第九話____おじさんナース
今回はいつもより長いかも知れないです
シグマは目を覚ました
「あれ……俺生きているのか」
辺りを見渡す
真っ白な部屋に差し込む太陽の光 風邪でなびくカーテン 独特な香り
「病院か……一体誰が……」
ベッドから降り 病室を出た
歩く度に足が痛む まるで鋭い針を刺されたかのような痛みだ
「待って下さい」
後ろから声がした 振り向くとナース姿のおじさんがシグマを呼び止めながら走ってくる
シグマは死と直面する恐怖とは別の恐怖を感じ全力で走って逃げた
おじさんは思いのほか速く
あっという間に追いつかれてしまった
「もー怪我人がそんなに走っちゃ駄目じゃない 治る傷も治らないわよ」
シグマは全身に鳥肌がたった
ナース姿のおじさんが可愛こぶっている
このおじさんにタイトルを付けるとしたら まさに『閲覧注意』だ
「あの……なぜそんな格好を?」
おじさんは不思議そうに答えた
「なぜって おかしな質問するわね ナースだからに決まってるでしょ?」
シグマは疑問に思ったことを、そのまま口にした
「ナースって女しかなれねーよ?」
おじさんの様子がおかしい 明らかに先程までとは違うオーラを感じる
「あー えーと だからその 俺は男だからアンタみたいなナースにはなれないなぁって思ってさ」
シグマの額からは変な汗が出ていた
「なんだぁ そういう事だったのね」
何とか誤魔化せたようだ
名前を知らないとおじさんと呼んでしまう可能性が高い
「おじさ……ナースさんの名前が知りたいな〜」
危なかった 再び死を覚悟してしまうところだった 気をつけないと病院で死ぬことになりそうだ
「私の名前は エリカよ」
何でだあああ コイツの親はどんな思いで名前を付けたんだ!?血迷っていたのか!?
シグマは心の中で不満の雄叫びをあげた
「へ、へぇーエリカさんっていうのか……」
「エリカちゃんでいいわよ!」
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
シグマはあまりのショックに心の中でお経を唱えていた
「それよりあなた運が良かったわね あと少しで死んでいたかもしれないのよ」
シグマは初めてエリカの話に興味を示した
「一体どういう事だ?」
エリカはシグマが今も生き続けることが出来ている理由を話した
「あなたの背中の傷の事だけど あなた背中に鎌が刺さる直前に少し前に進んだでしょ?もし風を切る音に気を取られすぎて前に進んでいなかったら首に刺さっていたわ」
凄い!傷を見ただけでその時の状況を全て把握しているエリカは実は凄い人なのかもしれない
「それにあなた病院に来るのがあと少し遅かったら死んでたわよ 昨日の夜はひどい雨だったわ あの雨の中をびしょ濡れになりながら走って運んでくれた彼女に感謝することね」
彼女?一体誰が……
「俺をここまで連れてきてくれたのは女だったのか……」
「あら あなたの知り合いじゃないの?赤髪で鎧を来た女性よ?」
あの人が!?また俺は礼も言えなかった
「その人がどこに行ったかは分からないのか?」
「さあー分からないわ 昨日は雨も酷かったし空き部屋を貸してあげるから そこに泊まりなさいって言ったんだけど断られちゃって 今日の朝まであなたの部屋の椅子に座ってたけど起きた時にはもういなかったみたいね」
「そうか ありがとう俺もう大丈夫だわ 全力で走ることも出来るし今日で退院だな」
エリカは笑いながら答えた
「そうみたいね それだけ元気があれば大丈夫だと思うわ」
エリカに礼を言い病院を出た
「え?どこ……」
知らない場所だ
近くに城がある
「城の近くって事は あの辺に八百屋があるんだな」
シグマは城から離れるように歩いた
八百屋だ
「よう!おっちゃん」
八百屋のおっちゃんは戸惑うことなく返事を返した
「おお この前の兄ちゃんじゃねーか ゴロツキ美味かっただろう?」
「ああ!作業後のゴロツキは最高だったぜ」
おっちゃんと話していると 気になる話をしている二人組がいた
「明日の夜 化け狐を使って路地裏殺戮ショーだとよ」
「俺達をなめるとどうなるかたっぷり教えてやろうぜ」
シグマはいつの間にか無言でその話に耳を傾けていた
「――ちゃん おい!兄ちゃん」
シグマは八百屋のおっちゃんの声で我に返った
「どうしたんだ?急に黙って」
「あのさ この世界って結構 殺しが当たり前だったりするのか?」
「んー?何だ急に そうだな平和に生きるやつは平和に生きる けど殺しで金を稼いだり権力を証明するような奴も腐るほどいる 」
「そうか この世界で平穏に暮らすのって難しいのか」
「そんなことねぇよ 平和、平穏に暮らす奴だって沢山いる」
シグマは軽く八百屋で買い物して その場を立ち去った
俺って何でこんなに死にかけるんだろう
シグマは昨日の出来事を思い出した
家に帰ったらまた奴がいるかもしれないという恐怖で とても森に向かう勇気はなかった
テキトーに街をぶらぶらしていると夜になった
「もう夜か どうしよう あ、そうだあの路地裏に行こう」
シグマは役場の近くの路地裏に行くことにした
やはり異様な静けさだ 路地裏に行くと先客がいた
それは赤髪の女性だった
エリカというキャラクターが出てきましたが このキャラこの後どう登場させようか迷いますよね(笑)