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覇者召喚  作者: 灰色兎
3/6

story2…邪神




「…おいおっさん」


魔法陣の中心にいる男が口を開いた。

すでに魔法陣の光はやや残るものの、ほんのりとその周辺を照らす程度だったため、

中心にいる男の表情も見て取れた。


「こ、コイツ喋れるのか!?おい!ジュリアス!!」


小太りの男は驚きの表情で叫び隣の顔を隠した男に訊いた。


「…存じ上げません。しかし彼が喋ったと言うことは、そういうコトなのでしょう」


ジュリアスと呼ばれた、顔を隠した男は静かに言った。彼も驚いているようだ。


「何ごちゃごちゃ言ってやがる、いいかおっさん」


「おっさんではない!我が輩は貴様の主のグロウだ!」


小太りの男はそう名乗った。


魔法陣の中心にいる男は、静かに立ち上がり、グロウに近寄った。


男の容姿は無造作に伸ばした黒髪、目は緋色のように赤く、肌は緑色の鱗に覆われている。

服はなんともめずらしい恰好だった。神聖的なものと言われればそうとも見れるものだ。


「へぇー、主ね。アンタが?ははっ」


男は嘲笑し、グロウとの距離をゆっくり縮める。


「そ、そうだ。我が輩は貴様の主だ。跪けい!」


近寄ってくる男に、グロウは焦り、少し後さずりをする。

ジュリアスはグロウに少し距離を取り、近づいてくる男の様子を伺うように見つめていた。


「跪く?俺が?アンタに?…くっはははは!笑っちゃうねぇ〜?」


「な、何だと!!貴様我が輩を嘲笑うか!!?」


男とグロウの距離が数センチに縮まった。

男はグロウを見下ろし、にやにやと笑っている。


「貴様!!主を見下すか!?!無礼も…」


グロウの言葉は、男の右手によって制された。

男の右手の長く鋭い爪が、グロウの額に突き刺さっている。


「ぐ…バ、バカな…そんな…」


グロウは僅かに残るかすかな意識で、呻いた。


男は右手をグロウの額から引き抜く。

その刹那、額からプシューッと血が噴き出す。

ドサッと倒れるグロウ。意識はもう無かった。



グロウの額から流れる血が、床にゆっくりと模様を描くように広がる。



「俺の主なんかいねぇよ、バーカ」



男は右手の血を拭い、長い爪を引っ込めた。


そして大声で、高らかに叫んだ。





「俺は、邪神ケツァルコアトル様だ!!」










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