職人の助言と、祝杯の招待状
これから先、魔物や、あるいは『人』など、様々な相手と対峙することになる。万全の準備を整えておくため、俺はガンテツを連れて下町の『ゴードンの武具店』へ足を運んだ。北の商隊が持ち込んだという良品が入荷したという情報を聞いたからだ。
ゴードン「……おい。冷やかしなら帰んな。うちは確かな腕にしか売らねえぞ」
ガンテツ「ガハハ! 相変わらず愛想のねえ店主だ。だが目は確かだ、アル。ここの棚にある『鉄板入り行軍長靴』を見てみろ。革の裏に薄い鉄の鱗が仕込んである。槍使いってのは踏み込みが命だ。これなら足首を保護しつつ、どんな悪路でも地面をガッチリ掴めるぞ」
俺はガンテツの勧めに従い、自費で銀貨2枚を支払い、新しいブーツを購入した。新品の鉄と革の匂いが鼻をくすぐり、履き替えると足元に一本芯が通ったような安定感を感じた。
午後、俺たちはギルドへ向かい、受付にいたエリーナに声をかけた。
アル「エリーナ。今夜、貯金が目標の四分の一を超えた祝杯を『赤猫亭』で挙げるんだ。もしよければ、エリーナも来ないか? 世話になってるお礼もしたいんだ」
エリーナ「えっ……私を、ですか? ……ふふ、ありがとうございます。喜んで伺いますね。丁度、皆さんの活躍を報告書にまとめ終えたところなんです」
夜、『赤猫亭』の広間は賑やかな笑い声に包まれた。マーサが腕を振るった豪華な料理が並び、エリーナも加わった席で、俺たちはこれまでの遠征の苦労を笑い飛ばした。
アル「みんな、ありがとう。これで25万リアを超えた!」
エリーナ「おめでとうございます、皆さん。最近はギルドでも、アルさんたちのパーティは『堅実で信頼できる若手』として名前が挙がっているんですよ」
仲間の笑顔と、街の人々からの信頼。昨日の対人戦の苦い記憶が消えるわけではないが、それを背負って立つための力が、今の俺たちには備わりつつあった。
サイドストーリー
祝杯の席で、ザインが上機嫌で葡萄酒の杯を掲げていた。
ザイン「おお、神よ! アル殿、その新しいブーツの輝き、実に見事です。その鉄の足音で、不浄なる者たちを文字通り踏み潰していくのですね。……おや、エルフ! 私の皿から高い方のチーズを掠め取るとは何事ですか! それは神への捧げ物と言っても過言ではない私の分ですよ!」
フィオ「やあやあ、ザイン! ボクの素早い手さばきは、神様も認めた芸術なんだよ! ほら、怒ってないでエリーナさんにボクの活躍を歌にして聞かせてあげようか?」
ザイン「やめなさい! あなたの歌は清浄なる空気をかき乱すだけです! ……全く、ミラ、あなたも何か言ってやって……おや、黙々と肉を食べていますね。少しは私の話を聞いてください!」
ミラ「……チッ。うるさいよ。今はマーサの煮込みを味わうのに忙しいんだ。……アル、おめでとう。ブーツも……悪くないね……」
エリーナとマーサが見守る中、賑やかな宴は夜更けまで続いた。




