赤猫亭の猪鍋と騒がしい新顔
東の森から戻り、ギルドへの報告を済ませた俺たちは、約束通りフィオを連れて赤猫亭へと戻った。
食堂のテーブルには、今日の獲物であるイノシシの肉をマーサが手際よく調理した、湯気の立つ猪鍋が並んでいる。
アル「……さて。飯の前に、改めて確認させてくれ。フィオ、お前本当に行く宛がないんだな?」
フィオ「むぐむぐっ! はふっ、あふい……! うん、そうだよワンちゃん。ボクはあまりにも高潔で弁が立つからね、森の連中にはその才能が眩しすぎたのさ。追放という名の自由を授かったわけだよ! だからボクを養う権利を君に譲ってあげる!」
アル「養う権利って……。セシル、どう思う。こいつの歌、魔法としては本物なんだろ?」
セシル「……(遠い目)。魔法としての威力は一級品だよ。エルフの伝統的な魔力伝導を、あんな……あんな下卑た語彙でなんて……魔法学の冒涜だけどね。でも、弓の腕も確かだ。戦力的には申し分ないかな」
ガンテツ「ガハハ! 飯を食う口が増えるのは痛いが、その分稼げる獲物のランクも上がる。わしも反対はせんぞ。わしの工房……じゃねぇ、わしらの家を買う近道になるならな」
ミラ「……チッ。アタシは反対しても無駄だって分かってるよ。でもフィオ、もしアタシたちの足を引っ張るようなら、その尖った耳を切り落として売っ払うからね」
フィオ「ひえぇ、怖いね! でも大丈夫、ボクがいれば百人力だよ! さあアル君、契約成立の証に、その肉の塊をボクの皿に献上したまえ!」
アル「分かったよ。ただし、家を買うまでは節約生活だぞ。……よし、今日からフィオも仲間だ。よろしくな」
なし崩し的ではあったが、こうして俺たちのパーティに六人目の、そして最高にやかましい仲間が加わった。
サイドストーリー
猪鍋を囲んでいる最中、ザインはフィオの隣に座り、いかにも聖職者らしい(胡散臭い)微笑みを浮かべていた。
ザイン「フィオ殿、改めまして歓迎いたします。ところで、エルフの里には代々伝わる秘宝や、黄金でできた装飾品などはないのでしょうか? ほら、神への喜捨としてお持ちいただければ、私が清浄なる管理を……」
フィオ「んー? 黄金? そんな重くて食べられないもの、興味ないよ。ボクの里にあったのは、古臭い木の杖と、カビの生えた古い本だけさ。それよりおじさん、その皿にある脂身の乗った肉、ボクの信仰心として譲ってくれないかな?」
ザイン「私の肉を狙うなど、神の罰が下りますよ! そもそもなぜ私が貢ぐ側なのですか、不条理です!」
ミラ「……チッ。二人ともうるさいよ。ザイン、その肉を渡さないなら、アタシがアンタの脛を蹴り飛ばして奪うけど、どっちがいい?」
ザインは涙目で肉をフィオの皿へ移し、フィオは「話がわかるね、おじさん!」と上機嫌でそれを頬張っていた。




