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冒険者アル  作者: テステス
2章 手の届かない戦い
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南の壁外とゴブリンの痕跡

アル「バリケードの補強はガンテツがいれば十分そうだな。ミラ、さっき屋根から見えた足跡の場所まで案内してくれないか?」


ミラ「……チッ。人使いが荒いね。まあいいよ、ついてきな」


俺とミラは南門の脇にある小さな通用口から、こっそりと壁の外へ出た。ミラが指差した草むらには、確かに複数の足跡が乱れて残っていた。ミラは地面にしゃがみ込み、土の窪みを指先でなぞる。


ミラ「ほら、ここだよ。でも変だね。ゴブリンの足ってもっと軽いはずなのに、随分と深く土が抉れてる。これじゃまるで、重い鎧を着た人間が歩いた跡みたいだ」


アル「壁の表面にも、重い鉄の剣を擦り付けたような深い傷があるな。やっぱり武装しているって噂は本当みたいだ。それに、この足跡の向き……東の森じゃなくて、もっと南の岩場の方から来てるように見えねえか?」


俺たちが痕跡を調べていると、詰め所での治療補助を終えたセシルが通用口から顔を出した。


セシル「どうだったかな、アル。何か収穫はあった?」


アル「ああ、ミラの言う通りだった。かなり重装備のゴブリンがここを登ろうとした形跡があるぞ。それも東の森からじゃなく、南の方から来てるみたいだ」


セシル「なるほどね。鉄の重さで足跡が深くなっているなら、相手の機動力はかなり落ちているはずだよ。でも、それだけ防御力があるなら、僕たちの今の装備だと迂闊な攻撃は通らないかもしれないね。南から来ているというのも気になるかな……東の討伐隊から逃れてきた別働隊なのかもしれないよ」


サイドストーリー


俺たちが壁の外で調査をしている頃、詰め所の中では治療を終えたザインが、すっかり元気になった自警団員たちを取り囲んでいた。


ザイン「おお、神よ! 彼らの傷は私の祈りによってすっかり浄化されました! さあ皆様、神の慈悲に対するささやかな感謝……そう、喜捨の時間ですよ!」


ガンテツ「ガハハ! 命懸けで街を守った若造から小銭を巻き上げるたぁ、いい度胸してるじゃねぇかニセ坊主! ほれ、わしが代わりに肩を揉んでやろう!」


ザイン「ひぃっ!? ドワーフの馬鹿力で肩を揉まれたら骨が砕けます! やめて、不浄なる暴力反対……ああっ!」


ガンテツの太い腕に首根っこを掴まれ、ザインの情けない悲鳴が詰め所の中に響き渡っていた。

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