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帰宅
斜陽に照らされる僕は、抱きついている藤崎さんが重りになって、足取りが覚束ないです。
「足、挫いちゃったんだ」
「だから、嫌でもおぶっているんですよ」
一回限りの事だと思うので。
「背中…………逞しくはないけど、ありがとう」
これですね。余計な一言が多いんでしょう。きっと。だから見限られるんです!悔い改めよ!
「それは、それはどういたしまして」
「それで…………股間の………」
「入れない、触れない、向けさせないですよ」
「ぐぬぬっ……」
上唇を剥いて、歯茎を見せるのは止めてください。藤崎さんは犬ですか。




