暗渠の追跡と新しい足場
朝食後、俺たちは対人戦闘に慣れるために、ランクDの「地下水道に逃げ込んだコソ泥の捕縛依頼」を受注し、カランドラ下町の暗渠へと足を踏み入れた。
自警団からの依頼で、盗品を持ったまま地下へ逃げ込んだ三人組を捕まえるのが目的だ。
太陽の光が届かない地下水道は薄暗く、足元は湿った苔と生活排水でひどく滑りやすくなっていた。
ミラ「……チッ。臭いね。だけど、足跡ははっきり残ってる。あいつら、ここをただの隠れ家だと思って油断してるよ」
スラム出身で暗闇に目が利くミラが先頭に立ち、気配を殺して進んでいく。セシルが灯り魔法を最小限に抑え、俺たちはその後を慎重に追った。
普通の靴ならまともに歩くことすら難しい泥と苔の斜面だったが、俺の新調したスパイクは、その悪路をしっかりと噛み締めてくれた。滑る恐怖がない分、周囲の警戒に集中できる。
ほどなくして、開けた地下の貯水池で、焚き火を囲んで盗品の分配をしているコソ泥たちを発見した。
アル「ミラ、俺が正面から突っ込む。お前は退路を塞いでくれ」
ミラ「了解。逃がさないよ」
俺が暗がりから一気に飛び出すと、コソ泥たちは驚いて短刀を抜いた。
コソ泥「な、なんだテメェら! 自警団の犬か!」
男の一人が泥を蹴り上げて俺の顔を狙い、そのまま突っ込んでくる。だが、足場が悪いせいでその動きはひどく鈍かった。
対照的に、スパイクでガッチリと地面を捉えている俺の動きは全くブレない。飛んできた泥を鉄の籠手で払い落とし、相手の短刀の軌道を槍の柄で弾き飛ばす。
アル「……おとなしくしろ!」
渾身の踏み込みから放たれた槍の石突きが、男のみぞおちに正確に突き刺さった。息を詰まらせて崩れ落ちる男。
残る二人が慌てて逃げ出そうとしたが、背後に回り込んでいたミラの冷たい刃が、彼らの首筋にピタリと当てられていた。
ミラ「……動くんじゃないよ。アタシの短剣は、泥より滑りがいいからね」
血を流すまでもなく、コソ泥たちは恐怖で手を挙げた。
新しい装備の感触と、ミラの的確な動きが噛み合った、完璧な制圧劇だった。
サイドストーリー
コソ泥たちをロープで縛り上げている間、安全な通路で待機していたザインが、法衣の裾を摘みながら大声で文句を言っていた。
ザイン「おお、神よ! なんという不浄! このような汚水と悪臭に満ちた場所は、神の調和から最も遠い場所です! アル、早くその不浄な罪人たちを引き渡して、私を地上へ帰しなさい!」
フィオ「やあやあ、ザイン! こんなに反響が素晴らしい場所なんだ、ボクの美しい歌声でこのドブの匂いを浄化してあげようか!? (※地下水道中に響き渡る大音量のエルフの歌)」
ザイン「ひぃっ! やめなさいエルフ! その歌声が壁に反射して、私の清浄なる鼓膜を破壊しようとしています!」
ガンテツ「ガハハ! お前ら、少しは静かにせんか! まだ奥に別のネズミが潜んでるかもしれんぞ!」
こだまするエルフの歌声とザインの悲鳴に、捕まったコソ泥たちまでが「頼むから早く地上に連れてってくれ」と懇願する始末だった。




