
HP 150→350
MP 300→900
力 3
物防 3
知 18→58
魔耐 8
速 4
器用 4
SP 0→40→0→5
スキル
[風魔法Lv9→34][土魔法Lv9→18][生命魔法Lv1][格闘術Lv6→13][錬金術Lv1→25][遅延Lv11→32][瞑想Lv8](上限数10)
称号
[叡智の宝石][白百合姫の主][挑戦者]
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ステータスは結構適当です。一応HPとMPの上昇量は規則があります。
次回は閑話になると思います。
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