story5…女神
少女はほんのりまだ輝きを保っている魔法陣の中心で、
邪神達の方を真っ直ぐに見つめていた。
「な…、なんで…」
生きているのだ?
ジュリアスはそう呟いた。
少女には血の跡は残っているものの、流れ出てはいなかった。
少女は邪神に向かってもう一度言う。
「待ちなさい」
「あ?」
邪神はジュリアスの首筋に爪を当てたまま、少女の方をうっとしそうに見る。
そして驚いたというように、目を見開いた
「殺してはならないと言っているのです」
「…っはは、ホントしっつこいヤツ。追っかけてきやがったのか」
邪神は空笑いをしながら少女に向かって言う。
ジュリアスとその周りの黒ローブの者達は、まるで状況をつかめない。
「なんでてめーが此処にいるのか、訊きたいなっと」
邪神はジュリアスを右手で思いっきりはたき、どかした。
ジュリアスは避ける間もなく凄い速さで左に飛ばされる。
壁にどんっとぶつかり、ガハッゴホッとむせている。
「さて、どうしてでしょう?」
少女は頬に右手の人差し指を当て、微笑む。
「…ま、別に関係ないか。そんなの」
邪神は言い終える前に少女の前に移動し、右手の切っ先の狙いを定めていた。
少女は身動一つしない。静かに邪神を見据えている。
「また殺してやるよ、女神様」
邪神の右手が無造作に動く。
狙いは目の前の少女の首筋。急所一発狙い。
それでも少女は微動だにしない。
不敵に邪神を見て、微笑んでいた。
カキンッ
「なっっ…!!」
邪神が少女から、はねのけた。
いや、跳ね返された。
少女は傷一つなく、ただそこに立っている。