第三十四話____不安と疑問
「俺はもうひとりの俺を知っている……」
シグマはヒスイとの戦いや、掲示板を見た時のショックで完全に忘れきっていた。化け狐がシグマに化けて街へ向かったことを。
「でも、あの槍使いはどこへ…」
電光掲示板に映っていた化け狐の姿を思い出す。
「おかしい……アイツはひどい怪我を負っていたはずだ それなのに掲示板に映っていたあいつの体には怪我一つなかった……」
シグマは嫌な予感がした
「敵は一人じゃない!?」
もし、この予想が的中してしまうと平穏から、さらにかけ離れてしまうことになるだろう。
「そもそも、あの化け狐はヒスイの仲間なのか?」
考えれば考えるほど疑問が増え不安が募る。
まだ外は明るく夕方にもなっていなかった。
「考えても仕方ねぇ!さぁてと散歩でもするかな」
シグマは家をあとにし、森の中を気晴らしに散歩することにした。
数分程歩くと、森の出口付近から誰かの声が聞こえた。最初は独り言のように聞こえていたが、その声は徐々に数を増していく。
シグマは木陰に隠れ、ジッと息を潜めるとバレない程度に顔を出した。そこに居たのは紛れもなく騎士警備隊だった。
「おいおい!こんなところにまで探しに来てんのかよ」
シグマの心臓はバクバクと激しく音を立てる。
心臓の音で居場所がバレるのではないか、そんな不安を感じさせるほどに激しく鼓動していた。
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