冒険者の休日、それぞれの朝
地下水道の制圧から一夜明け、俺たちは久しぶりに「依頼を受けない朝」を迎えた。
連日の遠征と戦闘、そして昨日のドブ掃除のような捕縛劇……。身体の節々が悲鳴を上げているのを感じ、俺たちは満場一致で休暇を決めた。
アル「ふぅ……。昼まで寝てるつもりだったけど、身体が覚えちまってるな」
宿の食堂に降りると、そこには既に思い思いの時間を過ごす仲間たちがいた。
セシルは陽当たりの良い窓際で、魔法書を熱心に読み耽っている。昨日の実戦で得た感覚を忘れないうちに整理しているらしい。
ガンテツは中庭で、昨日の汚水にさらされた大盾と鎧を念入りに磨き上げ、油を差している。
ザイン「おお、アル。神も六日で世界を創り、七日目には休まれたのです。我々のような清浄なる魂の持ち主にも、このような安息は不可欠。……マーサ、このエールの泡が少し不浄です、もっときめ細やかに注ぎなさい」
昼間からエールを煽るザインの小言も、今日ばかりはどこか穏やかに聞こえる。
ミラは食堂の隅で静かにナイフの手入れをしながら、時折窓の外を眺めていた。スラムにいた頃にはなかったであろう、誰にも命を狙われない穏やかな時間。
目標の4割に達した資金を確認しながら、俺たちは泥と血にまみれた日常から少しだけ離れ、ただの「若者」としてカランドラの穏やかな空気の中に身を浸した。
サイドストーリー
宿のロビーでは、体力が有り余っているフィオが退屈そうに俺の袖を引っ張っていた。
フィオ「ねえねえ、ワンちゃん! せっかくのお休みなんだから、ボクと一緒に市場の奥にある『不思議な骨董品屋』に行ってみない? ボクの直感がね、あそこにはきっと美味しいドライフルー……じゃなくて、エルフの秘宝が隠されてるって言ってるんだ!」
アル「悪いな、フィオ。今日は一歩も動きたくないんだ。……セシルを誘ってみたらどうだ?」
フィオ「セシル君はさっきから『風の流体力学』がどうとかブツブツ言ってて、ボクの歌も聞こえてないみたいだよ! もう、みんなして不条理だね! ザインみたいな生臭いこと言っちゃうよ!」
そう言いながらも、フィオはマーサに貰った焼きたてのクッキーを口に放り込み、幸せそうに頬を膨らませていた。




