第二十一話____落ちる花を知らずに
窓から眩しい太陽の光が差し込む
朝一番に聞く鳥のさえずりは 心地よい目覚めを提供してくれる
窓が空いているのだろう
カーテンがふわりと膨らみ優しい風がシグマを撫でる
「朝か……」
起き上がろうと 左手を動かした瞬間 痛みが走る
「痛っ……俺 生きていたのか」
シグマは残念そうに息をこぼす
痛む左肩を見ると白い包帯が丁寧に巻かれていた
「誰かが治療を……」
シグマの頭には たった一人の人物が浮かび上がっていた
「またあの女性に救われたのか……それにしても器用になったな 絆創膏すら綺麗に貼れなかった癖によ」
独り言をこぼしていると 窓の桟に小鳥が止まった 可愛らしい声で鳴きながらこちらを見つめている
「お前らも自由に見えて苦労してるんだよな」
――ガチャ
ドアが開くと同時に小鳥が飛び立った
「お目覚めでしたか」
想像と反する口調と声に驚いたが その声は聞き覚えのある声だった さらにシグマに安心感をも与えていた
「勝手ながら朝食も用意させていただきました 一緒にどうでしょう」
その女性はニッコリと笑って見せた
ご飯 味噌汁 目玉焼き ごく一般的な料理が並ぶ食卓を二人で囲んだ
「色々ありがとう……どうして俺なんかを」
「同じ人間族ですし困っている人を目の前にして放ってなんておけません」
「でも」
女性はシグマの言葉を遮るように言った
「それはあなたも同じでしょう」
「……俺は」
女性はシグマを不思議そうに見つめていた
「俺は人殺しだ それも一人や二人じゃない 何人もいや何十人も!罪のない弱き者を理由もなく殺すような ゴミカス腐れ野郎だ!それなのに!それなのに……なんで……」
シグマは思わず声を荒らげてしまった
女性は優しく微笑みながら語り出す
「違います」
シグマは驚きの表情を隠せなかった
「あんたに何が」
女性は構わず話を続けた
「あなたのジョブを担当したのは私ですよ この場所を教えたのも私です 偽物のあなたと本物のあなたのジョブも区別出来ないようならジョブ担当失格です もし そんな事があった時にはタワシで自分の顔擦って自害します」
シグマは思わず笑ってしまった
「そんな事じゃ死ねねーよ ありがとう元気でた!あんたの優しさ素直に受け取らせて貰うよ」
シグマは続けて話した
「そう言えばお互い名前も分かってなかったな 俺はシグマ 平和 平穏な生活を望む危険嫌いだ」
女性は笑っていた
「平和 平穏な生活を望む危険嫌いさんが他の誰よりも危険で忙しく慌ただしい生活を送っていらっしゃるように見えますね 私の名前はアセビア と言います よろしくお願いしますねシグマさん」
「こちらこそ これからも色々手ぇ借りる事になるけどよろしくな」
先程まで笑顔だったアセビアの表情は急に不安に満ち溢れた表情へと変化した
「アセビアどうした?」
「先程から あまりお食事が進んでいないようですが もしかしてお口に合いませんでしたか?」
シグマは慌てて答えた
「会話に集中し過ぎてつい手が止まってしまった それにしても この世界にきて こんなにうまいもの食ったのは初めてだよ」
アセビアは嬉しそうだった
「それは良かったです!家事には自信がありますから」
食事を済ませた時 家の扉がガチャリと音を立てた
ようやく まともな会話が出来たのではないでしょうか?
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