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小法師さま、出て来い!

真横で隊長がチッ!とか舌打ちしてるのに地味にビビりながらも、小山の外に向かって歩き始めたタカシを見て、ホッと息をついた瞬間。


タカシが、体中の力を振り絞りように絶叫した。



「出て来ーーーい!小法師さまーーー!!」



「っ………!」


驚き過ぎて言葉が出ない。

な…なんて事をしてくれるんだ!


「居るんだろ!?出て来いよ!!」


「な……な……何を…っ」


ハルキが動揺している間にタカシはその辺の草までめくりだした。


「や…止めろよ!」


ハルキが叫んでも、一瞥しただけでタカシはなおも草むらや木の枝を乱暴に掻き分け始める。


さすがにこれはヤバい。

完全に小人を探しに来た事が国中に伝わってしまった上に、乱暴なヤツだとの認定を受けてしまえば、ニンゲンを味方にするとか言ってるレベルじゃない。


武闘派の防衛隊員達は既に戦闘態勢に入ってるんじゃないだろうか。


「止めろって!乱暴するなよ!」


なんとか止めようとするハルキを振り払ってタカシはどんどん草むらを分けていく。


「頼むから!山を荒さないでくれ!」


「………」


そうこうしている内に木々の枝には防衛隊員が音もなく配置につき始めた。それが見えていても、俺にはタカシを止める事すら出来ない。


祈るように目を閉じて数秒、どさっという鈍い音が響いた。


「痛っ…てぇ~…」


目を開けてみれば、タカシとハルキ、二人揃って草むらに転がっている。状況から見るに、ハルキがタックルをかましたらしい。


「いい加減にしろよ、もう…!ここは荒らしていい場所なんかじゃない。大事な……大事な場所なんだ」


「分かってるんだよそんな事。こうでもしないとお前、腹割らねぇじゃねぇか」


はあ、とため息をついてタカシが体を起こす。椎の木の根元に身を寄せて片膝をつくと、しっかりとハルキを見据えた。


「全部話せ。こっちだってずっと…それこそ10年もモヤモヤしてきたんだ。お前の事も小法師さまの事も」


寝転がったままのハルキは、しばらくそのまま木々から零れる木漏れ日を見上げていた。



やがて、観念したように腕で目を覆い、ゆっくりと口を開く。


「俺も…本当はわからないんだ。あの時一緒に川で拾った小法師さまは、びしょ濡れでぐったり動かないままで…」


…そう、だろうな。ハルキ、拙い動きで体を拭いてずっと手の中で温めてくれたっけ。あの時はただただ怖くて、目も開けられなかったけど。


「何か食べるものあげようと思ってちょっとだけ目を離したら、もういなくなってた」


あの時ハルキは嬉しそうだったよな。「小法師さま元気になった!」って無邪気に喜んでたよ。こっちは恐怖で部屋の隅に逃げ出したってのに。


「動いてるのを見たわけじゃないんだ。体も冷え切ってて冷たかった。子供だったからな、本当に人形だったのかもしれないって、今でも思う」


「嘘つけ。じゃあなんであんなに俺の事拒否ったり、この山に来たりするんだよ」


うん、小さなおじさんの話とか尋常じゃなく調べてたしな。


「だって…もしかしたら小法師さまだった可能性もなくはないし。この街に帰ってきて、この小山を見る度に思い出すから…」


え…?って事はハルキが小さなおじさん情報をあれこれ調べ始めたのは、この街に戻ってきてからの事なのか?


「あの時小法師さまを見つけた川に行ってみたんだ。…で、遡ってみたら本当にあの山に続いてるみたいで……もしかしたらもしかするかもしれないって、つい思うじゃないか。一旦そう思ったら、もう我慢できなくて」


色々調べたし、小法師さまの山にも行ってみた、とハルキは苦笑して視線を山の入り口の方へ向けた。


「結局その時は山の持ち主の人に見咎められて入れなかったんだけどね」


その時に地主の爺さんに出会ったわけか。

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