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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
ゲームの始まりと白きメイド
21/62

21 エピローグてきな何かと黒幕的な何か 

一章終了です。章分けはまたやっときます。

《緊急クエスト「ゴブリンの強襲」がクリアされました。報酬はクエストに参加したプレイヤーすべてに配布されます。また、報酬のランクは貢献度によって変化します。

 プレイヤーの皆さま、クエストクリア、おめでとうございます》


《試練クエストが達成されました。挑戦者アカツキに報酬が送られます》


《『洞窟の神』からアカツキへ、5SPが与えられました》


 そんなアナウンスが頭の中で流れる。それを聞いた途端、体中から力が抜けてしまい、土のごつごつした感触も気にせずに、その場に倒れるようにして寝ころんだ。


 ……いやぁ、うまくいってよかった。ぶっつけ本番にもほどがあったが、何とか成功したみたいだ。オリジナル魔法(・・・・・・・)、【翠砲】は。


 オリジナルと言っても、ギドベグが使った魔力の砲撃を再現してみたものだし。魔力を大量にロスして無理やり発動させた感があるが……そこは、結果オーライということでいいだろう。多少の無茶はあったにしても、だ。


「うう……魔力の無茶な使い方したから頭痛い……」


 その代償が、この頭痛だけだというのなら、合格点くらいはあげてもいいんじゃないだろうか? そんな風に自画自賛していると、走り寄ってくる足音が聞こえてきた。そちらを見なくても、誰なのかすぐにわかる。


「ユリィ、おつかれー……」

「完全に溶けてらっしゃる!? 大丈夫なのですか、アカツキ様?」

「おれはだいじょうぶ~。ゆりぃは~?」

「……気が抜けてだらけてるだけですか。私も、大丈夫ですよ」


 ユリィはそういうと、俺のそばに腰を下ろして、近くにあった俺の頭をその膝に乗せた。膝枕テイクツーである。


「ユリィ?」

「いいんですよ。アカツキ様はゆっくり休んでくださいね」

「うう……悪いな。なんかユリィにばかり負担をかけている気がする。俺ももっとしっかりしないとな……」

「ふふっ、私はこうやってるのが楽しいんですから。アカツキ様の可愛いお姿も見れますしね」

「可愛いって言うな。……ま、今はいいや……」


 もう、反論する気力も残っていない。想像以上に[瞑想]で回復しながら魔力を使うのは、脳に直接的なダメージがあった。


 ユリィの太ももの柔らかな感触を感じながら、そっと目を閉じる。瞼の裏に映るのは、ユリィが最後に使った固有魔法の、紅光の輝き。鮮烈に視界を埋め尽くしたそれと、それを背に受けるユリィ。幻想的で、まさしく神話のような光景だった。


 俺が降り立ったこの世界。神話世界ディストピア。


 この世界で紡ぐ、俺の、俺だけの神話。その物語は―――



 ―――――俺とユリィ、二人で描けるものになるといいな。



 そう、心の底から思った。



 ===========================



「うわお、これは予想外。まさか本当に二人でクリアするなんて思わなかったな」


 暗い部屋の中、光を放つモニターだけが唯一の光源である部屋で、キャスター付きの椅子に座った青年が、誰に聞かせるのでもなくそうつぶやいた。


「真白は相変わらずだけど……。この子もすごいな。魔力の直接運用、詠唱の変改、素材性質の組み合わせ、魔力枯渇と回復の繰り返し。そして、つたないとはいえ、魔導まで使うか……。下手したら、真白以上の……」


 ぶつぶつとつぶやいていた青年は、モニターに映った光景を見て、にやりと笑みを浮かべる。


「まぁ、何より、真白がこんなに他人になついているのを見るのは驚きだよ。あの堅物が、初対面から普通に会話できてたってだけで驚愕なのに……」


 青年が見つめるモニターには、緩やかに過ごすアカツキとユリィの姿が映し出されていた。


「……いや、驚くんじゃなくて、喜ぶべきかな? やっと真白が心を開ける相手が見つかったんだ。逃がさないからね、アカツキ君?」


 青年は左手をピストルの形にすると、モニターのアカツキに銃口を向けて、「バンッ」と引き金を引いた。捕まえた(チェックメイト)とでも言うかのように……。



「さてと、あの二人の仲を深めるために、いろいろとやらなくちゃねっと。……人の絆は、困難の中でこそ強くなる……ってね」


青年はそういうと、キーボードを高速でタイピングし始めた。その口元に浮かぶ笑み。


 三日月形に裂けたそれは、死神の鎌のように見えるのだった。



=============================





 まどろみにはまっていた意識が、少しだけ浮上する。薄目を開けるが、森の緑と空の青が、ぼんやりと写るだけだった。


 ……ん? なんか、ドタバタって聞こえるんだけど……?


 覚醒しきっていない意識で、遠くに聞こえる音のことを考える。えっと、確か俺は……何してたんだっけ? んー……。まぁ、いっか……。


 後頭部に感じるやわらかさが気持ち良いのと、頭がボーっとしていてまるで働かないのがあいまって、もう一度まどろみの中に逃げ込もうとする俺。そんな俺の耳を、叫び声が打った。なんか、聞き覚えがあるきがするぅ……。


「あっ! お兄ちゃんだ! おーーーぉぉい? ……ぉおおおおおおいっ!!」


 どたどたと地面をうつ足音。慌てたような声。何か致命的なことが起こっている気がするが、今の俺はそれを気にも留めなかった。ただこの心地よいまどろみから抜けたくなくて、声から逃げるように後退する。


 ずるずると背中で這うようにして後ろに下がると、すぐに何かにぶつかった。なんだろー……。あったかくて、やわらかい……?


 額に感じるやわやわしたものの正体を確かめるように、顔をそれにこすり付けるして動かす。ぽよぽよしてるなぁ……。


「お、おおおおお兄ちゃん!? な、何堂々とセクハラを………。ま、まさか、寝ぼけてるの?」

「んー……? あー、サーヤぁ? ……どうしたぁ?」

「完全に寝ぼけてらっしゃる!? お兄ちゃん! 目を覚まして! ユリィさんも!」

「ん………ふぁ……。さーやさん? ………どうしたんです………………。な、ななななん! あ、アカツキ様!?」


 あれ? ユリィの声も聞こえる……。なんか、恥ずかしそうな、怒ってるような声………。結構近くから聞こえるけど……………ん?


 膝枕、額に感じる柔らかな感触、サーヤの慌てたような声。そして、ユリィの羞恥と怒りの混ざった声。


 それらのキーワードが頭の中でぐるぐる回り、意識がだんだんとはっきりしてくる。ぼやけていた視界も鮮明なものになる。そして、目に映ったのは真っ赤に頬を染め、涙目でこちらを見下ろしているユリィと、笑っていない笑顔という矛盾した表情を浮かべたサーヤの姿。


 と、言うことは……この、俺が感じていた柔らかな感触の正体は………。


「お兄ちゃん………? クエストのアナウンス聞いて、お兄ちゃんが巻き込まれてると思って急いで着てみたら、なにユリィさんにセクハラかましてるのかな………?」

「あ、アカツキ様が…私のむ、むむむむむね……をぉ……」

「あ、いや……これは………ね、寝ぼけてたというかなんと言うか…」


 拳を固めて迫ってくるサーヤ。ユリィは羞恥で混乱しきっているが、俺の体を拘束するように腕を絡めてくる。


「変態お兄ちゃんには、お仕置きが必要だね♪」

「あ、アカツキ様の………えっち」


「え、ちょ、ま………ご、ごめんなさぁあああああああああああい!!」


 ベキ、グシャ。ドゴォオオオオオ!!


 何かが折れる音に、つぶれる音。そして、俺の悲鳴が、静謐な森の中に、響き渡るのだった……。






 し、しまらんなぁ……。









 一章終了時のアカツキのステータス



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 名前 アカツキ  性別 男  種族 カーバンクル  職業 魔法使い


 レベル 5→25


 HP 150→350

 MP 300→900

 力 3

 物防 3

 知 18→58

 魔耐 8

 速 4

 器用 4

 SP 0→40→0→5


 スキル 

[風魔法Lv9→34][土魔法Lv9→18][生命魔法Lv1][格闘術Lv6→13][錬金術Lv1→25][遅延Lv11→32][瞑想Lv8](上限数10)


 称号

[叡智の宝石][白百合姫の主][挑戦者]



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



ステータスは結構適当です。一応HPとMPの上昇量は規則があります。


次回は閑話になると思います。



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