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ハルキとの出会い

国によって掟が違うのは知っていたが、ニンゲンに対する対応まで、ここまで差があるとは思わなかった。


もしかして俺達の国は遅れてるのか!?



…いやいや。冷静になれ、俺。


ニンゲンと交流してる国がめっちゃあるなら、「小さいおじさん」について、こんな深夜のテレビで特集なんか組まない筈だ!


むしろ普通過ぎて話題にもならないだろう。テレビを睨みながらそう結論付ける。



偵察任務について2週間、小さなおじさんについてニンゲンがどう捉えているか、俺も少しは分かってきた。


なんせこの部屋の家主ハルキが、

そんなモンばっかり見てるからだ。ネットや本、テレビを駆使して小さいおじさん情報をくまなくキャッチしている。


どんだけ「小さいおじさん」が好きなんだよ!と、軽くツッコミを入れてやりたいくらいだ。


おかげで俺はどの地区で目撃情報が多いとか、自分の国におさまらない、全国小人情報をあらかたゲットしている。


今はまだ妖精だの、目の錯覚だの言われてる状態なワケだし、そこまで心配するレベルじゃなかった筈だ。


どちらかと言うと、このハルキみたいに尋常じゃない熱意で俺達を見たがってるヤツの方が厄介だ。



姿を見たとしても、大事に大事に胸にしまっておいてくれたり、俺達の小山の持ち主みたいに子々孫々味方になってくれるんならもちろん問題ないんだが…。


面白半分で捕まえてネットなんかに姿を流された日には、俺の国じゃぶっちゃけ死刑かも知れない。姿を見られたおっさん達もかなり厳しい罰を受けてる筈だ。


…まぁ、ハルキが小さいおじさんに興味津々になるのも仕方ない部分もあるんだが…。


ていうか100%俺のせいだが。



実は俺は…十年も前のガキの頃、ハルキに会った事がある。誰にも言ってないから、国でな俺以外は誰も知らない事だ。


足を滑らせて川に落ち、ふもとの街まで流されたんだ。どっかに引っかかってたのを見つけて拾ってくれたのがハルキとその友達だった。多分、川遊びでもしてたんだろう。


ハルキは変わったガキだった。


俺を拾うと、一緒に遊んでたヤツに「誰にも言わないで」とかたく口止めした上で隠すようにして家に連れ帰り…あっためたりメシをくれたり、ガキながらに一生懸命世話してくれたんだ。


「大丈夫?ちっちゃい神様。」


って言ってたから、古くから伝わる昔話を何か聞いていたのかも知れない。


親にも内緒で俺を看病してくれたハルキ。


今もそのままなのか… 。


興味津々といった表情で、小さなおじさんの特集を見ているハルキからは、心情までは窺えない。


偵察任務を言い渡されて、真っ先に顔が浮かんだこいつの家に来てみたものの、分かったのはこいつが小さなおじさん情報をストーカーレベルで追ってるって事だけだ。


おかげで小さなおじさんについて出回ってる情報はかなり把握できたが、ニンゲンと大々的に友好関係を築けるのかについては疑問符のままだ。


何考えてんだろうなぁ…。



テレビを見ているハルキは、本当にどこにでもいそうな、普通のヤツだ。家ではTシャツにジーンズのラフな格好だし、髪も爽やかな短髪で、中肉中背。


学校にこっそりついていった事もあるが、スポーツはやや苦手みたいだけど、授業中も友達と笑ってる時もなんら変わってるところも見当たらない。


まぁ、気になる点なんか学校で一緒にいた友達が、最初にハルキと出会った時にも居たヤツ…確か、タカシってヤツだったってくらいだよ。


不思議なのは、学校以外では友達と一切交流しようとしない事だ。タカシはちょいちょいハルキに話しかけてるし、遊びにも誘ってるんだが、いつもニコニコ笑ってやんわり断ってる。


腹が読めないんだよなぁ…。


俺の友達は考えてる事が全部顔に出るような単純なヤツばっかりだから、ハルキみたいな腹が読めねぇタイプは苦手だ。


もう少し、分かりやすいヤツだったら良かったのに。


そう考えてから、俺はすぐさま首を振った。…いや、やっぱりこれで良かったんだ。


それくらい分かりやすいヤツだったら、ガキの頃こいつに拾われた時点で周り中にバレていただろう。ニコニコとテレビを見ているだけのハルキをみながら、俺は一人でため息をついたり納得したりと忙しかった。




それからしばらくは目立った動きもなく、俺は退屈に思いながらもニンゲン達の生活を見守った。


目新しい情報といえば、ハルキが実は長い事別な土地にいて、つい最近帰って来たばかりだったという事くらいだ。ニンゲンはそういう…転勤、転校というのも多いんだな。



新たな動きがあったのは、それから2週間後の事だった。


家に帰ると調べ物ばっかであんまり外に出ようとしないハルキが、急によく外出するようになった。最初はやっとタカシ達と遊ぶ気になったかと、余計なお世話ながら俺も安心したもんだった。


でも、どうも様子がおかしい。


学校についていけば、相変わらずタカシの誘いはやんわりと断り、すぐに家路につく。


そして、家に帰りつくとすぐに着替えて家を出る。


俺は急に心配になった。


この3週間程で分かったのは、ハルキが友達…特にタカシを遠ざけようとしている事と、「小さなおじさん」の事をかなり真剣に調べてるって事だけだ。


そう考えると、そのハルキがこんなに精力的に動くなんて「小さなおじさん」関連の事しか思い当たらない。そう考えだすと、それ以外ない気がしてきた。


俺は決心した。

ハルキの外出先に、密かについていく事を。


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