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不幸で幸福な仮想世界で 『神話世界オンライン』  作者: 原初
ゲームの始まりと白きメイド
18/62

18 作戦と神の試練 最後の最後で運がない……。

ゴブリン戦。もうちょっと続きます。

「……っあぁあああああああ。しんどいわぁ……。魔力の枯渇と回復を繰り返すのって、こんな拷問じみてたのかよ……。あ。でもレベルめっちゃ上がった。今のだけで5も上がったわ」

「私のレベルも上がってます。えっと……23になりました」

「お、ちょうど一緒じゃないか。俺も23レベルだ。お揃いだな?」

「お揃い……ふふっ、そうですね」


 そんな風に、のんきな会話をしている俺とユリィは、まだゴブリンの集落の上、岩場の斜面に作った岩の床の上で、少しばかりの休息をとっていた。


 ゴブリンたちはどうしたのかというと………風矢の豪雨が巻き上げた砂埃がいまだに晴れず、集落の様子がわからないので、一時的に放置している。つかの間の平穏だ。


 作戦がうまくいってくれたようで、一安心ってとこかな?


 今回の作戦は、ユリィをおとりとして、俺の魔法でゴブリンたちを一掃するという至極簡単な、作戦とも呼べないようなものである。ユリィが単身でゴブリンたちに突っ込み、ある程度の被害を与えつつ、軍団をある程度ひとまとめにする。さすがに集落の広場全部を巻き込むような真似はできないから、ある程度範囲を絞る必要があった。


 ユリィが暴れて、注意を引きつけつつ、軍団から離れたところにいたゴブリンキングと接触。ゴブリンキングとの交戦しつつ、ゴブリンキングを吹き飛ばし、まとまっていたゴブリンたちにぶつけ、魔法の範囲に軍団のすべてを収めて、ユリィの仕事は終了。なぜかゴブリンたちが逃げ出したりせずに、まとまってくれたおかげで、俺が逃げ出すゴブリンたちの処理をせずに済んだのは、珍しく幸運だったといえるだろう。


 ……俺に幸運なことが起こった時は、そのあとにさらに不運なことが起こるんだが…………今は、考えない方向で。


 そうしてまとまったゴブリンに、俺が遅延しまくった魔法をぶちまけて、作戦は終了。ちなみに、【風矢】を選択したのには、ちゃんとした理由がある。


 まず、この集落にいたゴブリンたちが、ケイブゴブリンという、フォレストゴブリンとは種類のゴブリンだったこと。カラーリングだけ変えて種類を嵩増しをするゲームみたいだと思ったのは、ひとまず置いといて……。


 このケイブゴブリンは、地属性に属するモンスターだったことが【風矢】を……というか、風魔法を選択した理由。


 属性、と聞いて思い浮かべるものと言えば何だろうか? ……そう、某ポケットにはいるモンスターでもあるように、属性どうしの相性だ。こうかはばつぐんだ! というやつである。


 このゲームにも、属性というものが存在する。火属性、水属性、風属性、地属性、闇属性、光属性、無属性の七つ。無属性はどの属性とも相性がないので、ここでは説明から除外する。


 とりあえず、火、水、風、地、闇、光の六属性の相性は……。


 火<水<地<風<火


 闇<光<闇


 と、なっている。テンプレと言えばテンプレだな、うん。


 そんなわけで、地属性のケイブゴブリンたちには、風属性の魔法は「こうかはばつぐんだ」というわけである。これは、レベル上げの途中、はぐれケイブゴブリンに風魔法で攻撃した場合と、土魔法で攻撃したときに、ダメージ量に違いがあったので気になっていたのだ。そのあとは毎度おなじみの[叡智]先生で調べたところ、属性の相性のことを知れたというわけだ。


「とりあえず、SPだけでも振り分けておくか。……お、スキルもだいぶレベルが上がったな」

「アカツキ様は、知のステータス以外を上げる気はないのですか?」

「まぁ、必要ないしなー。俺が近接戦闘する機会なんて、ほとんどなかっただろ? それに、ユリィがちゃんと守ってくれるからな」

「……それは、もちろんですけど」

「頼りにしてるよ、ユリィ」

「は、はいっ!」


 ステータスを確認。レベルの上昇によって手に入れたSPを迷いなく知のステータスに割り振る。すでに知のステの数値は54。それに準じてMPも上昇している。お、風魔法のレベルが30になってる。新しい魔法は……レベル20で覚えた第三階梯魔法、【風衣】。レベル三十で覚えたのは、第四階梯魔法、【風乱】。風の補助魔法と、範囲攻撃魔法らしい。使い勝手は実戦で試すとしよう。


「さてと、ステータスの更新も終わったし、とりあえずあの砂煙が晴れるまでは休憩だな。ユリィもちゃんと休んでくれよ?」

「わかりました。それで、えっと………わ、私もアカツキ様と同じように……いえ、同じところ……」


「あ、そうだな。ユリィだけそこに立たせるのも悪いし。『地よ壁となりて我が示しからいでよ』、【石壁】。……ほい、いっちょ上がり……って、どうした?」


「い、いえ………ナンデモアリマセンヨ?」


 なぜかハイライトの消えた瞳で、妙に片言にそういうと、ユリィは俺が作り出した岩の床の上に膝を抱え込むようにして座った。そのまなざしをやけに遠くに飛ばしているのは、なぜだろうか? と考えたが、あれだけの数のゴブリンに囲まれていたのだ。実力的には問題ないとはいえ、精神的な疲れは相当なものだったのだろうと予想付ける。


「本当にお疲れ様、ユリィ。お前がいてくれてよかったって、改めて実感したよ」

「……私、アカツキ様のそういうところ、嫌いです」

「ええっ!? ねぎらいの言葉をかけただけなのにっ!?」

「つーん」


 そっぽを向いて、すねたような雰囲気を出すユリィ。まぁ、そんな姿も小動物チックでかわいらしい。そう素直に伝えてみたところ、今度はジト目を向けられてしまった。でも、その時のユリィの耳が赤く染まっていたのは、ばっちり確認しました! 照れ隠しするユリィも可愛いです。



「ん、砂煙もほとんどなくなって来たし……。って、ゴブリンキング、まだ生きてないか?」

「え? ……本当ですね。あれだけの魔法をくらって生きているとすると……。おや? アカツキ様。ゴブリンキングのHPゲージは空になっているようですが?」

「んー……確かに。……じゃあ、なんで消えてないんだ? それに、クエストクリアのアナウンスもないし……」

「……わかりませんが、一度、ゴブリンキングのところに行ってみましょうか」

「そうだな。原因がわかるかもしれないし……。よし、『土よ連なる壁となりて我が示しよりいでよ』、【石壁】」


 【石壁】で階段を作り、斜面を降りていく。集落の広場だったところは、俺の放った大量の【風矢】のせいで、荒れ地のような有様になっていた。そして、その荒れ地の中心で倒れ伏しているのは、装備を砕かれ、全身から血を流しているゴブリンキング。その巨体はピクリとも動かず、その頭上に表示されるHPゲージは真っ黒に染まっている。普通のモンスターなら、粒子に変換されているはずなんだが……。


「ボスモンスターだからってことなのか? それとも何かのイベントか……。もしかして、実はHPゲージを偽造しているとか? ……一応、確かめておこう」

「確かめる? いったいどうやって……」


「『風よ無数の刃となりて敵を切り裂け』、【風刃】!」


「まさかの死体蹴り!? アカツキ様って、可愛い顔して、やることがえげつない時がありますよね……」

「可愛い言うな。さてと、それで結果は……。……ッ!!」


 と、魔法を打ち込んだばかりのゴブリンキングに視線を向けると、倒れ伏しているその巨体が、薄く光を放ち始めているのが見えた。


 その光は徐々に輝きを増していき、ゴブリンキングの姿を隠した。そして光はそのサイズを大きくしていき、見上げるほどの大きさになってはじけ飛んだ。


 はじけ飛んだ光の中から出てきたのは、ゴブリンキングの面影を残しつつも、かなり変貌してしまっている化物の姿。全身が岩石の鎧でおおわれており、獣のような恰好で佇んでいる。頭からは漆黒の角が生え、岩石の隙間から除く瞳には、理性の色が全くない。


「GUUUUU……。GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!」


 天を裂くような咆哮を化物が上げると同時に、頭の中でアナウンスが鳴り響く。その内容に、思わず顔をしかめてしまう。


《試練クエスト発生。『洞窟の神』から、挑戦者、アカツキへと試練が与えられました。

 試練『岩石鬼獣ギドベグの討伐』。

 挑戦者は試練に挑み、その力を示しなさい》


「強制クエストか。最後の最後で運がない……」

「言っている場合じゃありません。来ますよ」


 頭を抱えたい気分だが、ユリィの言う通り、化物―――岩石鬼獣ギドベグとやらが、こちらに敵意のこもった視線を受けてくるのを感じ取る。そして、ギドベグの頭上に、HPゲージが表示され、その上に名前とレベルが映し出された。


 そのレベルは、30。


「これはこれは。不幸だーっ、って叫べばいいのか?」

「アカツキ様……」

「悪い悪い、じゃあ……第二ラウンドと、行きますか!」

「はいっ!」

次回、決着(予定)。



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